見出し画像

月間900万UUのメディア運営をしてきて、常に意識してきたWeb解析の基本的な考え方

こんにちは福田です。普段はApplivという月間900万UU規模のアプリレビューメディアのWeb解析からマーケティング活動をやっています。Applivでは約5年ほど、広告運用、Web解析からプロダクトの収支責任まで幅広く見てきました。

今回私が「Webアクセスの解析」をしていく上で「どのようにプロダクト成長させていくか」意識してるポイントをうまく言語化できてなかったなという反省もあり、自分なりのノウハウをnoteに書き立てることにしました。目次は以下のとおりです。

Web解析は手段に過ぎない。目的はアクションに繋げて成果を残すこと

これは当たり前のことなので簡単に解説を。仕事の成果が何かと考えたときに、成果 / コスト・投資 = 生産性になるわけですね。ここで、何か成果で何がコストかを私なりの定義で簡単に書くと

・実際に数値が上がり、収益につながったもの = 成果
・分析に使った時間や成果物 = コスト・投資
 
になるわけです。だから提案を作っただけ。綺麗に結果をまとめただけ。でなく、作った企画が実際に動いたかどうかまで責任もって見る必要があるわけです。終わり。

空・雨・傘の構造を意識せよ

じゃ、提案ってどう作るのよ?ということに関してはコンサル用語とかでよく使われる「空・雨・傘」のフレームワークが役に立ちます。

どういうフレームワークか簡単に記載すると何が「事実」で何が「解釈」を明確に認識しながら最後の判断までもっていけよ。ということをわかりやすくまとめたものになります。

空⇒「空が曇っている」(事実)
雨⇒「雨が降りそうだ」(解釈)
傘⇒「傘をさそう」(判断・提案)

Web解析とかで例えてみると簡単に以下の感じになります。

空⇒「デイリーPVが前日比で300%上がっている!」(事実)
雨⇒「雑誌やテレビで紹介されたのではないか」(解釈)
傘⇒「特集された雑誌に広告を打ちに行こう」(判断)

しかししかし....もし皆さんがマネージャーとして、アクセス解析担当者が「空・雨・傘」の構造だ!と言ってこのような提案をそのまま出してきたらどう思うでしょうか。割と突拍子もないです提案ですよね。「ほんとかよ?根拠はあるのかよ」と。ここで「空・雨・傘」のフレームワークを意識しておくと、適切なフィードバックをしやすくなります。

空・雨・傘の構造を意識したフィードバック

1)事実を見極める
私個人のやりかたではありますが、このような報告や提案を自分で作る場合、まずは「事実」が正確なものであるかどうかを把握しにいきます。簡単にいうと「この数値って本当に正しいの?」という点です。これは様々な角度から判断することが可能です。例えば

・広告管理画面を見たときに収益やインプレッションも本当に上がってるか
・サーバーのログでも本当に同等の数値上昇が見えるか
・先週の数値がおかしかっただけで今週が通常の値なのではないか

などなどです。今回はトラフィックが「上がった」ケースなので、ポジティブな可能性が高いですが、これがトラフィック「下がった」ケースだとより慎重に本当にこの事実が正しいかどうかを見極めます。ここで前提となる事実が異なると、その後の解釈、判断も絶対に間違ってるので、早めに傷口を塞ぐことが可能です。

※おまけ
トラフィックの事実検証をする上で、「後日、次週の数値を予測しておく」ということを習慣づけておくと、事実を見極められる可能性が高くなると考えており、私はたまに取りいれています。ユーザー行動は一定の「確率」にしたがって法則的に数値が集まっている可能性が高く、ある程度のデータが揃っており、特に異常がない場合は代替誤差が-5-5%程度の範囲内でトラフィックを予測することができます。(あくまで数件メディアを見てきた私談)この予測を外れた瞬間は、何かしらの数値に以上がある可能性が高い!と判断できるため、事実を見極める上でとても有効だったりします。

あと社内で複数で数値をみる仕組みづくりは大事だったりします。私はよく同僚と「あれ?なんかリアルタイムの数値おかしくない?」みたいな話を仕事中したりします。こういう何気ない会話が異常値の気づきや新しい企画につながるきっかけになったりするものです。


2)解釈の可能性が他にないか広げて考える
仮に「トラフィックが300%上がった」のがどうやら「事実」であるとして、次は「解釈」に他の可能性がないかを見極めます。この「解釈」にはある程度根拠がセットで提示されていると確度が高くなります。

今回のケースでいうと「トラフィックが300%上がった」のは色々な可能性が考えられますよね。例えばGoogleの順位アップデートがあって順位があがったのかもしれない。例えば何かの記事がSNSでバズって一時的にトラフィックを集めただけかもしれない。例えば特定の季節要因によるキーワード(クリスマスやバレンタイン、七夕)などで一時的に上がっただけかもしれない。

これらも根拠となる「事実」をもう少し揃えた上で本当に確度の高い「解釈」なのかを見極めれば適切な「判断・提案」ができる可能性が高まります。この解釈の広げ方はWeb解析者、担当者として経験や知識の幅の見せ所になるのかなと考えています。

3)判断・提案を考える
最後に、これまでの事実と解釈を踏まえて、判断・提案を作ります。私は解析の最大の醍醐味はここにあり、そして最もシンプルなものであると捉えています。正しい事実と正しい解釈さえあれば、ある程度やるべきことは見えてくるものだと考えています。

仮に先に述べた事例でトラフィックが300%上がったのが「季節要因による検索需要の増加によるもの」だっだとしましょう。と、なれば解析担当として提案するべきことは、次月以降その季節に合わせた「特集」や「広告案件の獲得」などをしていきましょうというある程度確度が高く、成果が残せそうな企画を作れるわけです。

よく「仮説」といわれているものはこの「解釈・判断」にあたるものと考えております。「仮説」というからには絶対ということはないのですが、ここまで事実や解釈を突き詰めた考えて進めた「判断・提案」から得られた失敗も成功も必ず次につながる資産として貯まるため、結果的にビジネスや良い方向に進むと考えています。

事実・解釈・判断を意識するとMTGも進めやすくなる

今回はWeb解析における「事実・解釈・判断」の正しい認識の仕方について紹介しましたが、これらのフレームワークはMTG中にも有効です。例えば同じ数値を見てるはずなのに以下の議論が起こったとしましょう

Aさん「この検証により数値はあがった」
Bさん「この検証により数値は変わらなかった」

こういう議論が起こる場合、「解釈」の違いにより意見の食い違いが発生していることが多かったりします。ここで一回事実が何かを整理すると、割と有効的だったりします。

事実「検証により0.5%コンバージョン率が上がった」

この場合、0.5%を上がったと捉えるかどうかは「解釈」の部分になります。この上がり値に関しては事前に「どの程度であれば上がったと判断するか」という部分を握っておいたり、あるいは外部のパートナーに相談したり、最終的なビジネス的なインパクトを考えることで、「上がったというか下がった」というのを決めておけば話が進めやすくなったりするかと思われます。

補足ではありますが、これはWeb解析や日々のMTGだけでなく、収支報告のシーンでも重要な考え方となると考えています。「上がった」「下がった」「変わらなかった」「わからない」という報告は解釈になりがちなので、事実として「◯◯%上がった」「これだけはわかっている」的な報告を習慣づけるとよいかもしれません。

事実を見極めなければ戦いには必ず負ける

これは最後の補足情報ですが、私が先月読んだ戦記なのですが「大本営参謀の情報戦記」という本があります。この本は太平洋戦争当時、情報を取り扱う部署に配属された堀栄三という人物の実話を描いた戦記物。彼は情報を適切に扱うプロとして、あまりにも敵の動きを読み切るため「マッカーサー参謀」との異名をとった男。そんな堀栄三が戦争当時に適切に情報を把握するためにとった事実把握のしびれるシーンがあります。

昭和19年。情報本部は航空戦において現場から「敵軍の爆撃に成功した!」という報告をいくつも受けます。しかし、現場に出向いた堀栄三は「何かおかしい...」と違和感を感じ取る。そこで彼が投げかけた問いとやりとりが以下の通り。

兵士「◯◯機、空母アリゾナ型撃沈!」
堀「どうして撃沈とわかった?どうしてアリゾナとわかったか?アリゾナはどんな艦型をしているか?暗い夜の海の上でどうして自分の爆弾でやったと確信して言えるか?」

堀は情報を取り扱うプロ。提案のためには正しい判断が必要でそのためには正しい事実が必要です。情報を取り扱い、最終提案をするものこそ、現場に出向き、真実を追求する姿勢が必要となってくるのです。

なお、米軍が戦後に米政府に提出した調査書においても、日本軍の敗因は以下のように「バイアスによる情報の取扱失敗」やそれらに起因する「ターゲットの誤り」が指摘されております。

1)軍部の指導者は、ドイツが勝つと断定し、連合国の生産力、士気、弱点に関する見積もりを不当に過小評価してしまった。(註、国力判断の誤り)
2)不運な戦況、特に航空偵察の失敗は、最も確度の大量の情報を逃す結果となった。(註、制空権の喪失)
3)陸海軍間の円滑な連絡が欠けて、せっかく情報を入手しても、それを役立てることができなかった。(註、組織の不統一)
4)情報関係のポストに人材を得なかった。このことは、情報に含まれている重大な背後事情を見抜く力の不足となって現われ、情報任務が日本軍では第二次的任務に過ぎない結果となって現われた。(註、作戦第一、情報軽視)
5)日本軍の精神主義が情報活動を阻害する作用をした。軍の立案者たちは、いずれも神がかり的な日本不滅論を繰り返し声明し、戦争を効果的に行うために最も必要な諸準備を蔑ろにして、ただ攻撃あるのみを過大に強調した。その結果彼らは敵に関する情報に盲目になってしまった。(註、精神主義の誇張)

情報には必ずバイアスがかかるもの。間違った事実は間違った解釈につながり、間違った提案を生む。ビジネスを着実に成功させるためには、この事実>解釈>提案の順に可能な限り確度の高く、客観的な情報を集め、取り組むべきなのではないでしょうか。

以上。最後までご覧いただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?