No29 嘘も方便なのか

長く会社を経営していると、色々な従業員との出会いがある。良い人との出会いばかりだと言いたいところだが、何年経っても変わらず誠実な人の方が少ない気がしている。特に私が会社を始めたのは20歳。自分より年上の方ばかりと仕事をするわけだから、馬鹿にされていると感じることも多々あったし、実際に言葉で言われたことも何度もある。それで病んでいたら今の私は存在しないので、強いメンタルに生んでくれた母に感謝するしかないと思っている。
しかし人を馬鹿にするよりも私が厄介に感じているのが、嘘をつく人だ。
会社には有給休暇だけではなく、忌引きもあれば子の看護休暇もある。取得する際には既定の書類を提出してもらっているのだが、休み方に課題がある人が常に数名存在している。
30代も過ぎた大人が、親に電話させて休みの申請をしてきたり、嘘をついて休み、遊んでいるところに出くわしたこともある。
有給休暇に関しては理由の提出は不要だから、別に休んで遊びに行くのは構わない。しかし理由を提出すべき休みでそれをしていたら・・・休暇は本人の権利だとしてもね、と思うのだ。
私は年度初めに毎回研修で有給休暇の取得についても話をしている。今や当たり前が通用しない時代だから、全てを1から10まで説明しないといけない。しかし説明してもこのザマだ。
就業時間は決まっているのに、今日は早目に来たので早く帰りますと言い始める新卒者がいたり、休憩時間を会社の空き部屋を勝手に使用し、しかも施錠して他の人が入れないようにしてみたり、最早カオスである。
注意をすると、決まってその場しのぎの嘘をつく。言い訳をする。
バレないとでも思っているのか、不思議でならない。
中には本当は忌引きなのに、会社の人に気を遣わせたらいけないからと、有給を使っていた人もいる。そういう嘘は優しい嘘だし、その人の評価が下がることはない。仏教用語の方便というのは、仮の手段として嘘を認めることを表すらしいから、仏様も、こんな優しい嘘ならにっこり微笑んでおられると思う。
優しい人ほど、生き辛い社会になってきたなと思う。
嘘が溢れ、嘘を操る人には重ねる内に罪悪感も消えていく。
労働基準法が労働者を守りすぎ、怠慢な人を助長し、人の成長の可能性を阻害する側面があることも考えてみて欲しいと思う。
そう言えば、正直者は馬鹿を見るという言葉もあるけど、そういう社会にしてはいけないという、戒めにしないといけないんじゃないのと思う。

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