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【モルパンク遊記】ストーリー予習用:ヒンドゥー教文化について


今回は1/18により開幕する『モルパンク遊記』に先駆けて、物語に関係してきそうな要素について解説してまいります。

まずタイトルになっている『モル・パンク』ですが、これはヒンドゥー語で孔雀の羽を意味しており、孔雀はインドの国鳥になっているほどインド文化と強く結びついてます。
ヒンドゥー教に於いては神々と関係していることから精神的なシンボルとなっており、ヒンドゥー教の哲学では孔雀の色鮮やかな羽の色は、旅(人生)で経験する様々な出来事を表している、と考えられております。


では今回の物語に関連性がありそうな神話や文化に目星をつけて解説をしていきます。

まず、舞台がインドということもあってインド神話は外せません。
インドにはヴェーダ神話/ブラーフマナ神話/プラーナ神話をはじめ、様々宗教に宗派があるのでインド神話は非常に複雑で整合性がありません。
なので定番の神話を抑えておきたいのですが、まずはやはりヒンドゥー教で重要な存在となる『三神一体』の説明からしてまいります。

『三神一体』とは創造神ブラフマー/維持神ヴィシュヌ/破壊神シヴァの三柱からなる宇宙創生を司る神であり、彼らは同一とされています。
そして『三神一体』はインド哲学の『ブラフマン』という”宇宙の根源”を意味するものと同義とされており、また『ブラフマン』は”個人の根源”である『アートマン』と同一と考えられております。この概念を梵我一如(ぼんがいちにょ)と言います。

面白いことにこの『ブラフマン』と『アートマン』の考えは、占星術の宇宙を意味する『マクロコスモス』と個人を意味する『ミクロコスモス』の関係性にかなり似ています。
どちらもルーツは不確かですが、インド哲学に於ける『全は一、一は全』の考えにも当て嵌まることから、インドでは個も宇宙も同じで、終わりも始まりもない、という思想が強く根付いているということがわかります。


次に今回の物語では、天体の衝突が大きな要素となっていることから、インド天文学についても触れておきます。

インド天文学は他国の科学と比べると異質で、占星術を科学と認識し天文学に採用されています。
一応、北欧でも中世までは天文学と占星術は同義のものとして扱われてはいましたが、インドでは現在でも占星術を天文学の一部と扱っていることからその異質さがわかります。

このためインド天文学は暫し天文学の分野では疎んじられ科学と認知されておりませんが、とは言え占星術は古代の数学者が起源となっていることから一概に非科学的とは言えず、またインドからは天才的な天文学者を数多く輩出しているのでオカルトチックではあるもの一般科学とは違った目を見張るものがあります。


続いてイベントのあらすじを説明していきますが、マチルダが彗星と占星術との関係を調べにインドにやってきてカーラ・ボナーという天文学者と出会います。そして彼女が予測した天体の衝突を阻止するためマチルダ達が奮闘するというのが今回の物語の本筋となっております。

カーラーは『ディーワーリー』の日に天体が 落ちてくると言っていますが、まずこの『ディーワーリー』とは何か説明をしていきます。
これはインドの11月1日に行われる祝祭で、”光が闇に打ち勝った日”とされます。
よってこの日はインドでは重要な日とされており、『ディヤ』と呼ばれる蝋燭が街中に飾ったり多くの花火が上げられ、光に纏わるものを使って祝しています。

そしてカーラはこの『ディーワーリー』の日に天体が落下すると、神話を解析して予見していますが、”天体衝突”と”インド神話”に関して関係性がありそうな話は幾つか存在しております。

まず一つ目に『シヴァ・クレータ』というものがあります。
これはインドにあるシヴァ寺院の直ぐ側にある世界最大級のクレータの名前で、このクレーターは恐竜を絶滅に追い込んだ天体によって出来たものだという仮説が存在します。

またこの『シヴァ・クレータ』に関連して『シヴァ仮説』というものが存在しております。
『シヴァ仮説』とは天の川銀河に対する太陽の周期的な運動によって絶滅級の天体が3000年周期で落下する、という仮説です。
更にこの仮説から派生して、『ネメシスという仮想の天体』が生まれました。
ネメシスは太陽が生まれた時に同時に出来た双子(伴星)の『褐色矮星』と言われており、太陽から1.5光年離れたこのネメシスの影響を受けた彗星が2600年周期で地球に落下してくるというのが『ネメシス仮説』です。

『褐色矮星』とは小さな恒星が冷たくなった死骸の事で、カーラ・ボナーの名前は翻訳すると『黒色矮星』であることからひょっとすると関係してくるかもしれません。
『黒色矮星』は現在では『褐色矮星』と同義

https://www.esamskriti.com/e/History/Indian-Influence-Abroad/A-Day-and-Night-of-Brahma~-The-Evidence-from-Fossil-Records-3.aspx

他にもヒンドゥー教は独自の世界観を持っており、インド天文学ではケートゥラーフという仮想の惑星を含めて太陽系惑星が9つ存在すると考えられております。
これをナヴァグラハ(九曜)と言い惑星と神を同一視した概念で、ケートゥラーフの2柱が揃った時、太陽を飲み込み日食や月食を起こす悪星と言われています。

なおケートゥは彗星の頭、ラーフは彗星の尾とされていることから今回の物語と関係してくる可能性はありそうです。


続いては
カーラがペンデュラムを持って浴槽に入っているシーンがありますが、これは”水占い”という古代エジプトから伝わる占術で、水の清濁や揺らぎから未来を占うというものです。
また水に浸かることで潜在意識に深く潜り込み覚醒状態になれると言われております。
そして手に持っているペンデュラムは”ペンデュラムダウジング”という水脈探しや星占術などで用いられる道具です。
この2つの占いを同時に行うような儀式は存在しないと思われるので、彼女のオリジナルの儀式なのかもしれません。

次にこのカタパルトのような建造物ですが、これは”ジャンタル・マンタル”という1725年に作られた天文台です。
これはアンベール王国の君主ジャイ・シング2世が設計した天文台で、当時の天体観測技術としては制度が高かったようです。
この建造物から解るようにインドは昔から天文学の探求が進んでおり、現代の天文学にも大きな貢献を与えていといえます。


・キャラクターについて

『カーラ・ボナー』についてですが、彼女は天文学者でありますが占星術道具のペンデュラムを持っていることから占星術に通じている人物だと思われます。インド天文学では占星術も科学と認識されているようなので彼女も天文学に占星術を用いているのだと思われます。

そして彼女の『カーラ・ボナー』という名前についてですが、英語では彼女のサブネームの『black dwarf』つまり『黒色矮星』という亜恒星の名前になります。
『黒色矮星』とは、超新星爆発を起こすことなくエネルギーを失い圧縮して死んでしまった小さな恒星を『白色矮星』と言い、更に『白色矮星』が冷えて可視光線で補足出来ないものを『黒色矮星』といいます。

しかしながら『白色矮星』が冷えて『黒色矮星』になるまでに200億年かかると言われており、宇宙がまだ生まれてから138億年しか経っていないことから『黒色矮星』は存在しない仮想恒星とされています。
ですがインド哲学では宇宙に終わりも始まりもないと考えられているので、その理論で言うなら『黒色矮星』が存在している可能性はあると言えるでしょう。

彼女のウルトでは黒色矮星がホロスコープをくぐり抜け白色矮星に戻り、更に出生図をくぐり抜けて恒星となり、その恒星が流星群を齎す描写がされていのがわかります。

次に彼女がどのような天文学の研究をしているかというと、PVでは”とある恒星”は星の墓穴であり揺り籠でもあると解説していることから『ブラックホール』について研究している天文学者であることがわかります。

おそらくPVでは『ブラックホール』の存在を提唱したが、人類科学が及ばない域の発見をしてしまったため神秘学者とバレて追放されてしまったのかもしれません。

ちなみにインドの天文学者で『ブラックホール』にゆかりのある人物がおり、彼の名を『スブラマニアン・チャンドラセカール』と言います。
彼は世界で初めて『ブラックホール』の存在を予見した人物で、また『白色矮星』には質量上限値があるという『チャンドラセカール限界』を発見した人物です。
『ブラックホール』や『白色矮星』など類似点が多いことからもしかするとカーラの元となっている人物はチャンドラセカールかもしれません。

カラリパヤット↓


次に彼女の師であり今回の黒幕となりそうなクマールですが、彼女はインドの天文学者である『シヴ・クマール』が元ネタになっていると考えられます。
彼はあまり有名な学者ではありませんが、『褐色矮星』の存在を予見した人物であり、この『褐色矮星』は当初では『黒色矮星』と同じものと考えられていました。
つまりクマールは”カーラ・ボナーを発見した人”と言い換えると、二人の因縁がミエてくるような気がします。

ちなみにこの『シヴ・クマール』も『チャンドラセカール』も提唱する理論が先を行き過ぎて学会からは批判されていた不遇な学者という点も合っているので、そういった境遇も関係してくるかもしれません。


1963年,バージニア大学の天文学者クマール(Shiv Kumar)が「宇宙を漂うガスやちりの雲が重力収縮を起こして恒星になるのと同じ過程をたどり,恒星よりも小さな天体(褐色矮星)が数多く生まれている」との説を提唱。その後,天文学者たちは褐色矮星を躍起になって探したが,なかなか見つからなかった。

続いては『シャーマィン』ですが、名前からシャーマンが関係しているのは明確でしょう。
シャーマンとは霊界と現世を繋ぎ降霊術や予言や悪霊払いを行う霊的な力を持った人物の事を言います。

日本のイタコもシャーマンに分類されますが、彼の場合、踊りやトーテムの仮面にシャーマンドラムなどからシベリアやチベット辺りのシャーマンの特徴を併せ持っております。

そして彼の背景に写っている山は『カイラス山』と言う霊峰が該当するかもしれません。
カイラス山は付近に住んでいるシャーマンからも神性な山と崇められておりますが、ヒンディー教からも聖地とされており破壊神シヴァの故郷だと言われております。
聖域でもあることから登頂が禁止されていますが、チベット仏教修行者のミラレパが山頂に達したという伝説が有ります。

続いて彼のウルトですが、躍動的な踊りはシヴァの踊りを連想させます。
シヴァの踊りは『ターンダバ』といい、破壊の象徴とされ洪水や嵐を起こしたと言われております。
ウルトの最後の方にも洪水が出てくるのでもしかすると関係しているのかもしれません。

ヒンドゥー教とシャーマンはあまり接点はないのですが、彼の”踊り”という要素で『シヴァのダンス』と『シャーマンのダンス』が結び付けられているのだと推測しました。

最後に『ガンジーナ』ですが彼女は手にコブラを持っていることから『蛇使い』と思われます。
『蛇使い』はプーンギという笛で蛇を動かし操っているように見せるパフォーマンスですが、彼女の場合、笛などを用いずまた一般的に考えられる『蛇使い』のようなパフォーマでもありません。
もしかすると古代エジプトでは『蛇使い』は医学師や魔術師だったと言われていることから、彼女はその時代の『蛇使い』が元になっているかもしれません。

次に彼女のウルトでは足元に魔法陣のようなものが出ていますが、これは『ホロスコープ』という占星術で使われるものです。
星占術には基本、蛇が用いられませんが、ホロスコープ占星術も蛇使いは両方とも古代エジプトが起源になっている事から、その時代の人物が彼女のルーツになっているかもしれません。

今回の解説は以上となりますが、今回のイベントはおそらくインドが舞台とだけあって難解なシナリオになっているかもしれません。
この動画が少しでもあなたの旅に役に立てれば幸いです。





参考記事↓

行至摩卢旁卡 考据
Mor Pankh
ディーワーリーヒンディー語: दीवाली

https://www.esamskriti.com/e/History/Indian-Influence-Abroad/A-Day-and-Night-of-Brahma~-The-Evidence-from-Fossil-Records-3.aspx


インドの占星術師↓


https://ngabbs.com/read.php?tid=37510176&rand=403



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