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Notorious RBG! 最高裁判所判事ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏のLegend

SIS・シス発起人の栗原優子と梶原奈美子です。SISは、”Sisterhood(共に助け合い成長する女性たち)”をキーワードにしたミレニアル世代のグループで、「世界の女性リーダーから学ぶ人生デザイン」勉強会を運営しています。

毎月、日本では深く取りあげられていないけれど、私たちが素敵と感じる世界の女性リーダーを深堀りし、グループで議論を行っています。このnoteでは、その深堀りした内容や私たちが共感した点を共有していきたいと思います!

第二回はNotorious RBG!

今回SISがピックアップしたのは、アメリカの最高裁判所判事を27年間勤めたRuth Bader Ginsberg(ルースベイダーギンズバーグ)氏。愛称は”RBG”です(私たちも、この記事の中ではRBGと呼ばせていただきます!)

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今年の9月に、米国大統領選挙目前にして惜しくもこの世を去り、多くの人が哀悼や感謝を胸に、彼女の功績に思いを馳せ、メディアでも彼女の人生に改めて注目が集まりました。

米国において彼女の人気は凄まじく、尊敬の対象であるとともに、Gender Equalityを象徴するアイコンとして、RBGのTシャツやグッズ(このリップグロス欲しい!)まで売り出されるほど。

きっかけは2013年6月、ニューヨーク大学のロースクールの学生だったShana Knizhnikさんが、HiphopのアイコンであるThe Notorious B.I.G.にかけて「Notorious R.B.G」というタイトルのTumblrを作成したこと。ちなみにNotoriousとは”ワルで有名な”と言う意味。

「彼女はあんなに小柄なのに、とてつもなく大きな存在です。彼女が威厳と気品をもって長年やってきたことをみれば、大胆不敵な“やり手”なのに、誰もそう見ようとはしていませんでした。でも彼女はまさに“イケてるワル”なのです」「国のためにこんなに素晴らしいことを成し遂げた人を称える場所が必要だと感じた」ことがきっかけだったそう。後に書籍化されています。

なんか、かっこいい。Tシャツを着たくなってしまう、最高裁裁判所の判事!なぜそこまで多くの人たちから尊敬を集めているのでしょうか?

彼女の半生を追いかけた映画、「RBG 最強の85才」の予告編動画をぜひご覧ください。

たった一人が成し遂げたと思えない、偉大な功績の数々。

ブルックリン生まれのギンズバーグはハーバード大学に進学し、学年で9人しかいなかった女学生のひとりとして法学位を取得。しかし、女性の先駆者としての快挙はこれが最後ではない。その後、コロンビア大学ロースクールで初の女性終身教授となり、アメリカ自由人権協会で女性の権利プロジェクトを立ち上げ、男女平等を求める数多くの訴訟を手がけ、1993年にはビル・クリントン大統領(当時)に指名され、女性として史上2人目となる連邦最高裁判所判事に就任。このほど逝去するまで、27年間に渡ってその任務をまっとうした。 引用: ルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事が遺した12のパワフルな名言

RBGは、弁護士時代、1970年代にアメリカ自由人権協会(ACLU: American Civil Liberties Union)で、女性の権利プロジェクトのディレクターに就任し、米国最高裁で男女平等に関する5つの画期的な裁判に勝利。Gender Equalityの基盤を築きました。

5つの裁判によって認められた権利
・雇用者は従業員を性別や妊娠の有無によって差別することができない
・州立の学校は女性の入学を認めなくてはならない
・女性は経済的な独立と平等な福利厚生を得る権利がある
・男性も女性と同様の家庭のケアに従事し、また社会保障を得る権利がある
・陪審員は女性を含める必要がある

女性というだけで働く権利を得られなかったり、妊娠が発覚すると解雇される。女性が男性の保証なしに銀行口座が作れなかったり、クレジットカードが作れない。男性が子供や家庭のケアに時間を割けなかったり、それに関する社会保障を男性という理由で受けられない。裁判で性別が偏った陪審員のために不利な条件で戦わないといけない。こういった今では当たり前と感じられる権利が認められてきた背景に、RBGの功績があるのです。一人の人間が社会に与えられるインパクトの大きさに、衝撃を感じます。

その彼女の功績と判事でありながらポップアイコンにまでなったカリスマ力を紐解いてみたいという思いから、今回はRBGについて学んでいきます!

SIS's Point①:“Anger is useless emotion” (怒りは無用な感情)

映画「RBG 最強の85歳」の中で、SISメンバーが自分たちにとって実践的な学びと感じたのはこの言葉。

怒りは時には大きな原動力となって、私たちを動かしてくれる。それが無用とはどういうことなんだろう?SISメンバーの中でまず議論となったのは、「怒り」という感情の扱い方の難しさでした。「色々なことに対してすぐ怒ってしまう」人もいる一方で、「怒りを感じてもうまく伝えられず、いつか爆発してしまう」というタイプも。どちらの場合も、難しさの理由は、怒りによって議論や物事の本質から意識が離れてしまうことでした。

”時々聞こえないフリをするのって役立つものよ”
引用:Ruth Bader Ginsburg Delivered The Best Career Advice You'll Ever Hear, In Just One Sentence

これは、RBGの義理のお母様から、結婚式の日に、良い結婚生活の秘訣として送られた言葉だそうですが、RBGはこれを最高裁も含む全ての職場において実践してきたとのこと。例えば、無配慮・不親切な言葉をかけられたときなどに効果を発揮すると言っています。

RBGは、ハーバード大学ロースクールに入学した際に、学部長が「男子の席を奪ってまで入学した理由を話してほしい」と、500人の学生中たった9人の女性入学者に一人一人説明させたことをインタビューで明らかにしています。更に、彼女が通ったハーバード・コロンビア大学の両方で優秀な成績であったにも関わらず、連邦高等裁判所やニューヨークの法律事務所に女性であることを理由に拒否されるなど、彼女自身も苦労の道を歩んでいます。

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引用:Ruth Bader Ginsburg and Harvard Law: A 64-year journey

更には法廷の経験でもこう語っています。

あの頃は、自分自身を幼稚園の先生のように感じていたわ。なぜなら、他の判事の同僚たちは、性差別は存在しないと思っていたから。彼らの頭に植え付けたかったのは、「あなたの娘や孫娘が生きる世界がどのようになっていてほしいかを考える」ということよ。
引用:映画「RBG 最強の85歳

この厳しい当時の環境で、無配慮・不親切な言葉をかけられたことも、きっとあったでしょう。レジェンドであるRBGも、鉄の心を持っていたわけではありません。しかし、彼女が多くの講演で残しているのはこの言葉です。

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“React in anger and annoyance will not advance one’s ability to persuade.”
怒りやいら立ちに感情のまま反応することは、
説得力を増すことに繋がらない

引用:Ruth Bader Ginsburg Delivered The Best Career Advice You'll Ever Hear, In Just One Sentence

彼女は、怒りを感じることそのものを否定しているわけではありません。ただ、怒りのままに人に対応することは、自分の精神にネガティブな影響があるだけでなく、それにより相手に対する説得力を増すこともできない。何もいいことがなく無用なものである、ということをきっと経験から良く理解されているのですね。自分と異なる立ち位置にいる人たちに、理解を求めようとする際には、合理的なアプローチです。なぜなら、人を動かすには相手に寄り添うことがまず必要だから、と彼女は言います

怒りを感じたら、まずひと呼吸おいて、そして自分がRBGになったつもりで、これらの言葉を実践したい・・・と思うSISメンバーです。

SIS's Point②主義主張の違う人と人間として繋がる力

分断の色が一層濃くなっているアメリカでは、保守・リベラルと大きく意見が分かれる事案において、最高裁判所の役割は大きくなっています。その主義主張が異なる9人の”同僚”が集まる”職場”で27年働いた彼女の象徴的なエピソードが、スカリア最高裁判事との友情です。

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引用:Opera, travel, food, law: The unlikely friendship of Ruth Bader Ginsburg and Antonin Scalia

RBGは、1993年に、当時のクリントン大統領の指名を受け、最高裁判事に就任。当時史上2番目の女性最高裁判事となりました。

スカリア判事は、1986年、レーガン大統領の指名を受け最高裁判事に就任。保守派として知られていました。

ユダヤ系女性のRBGと、イタリア系男性でカトリックのスカリア判事。一見交わることのないような二人は、裁判では多くのケースで互いに対立しましたが、一方プライベートでは、オペラ好き、NY出身といった共通点をもちながら、家族ぐるみの深い友情を築きました。

スカリア判事は、RBGと二人で登壇したインタビューでこんな冗談を飛ばしています。

“We agree on a whole lot of stuff,” he added.
“Ruth is really bad only on the knee-jerk stuff.”
私たちは幅広いいろんなことで意見が合うんだ。
でもルースは、お決まりの件だけはほんとに譲らないんだよね。
"What's not to like?" "Except her views on the law."
彼女の好きじゃないところって?法律に関する見解以外かな

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2016年にスカリア判事が亡くなった際には、RBGがこのように回顧しています。

"From our years together at the D.C. Circuit, we were best buddies"
D.C. Circuitで一緒に過ごした何年もの年月において、
私たちは最高の仲間でした

そして、こんな冗談も。

バージニア州立軍事学校に女性入学を認める判決を出した裁判において、私が高裁としての見解をまとめていた際に、スカリア判事が意義を唱えてきました。辛辣で、やたらに批判的なポイントばかりでした。
しかし、私は数日余計に働いて、法廷としての意見を調整することになってよかったと思っています。私の最終案は、スカリア判事の焼けつくような批判のおかげで、とっても良いものになったんです

尊敬し合う、深い友情を感じます。

“How blessed I was," she wrote, "to have a working colleague and dear friend of such captivating brilliance, high spirits and quick wit.”
私はなんて恵まれていたんでしょうか。高尚な魂を持ち、機転が利き、そして本当に魅力的な頭脳を持っている友達、同僚と働くことができたなんて。

最高裁判事の仕事は、とりわけ、根源的な価値観を問われるような難しい判断が求められるます。RBGとスカリア判事が、それら判断においては対立しながらも、人間としての尊敬に基づいた素晴らしい友情を築けることは、今の分断の時代において、希望であり、私たちも着目すべきことではないかと感じます。これこそが、まさに、今の人々がリーダーに求めている姿なのではないか、とも思うのです。

分断の亀裂が大きい相手ほど、分かり合えることを最初から諦めてしまうこともありますよね。RBGの、アメリカの両極端ともいえる主義主張を超えた、人間としての関係を築く力も、レジェンドと呼ばれる所以なのかもしれません。

SIS's Point③Give first - コミュニティに貢献する

スタンフォード大学で行われた講義で、「あなたにとって、意味ある人生を送るとはどういうことですか」と問われた時、RBGはこのように返答しています。

本当のプロフェッショナルになるためには、自分以外のための何かをすることが大切です。それは、例えば、コミュニティのほころびを直すこと。自分より少し恵まれていない人がより良い人生を送れるようにすること。なぜなら、人は自分のためだけではなく、コミュニティのために生きているから。

ミッドキャリアに突入するにつれ、仕事の複雑性や競争の度合いが増し、また、必死で駆け抜けてきた道を振り返ると点がバラバラに見えたりして、ふと自分の人生における働く意味(Purpose)を見失うことがあります。

このRBGの言葉は、その人生全体で、人々の権利を守るために戦い、社会に強烈な前進をもたらした彼女だからこその重み、偽りなさを感じます。また、RBGは、判事としての仕事を、両極端の主義主張をぶつけて争うこと、自分の主張を通す場所として捉えていたのではなく、人間社会がより良く生きるための仕組みやあり方を議論する場所と捉えていたのではないでしょうか。スカリア判事との主義主張を超えた友情も、互いを最高の同志と捉えていたからこそ築けたものだと思うのです。

前回のカマラハリス氏の回でも感じましたが、人生全体を通した大きな社会へのPurpose=あなたは仕事を通じて社会にどんな変化をもたらすのか?どう社会をよくしていくのか?をミドルキャリアの今あらためて見直すことが、視点の転換やGritに繋がり、長期的により良い仕事を成し遂げることに繋がるのではないかと感じます。

SIS's Point④小さな戦いではなく大きな戦いを選ぶ

仕事を通じてコミュニティに貢献したい、社会により大きなインパクトをもたらしたいと思ったとき、私たちがRBGから学んだことは、「小さな戦いではなく大きな戦いを選ぶ」ということです。

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引用:From Top Law School Grad to Notorious R.B.G.: The Evolution of a Supreme Court Justice

母親から、「Ladyでいなさい。そして、自立した人間でいなさい」と言われて育ったというRBG。前回のカマラハリスが漂わせるGrace、華やかさに対して、RBGは、Reserved、Humility、静かで控えめなオーラを纏っていますよね。

Reserved(控えめ)、というとモヤッとする思いのある女性も多いかもしれません。伝統的に控えめな役割を求められる女性を長年やっていると、主張が強すぎると思われたり、逆に主張がなかなかできなかったり。

しかし、RBGにとって、Reservedであること、Ladyであることは戦わないという意味では決してありません。むしろ彼女はその生涯をかけて、Gender Equalityや人々の権利を守るために、自らもキャリアを開拓しながら戦ってきた、フロントファイターなのです。

限られた人生の時間で社会を変革していくためには、小さな戦いを一つ一つ戦う時間はありません。しかも、SISの私たちの議論では、小さな戦いを戦いすぎると相手からの信頼貯金がなくなり、いざという大きな戦いをするときに意見を相手に聞いてもらうことができない、という意見に全員が頷きました。

彼女が、怒りや感情が無用だと断言したのは、それは、彼女として戦うべきもっと大きな戦いが見えているからではないでしょうか。それを達成するためには、無用な戦いをせず、むしろを主義主張を超えた人間の信頼関係を作っていくことが重要ということを理解しているからなのかもしれません。

この、Reservedでありながら、社会を変えた激烈変革者である、これがアメリカの人々を熱狂させる彼女のカリスマではないでしょうか。これ以上のロックはない!

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晩年、闘いに備えて体を鍛えるRBG

アメリカ人がこんな風にコメディにしちゃいたい気持ちもちょっとわかっちゃう気がしました。だって、カッコ良すぎる!

2020年9月18日、ルースベイダーキングスバーグ、アメリカ連邦最高裁判所判事は、その87歳の生涯を閉じました。

人生をかけて、人々の人生を救うため、社会を前進させるために戦ったルース判事への敬意を表するため、何百人もの人たちが最高裁判所の前に集まりました。

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引用(上):A Titan of Justice’: Leaders React to Ginsburg’s Death
引用(下):Hundreds gather outside of US Supreme Court to mourn Ruth Bader Ginsburg

SISの私たちからも、ありがとう。

次回は

Glossierというアメリカのミレニアル・Gen Zの心を鷲掴みにしている、ユニコーンスタートアップ創業者のEmily Weissさんについて勉強します。初のビジネスリーダーになります!

お楽しみに!!





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