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間違いだらけの伊勢神宮参拝ガイド

 伊勢神宮。正式名称は「神宮」であり、日本に数ある神社の中でも最高峰の存在だ。2,000年の歴史をもつ神宮は、その歴史の中で何度も参拝ブームが発生した。お伊勢参りに関する歴史は小学生の社会科の授業でも触れられ、幼少期のうちから「一生に一度はお伊勢参り」という刷り込みがされている。さて、普段は大して神道に対して興味を持たない私もその一人。ただ、人よりも信心深い方ではあると思う。先人たちにならい、神頼みをするのもたまには良いだろう。

 ささいなきっかけから伊勢神宮へ赴くことになった。その経緯と道中記は下記の記事をぜひ読んでみてほしい。

 神社の参拝に関する作法は非常に多い。さらに伊勢神宮は、他の神社とは別格の存在であるため、イレギュラーな作法が数多く存在する。それらに関する書籍や記事はこの世に数多に存在するため、いまさら神社ビギナーの私が解説することでもないだろう。今回は下調べもそこそこに、勢いだけで人生初のお伊勢参りに来てしまった私による、間違いだらけの伊勢神宮参拝ガイドをお届けする。くれぐれも参考にしないように。

伊勢神宮 概要

 三重県伊勢市に存在する伊勢神宮だが、伊勢神宮とされる神社は大きく二つある。まずはメインである天照大神を祀る内宮(ないくう)と、天照大神の喰事を司る豊受⼤神宮を祀る外宮(げくう)だ。外宮を参拝してから内宮に行くのが一般的な参拝ルート。外宮と内宮は5kmほど離れている。自家用車を使うか、伊勢市駅からのバスを利用するのも便利だろう。ちなみに外宮は伊勢市駅のすぐ近くにあるため、アクセスに困ることはない。ちなみに片方の神宮だけにお参りするのは「片詣り」と呼び、避けた方が良いとされる。が、厳密なことを言うと主要な二つの神宮以外にも、参拝した方が良いとされるサブの伊勢神宮が市内に大量に存在する。さらに本気で参拝する場合は登山まで含まれてしまう有様だ。あまり厳しく考えず、無理のない参拝計画を立てよう。

間違いだらけのお伊勢参り

外宮編

 朝7:00、朝の準備からすでに参拝は始まっている。結構な距離を歩くことになるため、朝喰はしっかりと摂ろう。喰事を司る神様に会いに行くのなら尚のことだ。そして伊勢神宮に限った話ではないが、神社の参拝ではファッションが重要になる。伊勢神宮に参拝して思ったのだが、多くの人が地味な格好で参拝をしている。1日に何千という人々の願いを聞かされる神様の印象に少しでも残るため、人に覚えられやすいような格好をすることが重要になってくる。派手な服が無い。もしくはそうした格好で神社に赴くのは難易度が高い。などと感じた場合は、アクセサリーや帽子などのワンポイントアイテムで差をつけるのも良いだろう。ちなみに今回、私はシャツ、ネクタイ、フライトジャケットといったモッズスタイルに、丸サングラスを合わせて挑んだ。神様もモッズに参拝された経験は少ないだろう。

 朝8時。まずは外宮へ赴く。駐車場の一番手前がバイク用の駐輪場になっており、ライダーも安心だ。駐車場から表参道まで距離があるため、今回は裏側の参道から歩いた。時間がある方は表からゆっくり回ろう。当日の天気は晴れだったが、木々が生い茂り、参道は神秘的な暗さ。葉の間から漏れた光が道中を照らす。最高の演出だ。

手水舎
空気が美味しい
すでに神を感じている

 道が広くなり、すぐに御正宮が現れる。伊勢神宮は敷地の中にいくつかの宮があり、御正宮を参拝してから別宮を回るのが良いとされる。さてさて、さすがに日本最高峰の神域だけのことはあり、オーラがすごい。外宮でこんなにもパワーを感じるのなら、内宮ではどうなってしまうのか。武者震いしてしまう。

御正宮。ここから先は撮影禁止だ。
神域とか関係なく盛りまくる杉の木。花粉がやばい。
石段も非常に美しい。
多賀宮
土宮
風宮

各宮へ参拝したら、御朱印を貰おう。御朱印マニアの間では御朱印帳を買った時、最初のページを空けて御朱印を貰うのが通という文化がある。これは最初のページに、日本最高の神社である伊勢神宮の御朱印を押してもらうため、他の神社で御朱印をもらう際には伊勢神宮用のスペースを空けておくということだ。私も今回初めて御朱印帳を買ったが、ここは伊勢神宮。迷わず最初のページに御朱印を頂く。

かっこいい
シンプルなのが、逆に風格を感じる。

 外宮の参拝もそこそこに、ついに内宮へ向かう。お待ちかね。正真正銘日本最高の神社であり、天照大神に逢える場所だ。

内宮編

 内宮も入り口の一番近いところがバイク駐輪場となっている。狭いため、行楽シーズンなどはすぐに埋まってしまいそうだ。鳥居の近くに喫煙所がある。伊勢神宮内は神域だからという理由で禁煙だが、ここだけの話、神は喫煙者だ。神は人間よりも遥かに長い年月を過ごしている。そこまでくると暇な時間も多いため、嗜好品はとにかく片っ端からやる。神なので健康に気を使う必要もないし、タバコ税に怯える必要もない。全盛期の小沢一郎ばりのヘビースモーカーだ。神としっかりタバコミュニケーションをとろう。とはいえ、喫煙はきちんと決められた場所で行おう。

入り口のすぐ左側に喫煙所がある。

 伊勢神宮に限った話ではないが、神社の参拝のコツは「若干ナメた態度で行う」ことだろう。考えてみて欲しい。伊勢神宮には毎日大勢の人間が「神様LOVE…」の気持ちで押し寄せる。ご存知の通り、天照大神は素直に他者からのラブに応えるような神ではない。ここは敢えて「オレ、神とか信じてないっす」みたいな感じで参拝することで、天照大神の興味を惹こうというワケだ。「そんな失礼な態度、神罰が下るぞ!」と思われるかもしれないが、心配はご無用。その程度で神罰を下すほど、神様は器の狭い存在ではない。ただし、ここで放尿などの本当に失礼な行為はしないように。神罰どころの話ではなくなる。あくまでも心の中でちょっとナメるのがベストだ。

 さて、鳥居をくぐったものの、ここで予想していなかった事態が発生する。神のオーラを感じない。天照大神が不在なのだ。外宮では確かに感じた神聖なパワーがここにはない。普通に温泉地に来たのと同じような感覚だ。もちろん、神社とはいえ常に神様がいるわけではない。我々も仕事に行ったり、旅行に行ったりと、家を不在にする機会は多々存在する。今回もそういうタイミングで参拝してしまっただけだろう。外宮に比べ、より観光地らしく整備されてしまっているというのも、神域らしさが薄まっている理由の一つだろう。仕方のないことだが。とりあえずお参りをしよう。二拝二拍手一拝で、世界平和を願う。太陽神はスケールの小さい人間になど興味がない。こちらも器とスケールのでかさを見せつける。

階段の上に鳥居というニクい演出。

 それにしても平日だというのに混み合っている。これが行楽シーズンの週末ともなったらどうなってしまうのだ。想像しただけで恐ろしい。バスツアーの団体が一斉に二拝二拍手一拝を行う姿は圧巻だ。自分が今、宗教施設にいるのだということを改めて意識させられる。

ギガ・参拝者

 ここでもしっかり御朱印を頂く。最初の2ページが日本最高峰の神社の御朱印で埋まるのはなかなか圧巻だ。これを胸ポケットに入れておけば、多少の銃弾どころかミサイルも防げるだろう。

POWER

 また、お守りも購入する。今回購入したのは厄除けのものと、交通安全のもの。この二つを購入することにより、私のバイクをダイヤモンドよりも硬くすることができる。必須の強化アイテムだ。伊勢神宮で買えるものがおそらく最も効果値が高いので、必ず入手しておこう。

絶対死にたくない

 参拝を終えたらお待ちかね、おかげ横丁での散策だ。ちなみにおかげ横丁は赤福の社長が企画を立ち上げ、1993年に完成した比較的新しい観光地だ。高度経済成長の際、客足が落ち込んでしまった伊勢神宮。その再生のために140億円をかけて制作された。江戸時代にお伊勢参りで賑わった、当時の街並みを再現しようというコンセプトで、妻入の建物や古いスタイルの洋館などが再現されている。街並みを見ているだけでも楽しい。そんな街中をモッズが闊歩する。時空警察に誤逮捕される危険性がある。

気分は江戸時代。
赤福本店
本当に好きです。すみっこぐらし。映画も観てます。

 さて、伊勢に来たら喰べてみたいものがあった。伊勢うどんである。私は山梨出身。山梨といえば吉田のうどんが有名なように、文化としてはコシのある硬いうどんが主流だ。しかしながら私は母親が山口県出身。山口には「どんどん」という、世界三大発明の一つでもあるうどんチェーン店があるのだが、そこは福岡に近い柔らかいスタイル。私はどんどんのうどんが好きなので、柔らかいものが好みだ。伊勢うどんは柔らかいうどんの極地とも言うべきスタイル。期待が膨らむ。三重県のフォロワー曰く、地元の人は喰べないらしいが、名物とは得てしてそういうものだろう。早速お店に入り、最もスタンダードなものを注文する。想像を超えた柔らかさに度肝を抜かれる。

一番うまいのならここで喰べるしかないだろう
見た目の割に、ちょうどいいタレの濃さだ。

二見興玉神社編

 朝から参拝し、程よくお昼過ぎ。少しバイクで走り、二見浦海岸の二見興玉神社に行ってみよう。夫婦岩で有名なスポットで、伊勢参りの際はぜひセットで訪れたい場所だ。本来は伊勢神宮の参拝の前に、ここで日の出を拝むのが良いとされる。

 内宮から約10km。広めの道を通り、爽やかな気持ちでバイクを走らせる。この日は前日と違い風も穏やか。気温も程よく暖かく、気持ちがいい。20分ほどで到着する。バイク用の駐輪場が無いため、車用の場所に停めさせてもらう。平日で空いているから良いが、こういう時にバイクは困りがち。

伊勢神宮とはまた違った、明るい美しさ。

 波が荒い。海沿いなので少し風がある。岩にぶつかる波が風流だ。さて、二見興玉神社は猿田彦大神と宇迦御魂大神を祭神としている。猿田彦大神は天孫降臨の際に道案内の役割を務めた神様だ。そのため、導きの神様と言われているらしい。そして、神使が蛙であることから、神社の中には蛙の像が多い。転じて、「無事に帰る」「お金が返る」などといった験担ぎもされているようだ。

思ったより近い。
綺麗な橋

 内宮ではスケールのでかい願いをしたが、ここでは必死に「無事に帰れること」をお願いした。頼むぞ!

海沿いの道も美しい。

 夕方も近くなり、市街へと戻る。余裕を持った旅程だと、午後は丸々ホテルで休むといった贅沢な時間の使い方ができる。再びホテルの大浴場に入る。この時間はほぼ貸切状態だ。

伊勢神宮 おみやげ

 あまり観光地でお土産を買うことが無い。バイクで旅をすることが多いため、できるだけ荷物は減らしたいからだ。今回に関しても積載量の少ないバイクで来てしまったため、最低限の荷物だけですでにリアボックスがパンパンになってしまった。しかしながら、昔からどうしても買ってしまうグッズがある。動物に関連したグッズだ。今回の旅行ではおかげ犬のおみくじと、円干支を購入。おかげ犬は江戸時代にお伊勢参りが流行した時、旅行に行けない主人のために、代わりに願いを託され、伊勢まで行った忠犬のことだ。そんな可愛いおかげ犬をモチーフにした陶器製の人形で、お尻の穴からおみくじが出てくる。円干支は伊勢神宮で購入できる、干支をモチーフにした人形だ。特に私は干支をモチーフにしたグッズに弱い。今回は辰の円干支を購入したが、いつか全種類コンプリートしたい。

おかげ犬おみくじ
円干支。かわいすぎ。

参拝を終えて

 日本最高峰の神社。とにかく贅沢な気分だ。「守られている」という感覚が半端じゃない。ふざけたことをたくさん書いたが、それなりに神様に対するリスペクトは持っているつもりだ。日本最高の神域なんて言われてしまうと、必要以上に身構えてしまう人も多いだろう。しかしながら伊勢神宮の神様はさすがに観光客慣れもしているし、伊勢神宮自体も観光地としてしっかり整備されており、無神論者が訪れても楽しめる場所だと思う。一生に一度と言わず、もっと頻繁に訪れて、フランクに神様と会うのもいいのではないだろうか。いくつか文句も垂れてしまったが、私は伊勢神宮を気に入ったため、おそらくまた近いうちに訪れそうな気がする。さあ、明日からは伊勢から川崎までの帰路が始まる。帰りの道中もイベントが盛りだくさんだった。ツーリングレポートの後半でその様子をご紹介する。

吉塚千代


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