ライアーソフト『Forest』「Ⅰ プロローグ」考察。 (*ネタバレあり)


*ネタバレあり


〈「Ⅰ プロローグ」考察〉

 【アリス】のギフト、というものの存在を想定してみると、この話はスッキリするのかもしれない。

 アマモリは、森を作り上げた魔女にして、主人公=【アリス】である。

 ところが、「今年に入ってから見かけるようになった」黒いアリス。彼女の存在ゆえに、物語上にアリスが二人いることになってしまった。この矛盾はどう解釈するべきなのか。

 実は物語のスタート当時、黒いアリスは【ゲスト】のギフトを持っていたのではないだろうか。司会者にはタモリさんがいるので、司会者以外にテレフォン・ショッキングの場に存在できるのは、【ゲスト】しかいない。そしてもちろん、そもそもアマモリの森において、彼女はいつの間にか現れた【ゲスト】でしかない。彼女は【ゲスト】であるという限りにおいての行動しかできないのである。

 では、その行動とは何か。言うまでもないが、テレフォン・ショッキングは【ゲスト】が次のゲストを呼ぶコーナーである。つまり黒いアリスにできることは一つ。黒いアリスは、アマモリを呼んだ。

 これによってアマモリは【ゲスト】になった。黒いアリスの【ゲスト】のギフトと、アマモリの【アリス】のギフトが交換されてしまったのである。こうして森の創造主・主人公であるアマモリは、森に翻弄されるただの【ゲスト】へと堕ちた。物語の開始たった数分で。

 さて、もう一つ重要なギフトがある。アケルのもつ【エトランジェ】だ。【エトランジェ】は、人を傍観者として、物語の外へと追放してしまう。リドルを正解へと導くために、アケルはアマモリとこのギフトを交換した。アケルが【ゲスト】に。アマモリが【エトランジェ】に。 (*その後、【ゲスト】はタモリに譲渡されている。)

 すなわち、アマモリはここで完全に、物語から追放されたのである。彼女は森の創造主である【アリス】から、一気に部外者である【エトランジェ】に転落させられたのだ。

 こうしてアリスは強制的に、お茶会から追い出された。

 Ⅰ章のリドルがお茶会なのは、それが〈アリスがでていく〉エピソードだからである。リドルの答えは、アリスがでていくことしかない。

 このリドルに誘いこまれた時点で、アマモリはその創造主としての地位を失うことは決定づけられていた。そして黒いアリスが、まさに【アリス】=主人公として森に君臨することになる。この政権交代劇こそが、物語の「プロローグ」なのだ。

 もちろん、黒いアリスもまた【アリス】なのであれば、森のなかで迷うことは免れないのだが。


(2014/10/13に公開した記事に加筆・訂正)

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