なぜ人は「キンプリを見てください」しか言えなくなってしまうのか ―初心者のための『プリティーリズム』シリーズ入門(3)―


男子の画像忘れてたので…… (プリズム☆ソロコレクション byコウジ&ヒロ&カヅキ(CV:柿原徹也・前野智昭・増田俊樹) カスタムジャケット)


 さて、前回の記事ではキャラの可愛さと曲について紹介しました……でも、それじゃ普通のアイドルアニメと変わらないのでは? ということで今回は、『プリティーリズム』をプリティーリズムたらしめている最大の要素「プリズムショー」「プリズムジャンプ」に注目していきます!


プリティーリズムの魅力その3 : スケートとダンスを融合させたなんだかすごい競技「プリズムショー」

 プリリズ最大の特徴がこの「プリズムショー」。これはブレードの付いた靴を履いてダンスを踊りジャンプを披露する、アイスショーのようなものです。ただし、アニメならではの脚色があります。

 その脚色の最たるものが、必殺技である「プリズムジャンプ」必殺技です。監督が言ってたので間違いありません。必 ず 殺 す 技 です。一体なんでスケートで必殺技が必要なのかはわかりませんが、とにかくプリズムショーは歌とダンスに合わせて、この必殺技を繰り出す競技なのです。ここらへんはもう考えたら負け

 では、そのプリズムジャンプっていったいどういうものなのか。アニメ本編の動画を貼るのは正直どうなのか…とも思いましたが、短いシーンなのと、このジャンプは『キンプリ』を見る前に知っておいてほしいとも思うので、一つだけ動画を載せます。これがプリズムジャンプ「胸キュン体験」です。

プリズムジャンプ「胸キュン体験」


 プリズムジャンプは、作中で「心の飛躍」と表現されています。要するに、選手たちの心の有様がジャンプに反映されているのです。「胸キュン体験」などがその代表ですね。

 そして、この「心の飛躍」というのがストーリーのミソになってきます。「心の飛躍」というものが何を指すのかは、実際のところ誰もよくわからない。ただ努力をすれば良いというわけではない……精神状態によっては突然飛べなくなってしまうこともある……ノリノリだったのにジャンプの着地に失敗する……。このようにして、常にプリズムジャンプには予測不可能な要素が含まれてしまうことになります。したがって物語は不可避的に、「心の飛躍」とはどういう状態なのかを追究する方向へと向かっていくのです (とくに一作目ではそれが顕著)。『キンプリ』を鑑賞した方々が「世界が煌めいてみえる」とか「悩んでいる人はみんなキンプリ見てください」とかちょっと危ない宗教じみたことばかり言うようになるのは、そのせいなのだと私は思います。この作品は、「心」というものを主題にし、それをジャンプの形に表現することで、なにげない普段の世界の見え方を変えてくれる。そういうものなのです。

 少し抽象的な話になってしまいましたが、プリズムジャンプという要素はこうした理由から、ストーリーとライブを密接に絡み付けることに役立っているといえるでしょう。どうしてもアイドル系アニメはアニメ本編とライブの映像が解離してしまいがちですが、プリリズではアニメ本編の登場人物たちの心情がプリズムジャンプに反映されることで、ライブの結果とアニメ本編のストーリーとのあいだに、切り離せない関係が結ばれているのです。これによって、たとえ同じ曲や同じダンスでもドキドキしながら見続けられる。プリズムジャンプは、プリリズのおもしろさや緊張感を演出する最大の要素なのです。 

冒頭から何か狂っているとしか思えない映像が繰り広げられていますが、これが「プリズムジャンプ」です。


 さて、真面目すぎるトーンになってしまいましたが、上の動画を見ていただければわかるように、基本的にプリズムジャンプは何かがおかしい

 ジャンプ中にライオンに乗ってサバンナを駆け抜け

 ジャンプ中に尻から蜂蜜が出て

 ジャンプ中に世界と女子中学生が爆誕し

 ジャンプ中に銃撃戦がはじまり

 ジャンプによって人が真っ二つになり

 ジャンプによって地球が抱かれ

 ジャンプによって子どもが生まれる

 巨大化する少女 (「無限ハグ・エターナル」)。確認になりますが、これはジャンプです。エヴァ旧劇ではありません。

 

 まるでクスリをキメながら書いたような文章が並んでしまいましたが、悪いのは私じゃない。ほんとに、これが、プリズムジャンプなんです。プリズムエリートの方々がわけのわからない、うわ言のようなことをブツブツ言い始めたら、まずはプリズムエリートを疑うんじゃなくてプリティーリズムという作品のほうを疑ってください。くりかえす。悪いのは私じゃない。

 ストーリーが進行するにつれてどんどん高度に狂っていくプリズムジャンプ。空からダイビングをするくらいの高さしか跳べないと、すかさず「低い!!」といわれてしまいます。もはや宇宙に到達しないジャンプは大体低いんじゃないかとすら思えてくる。感性が麻痺しています (ここまで症状が進むと、次第にプリリズ未視聴者との間で会話が成り立たなくなってきます)。

低いジャンプ代表「フライハイチアガール」………どう見ても低くないよ? 


 そして、このプリズムジャンプ、幻覚などの類ではない。たとえば初期のジャンプ「フレッシュフルーツバスケット」はジャンプによって空中でフルーツをばら撒く傍迷惑な技ですが、ここで登場したフルーツは食べられるものとして作中で描写されています。主人公の家はケーキ屋ですが、ケーキ屋を経営する父が、娘にジャンプをさせてフルーツを出させ、ケーキの材料を調達するというおまけエピソードまである始末です。くりかえしますが、私の頭は正常です。

 ほかにもマカロンやバナナなどがジャンプによって生成されていました。つまり、プリズムジャンプ中の描写はただの演出や幻覚ではなく、物理的に実現していることなのです。 (………ジャンプ中に生まれた子どもはどこへ行った?)

 ジャンプが物理的なものであるならば、当然ジャンプによる物理攻撃も可能ということになります。何を言っているのかわけがわからないかもしれませんが、可能です。プリズムショーは殺り合い、命(タマ)の取り合いです。ここを事前に理解しておくと『キンプリ』を一層楽しむことができるでしょう。嘘です。理解もクソもないです。感じて。

 プリズムジャンプを説明付きで詳しくまとめているサイトがあります。読んでいるだけで頭痛がしてくるような謎ジャンプばかりなので、ぜひとも目を通してみてください。リンクは自由ということですので貼らせて頂きます。 → プリティーリズム [必殺技辞典]


 さて、この時点で先述した「プリティーリズム」は「プリティーリズム」としか呼べないということの意味がわかってきたのではないでしょうか。一見アイドルものにも見えるし、内容としてはフィギュアスケートやアイスショーに近いのに、その内実はまったく説明不可能な謎の競技。それをめぐる一連のストーリーが『プリティーリズム』です。

 そして、もうひとつプリリズを独特のものにしているのが、大会の存在。このプリズムショー、荒唐無稽ながらも競技化されており大会も行われています (室内でやっていて死者がでないのが不思議ね)。大体1クールごとに大会があるという感じですね。

 この大会こそが、プリリズをスポ根アニメたらしめている要因です。放送中のプリパラもそうなのですが、 ストーリー上、主人公たちは大会で勝利しなければならないということになっています。アイドルとしての活動もしますが、最終的な目的は勝つことなのです。そこでは仲間も含めて、全員がライバルになる。

華やかでキラキラした大会の一場面。 


 こうした大会の描写で、一切手を抜かないところがプリリズの最も熱くなれるところです。勝つときは勝つ、負けるときは誰であっても負ける。明確な点数も出ますし、とくに『レインボーライブ』では連続ジャンプという要素が登場したことで勝敗が目に見えてわかるようになりました (*後述します)。ときにはライバルを引きずり下ろすために足の引っ張り合いまでします

 また、先述した通り心の有様がプリズムジャンプに、つまり競技の結果に直結してます。アニメ内で描写される人間関係などが、大会の点数に直接反映されるのです。このように 〈人間関係〉と 〈大会の結果〉が関連している以上、ストーリーも自然と大会に向けてどんどん盛り上がっていくことになる。それと比例するようにジャンプもどんどん狂っていく。もうこれがおもしろくないわけないじゃないですか。いや、ほんとにもう言葉で書くのはどうしても限界があるので、ぜひ見てみてください。ジャンプの映像だけ見てもすごいけれど、その一つ一つが物語と絡み合っていることで生まれる感動があるんです。プリズムジャンプはプリリズ最大の特徴にして、最大の発明品だと私は思います。

 終盤にかけて映像もストーリーもこれでもかというくらいに盛り上がっていき、さながらジェットコースターのような焦燥感とドキドキを味わうことができるはず。この記事を読んで少しでも興味を持った方は、ぜひプリティーリズムを見てみてください。



 さて、「プリズムジャンプ」についてはこれで終わり。これだけ語ってもまだ全然おもしろさを言葉にできていなくて忸怩たる思いもありますが、とりあえずは次に進むことにしましょう。次の記事ではストーリーのおもしろさについて触れていく予定です。


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