見出し画像

#72 賢治とエマーソン【宮沢賢治とエミリィ・ディキンスン その10】

(続き)

○ 賢治とエマーソン

宮沢賢治にも、エマーソンから大きな影響を受けたのではないかと思われるエピソードが残されています。

賢治が盛岡中学3年の1911年頃、寮で同室だった藤原文三が、「賢治が難しいエマーソンの哲学書を読んでいて驚いた」と証言しています。
また、賢治の晩年の1932年には、病床の賢治を訪れた照井謹二郎が、賢治から「エマーソン論文集 上巻」を譲り受け、そこには、賢治の亡くなった妹トシの署名があったと言われています。
賢治は、中学から亡くなる直前までの長い間、エマーソンを意識していたとも言え、妹のトシもまた、エマーソンに影響を受けていたと思われます。
2023年5月に公開された映画「銀河鉄道の父」の中では、賢治のセリフの中で、中学時代に学んだ思想家の1人として「エマーソン」の名前が登場しました。

賢治がどのようにしてエマーソンを手にするようになったかはわかりませんが、エマーソンの思想は、花巻ゆかりの偉人達や、明治・大正期の日本の知識人たちへも影響を与えたと思われます。

エミリィもエマーソンから大きな影響を受けたと言われていることから、賢治がエミリィと同じようにエマーソンから影響を受けたならば、「エミリィと賢治の詩が似ている」と私が感じた理由もわかるかもしれません。

賢治がエマーソンから受けた影響などについては、いくつかの論文などもあることから、後にご紹介する予定です。

(続く)

2023(令和5)年10月2日(月)
(2023(令和5)年10月15日(日)修正)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?