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明日方舟公式漫画「序文組曲:無拘奏音」前編翻訳

 先日(6/21)、泰拉记事社にて公開された明日方舟公式漫画を個人的に訳させていてもらいました。

注意:キャラクターの解釈は私個人のものです。効果音は雰囲気で読み取ってください。

本編訳

序文組曲:無拘奏音

紡がれる音、映される心

フェデリコ:予定時刻まで後15分です。行程を確認し、適宜休息をとります。

~~

子供達:「すごいわ!」「流石ね、アルトリア!」「すごくいい!」「素晴らしい演奏だわ!」「アルトリアのチェロの音を聴く度に幸せな気持ちになれるわよね。」

アルトリア:フフッ、気に入ったんだったらもう何曲か演奏しようか!

フェデ、君の方もリクエストはある?

フェデリコ:う〜ん......僕は特に聴きたいのはないかな。

全部同じ曲にしか聞こえないけど、姉さんは弾くのがすごく上手いし。

アルトリア:君ね......

子供達:「フェデリコっていつも冷たいわよね。」「お姉さんとは似ても似つかないんだから......」「うんうん」

「アルトリア」:私たち遠い親戚なんだ!

ルチアナ:アルトリア~!

アルトリア:あっ!

~~

アルトリア:母さま、父さま!

ルチアナ:お疲れ~!おかし持っててきたわよ。

マルチェッロ:水鉄砲も持ってきたぞ!

子供達:「「わ~い!」」
「これ、先週出た最新モデルだ......!」「アルトリアもあっちで遊びましょ!」「わたしも欲しい!」「ぼくも~」「お母さんも私たちと遊びませんか?」

ルチアナ:う~ん......今回はやめておくわ。ごめんなさいね。
ママはちょっと風に当たりたいから、フェデも連れて遊んできなさい。

子供達:「「わかった!」」

マルチェッロ:......


子供達:「「バ~ン!」」「「ははっ」」

マルチェッロ:なあ、ルチアナ大丈夫か?君から疲れが伝わってくるんだが。

ルチアナ:え......

マルチェッロ:ラテラーノ外の紛争が仕事の重荷になってるのか?

ルチアナ:違うわ、いつものよ。私はただオフィスで座ってるだけの外交官で、外の問題に何かすることもできないわ。

~~

ルチアナ:いつも通り文書に綺麗事を並べてるだけで何も変わらない......

マルチェッロ:変えられないことを心配してもしょうがない。週末を楽しもう!

ルチアナ:そうね.....

冷たっ!

マルチェッロ:はっはっは~!

ルチアナ:......

マルチェッロ:今日は待ちに待った休日だよ、暗い顔しない!リラックスだ......

グハッ!!

ルチアナ:アルトリア?

マルチェッロ:ゴホッ、ゴホゴホ.......

アルトリア:母さま!助けに来たよ!

フェデリコ:うん。

ルチアナ:よくやったわ!アルトリア!

マルチェッロ:なっ!

ルチアナ:私はアルトリアにつくわ!

マルチェッロ:お前たち......父さんをいじめるために協力するのか?!

マルチェッロ:ひどいぞ!フェデ、おじさんと組むんだ!

フェデリコ:わかった。

マルチェッロ:ウワッ!フェデ、裏切るなんて聞いてないぞ!

フェデリコ:.......

マルチェッロ:見たか!

アルトリアとルチアナ:はははははっ!

~~

ルチアナ:.......巨人はアレックスの言葉に諭されました。そして、幼い頃から自分を縛っていた糸から解き放たれ、アレックスが村を救うのを助けたのです。

はい、今日はここまで。

アルトリア:え~なんでそこで終わりなの?

ルチアナ:もう遅い時間だわ!アルトリア、フェデを部屋に連れて行ってあげて。

アルトリア:うん......

~~

ルチアナ:......

アルトリア:母さま。

ルチアナ:あら......アルトリアまだ起きてるの?

アルトリア:母さま、さっきの話やっぱりまだわかんない。

ルチアナ:どこがわからなかったの?

アルトリア:アレックスが巨人に助けを求めた時、巨人もアレックスのことを助けたいと思ってたけど、彼は糸に縛られてて動けなかった。
でも、彼の力があればいつでも自由になれたはずなのにそうしなかったのはどうして?

ルチアナ:それは.....

~~

ルチアナ:アルトリアと同じぐらいちっちゃかった頃、もうすでに巨人は縛られていたの。そうして長い間そこに居る内に、だんだんそこから抜け出そうとする勇気を失ってしまっていたのよ。それから大きくなった巨人は挑戦しようとしなかった。だから、糸のように頼りない縄なのにずっとそこから抜け出すことは出来なくなってしまったの。

アルトリア:う~ん......そっか、だからアレックスの言葉を聞いて勇気をもらった巨人は自由になったのね?

ルチアナ:そうよ。

アルトリア:巨人は自由になれて嬉しかったのかなぁ?アレックスの冒険についていけば危険な目に遭うかもしれないよね。

ルチアナ:そうねぇ......

でもね、そこに危険があったとしても、彼はようやく自分を閉じ込めていた場所から離れることができて、自由にやりたいことができるようなったのよ、きっと楽しいと思うわ!

アルトリア:ねぇ、母さま。私たった今新曲を思いついたわ、演奏会に招待してあげる!

ルチアナ:えっこんな時間に?

アルトリア:今がいいの、い~ま!

ルチアナ:しょうがないわね……

~~

巨人:あなたは私の恩人だ。あなたのことはもちろん、苦しんでいる人びと達のことも助けたいのだ。でも見ての通り、縄に縛られて動こうにも動けない……

ルチアナ:巨人......

~~

ルチアナ:あなたの体は天を衝き、あなたの力は大地をも揺らす。そんなに細い糸であなたなんかを縛れるはずが無いです。あまりにも長い間ここに縛り続けられたせいで変化を恐れ、あなたは自由を追い求めることを忘れてしまったのでしょう。

それでも、いま一歩を踏み出せば、あなたは自由を取り戻せるのです!

巨人:......あなたの言う通りだな。

恐怖を打ち勝たねばならない時が来たようだ。

~~

アルトリア:母さま、この曲気に入った?

ルチアナ:......

~~

フェデリコ:......


マルチェッロ:アルトリア、母さんが何処に行ったか知ってるか?

そんな……いや、どうして……

上司:彼女の辞表が机の上にあったんだが一体どういうことだ?

マルチェッロ:申し訳ありません、私も詳しくは……

ルチアナ......どこにいってしまったんだ......


数ヶ月後


参列者:「私たちが交戦地帯で彼女を見つけたときにはもう.......」
「カメラには貴重な最前線の映像が残されていました、彼女はとても勇敢な方でした......」

マルチェッロ:そんな......嘘だ......ルチアナ......

~~

マルチェッロ:ルチアナァァァ......!どうして、どうしてわたしを置いていくんだ!どうして.......

参列者:「ご主人......」「落ち着いてください、ご主人...!」

マルチェッロ:ルチアナッ!......ルチアナ!

参列者:「実は……そこの箱にルチアナ様の遺品と共に未開封の手紙があるのですが......」

マルチェッロ:!


「ルチアナ」:ごめんなさいマルチェッロ、さよならも言わずに出て行ってしまって。

それでも、私は外の戦禍をこのまま見て見ぬ振りで過ごすことに耐えられなかったの。演説台の上で決まった原稿を読み上げているときも、オフィスで座りながら意味の無い綺麗事を並べているときも、戦争でどれだけの罪無き人びとが家を追われていると思う?

私はあなたの良き妻ではなかったし、良き母親でもなかった。それでも、私は無責任な戦争に加担するなんてことはしたくなかった。

~~

「ルチアナ」:アルトリアには感謝しているわ。あの子のチェロの音色おかげで私はしがらみから抜け出すことができた。
それからあなたも、これまでずっと私に幸せな人生を歩ませてくれてありがとう。
今は離ればなれになっちゃっているけれど、戦争が落ち着いたらまたいつか会いましょう。


マルチェッロ:アルトリア......アルトリア......アルトリア.......

フェデリコ:おじさん。

マルチェッロ:......フェデか?なあ、フェデ、アルトリアをどっかで見てないかい?

フェデリコ:姉さんなら部屋でチェロの練習をしてるよ。

マルチェッロ:練習......部屋......

俺を......私をそこに連れて行ってくれ......

~~

マルチェッロ:っ......

フェデリコ:......おじさん?

マルチェッロ:......!


アルトリア:フェデ、君も聴いていたでしょ?

いかがかな?

~~

参列者達:「アルトリアちゃんみたいないい子が、こんなに幼くしてお母さんを亡くしちゃうなんて......ほんとにかわいそうだわ。」
「ところでご主人は?来てないのかしら?」
「マルチェッロさんとルチアナさんあんなに仲睦まじかったのに、参列しないなんて……相当こたえてしまったのでしょうね。」

友人:「ルチアナと私は最高の親友でした……大学時代から彼女の夢は戦場カメラマンでした。なので彼女の選択を応援してましたが......」

部下:「ルチアナさんはとてもプロフェッショナルで、ユーモアにあふれた女性でした。そして、私は仕事をしていく中で様々なアドバイスを彼女にしてもらいました......」

上司:「彼女が私たちの傍から本当の意味で離れることはない。私たちの記憶の中で、彼女は私たちの人生を祝福し共に歩んでくれるはずだ。」


司会者:「それでは、アルトリアさんによるルチアナさんに贈る最後の演奏になります。」

~~

アルトリア:雨だ。


悲しみも

すすり泣く声も

沈黙も


全て雨粒によってうまれたさざなみにすぎない。

そして、水面下に隠れたものこそが――。

~~

参列者:「「うわぁ~」」


「「た.......助けて!!」」 「「水がっ......」」

「「ルチアナ......」」「「ルチアナ......!」」

~~

友人:「どうして……」「どうしてあなたって人は!」「あんな理想的な家庭を持ってながらあんなバカげたことを!」

部下:「ハハハハ!ありがとうなルチアナさんよぉ」「あんたが消えたおかげで俺は今の地位につくことが出来た!」

上司:「大人しく一人で死んでおけばいいもののわしに面倒事を残しおって!」「とんだ時間の無駄だった!」

参列者達:「早く終われよ......」「うぅ......」「ふふっ......」
「私のせいだ.....」「......退屈」「あいつの表情見てみろよ......」


「「ハハハハ!」」

~~

参列者:「どうして......どうして......」
「うぅ.......」
「ハハッハハハハハハハハハ!!」

友人:「ルチアナ......ルチアナァ.......」

フェデリコ:大丈夫ですか!

友人:「フ.....フフッ......」

フェデリコ:どうしましたか?


まさか、姉さん......?


止めるんだ!


......どうして?

~~

フェデリコ:どうして姉さんの表情は読みとれないんだ?


アルトリア:盛り上がってるコンサートを止めるのはお客様に失礼だよ、フェデ。

フェデリコ:姉さんのチェロはみんなをおかしくしてるんだよ。

アルトリア:まさか?ほら.....

私たちはみんな喜怒哀楽も欲望すらも心の底に仕舞い込んでるのに、それと向き合おうとしないのはどういうことなんだい?
私たちも巨人みたいに自分たちの自由を取り戻せばいいじゃないか!

フェデリコ:姉さんは自分の母親にも同じ事をしたってこと?

アルトリア:フェデ、君も父さまみたいに本当の声に耳を傾けるつもりが
ないのかい?

フェデリコ:......


あの時、私は気付きました。

~~

彼女が人々の心はしがらみに囚われていると思い、そして自分の音楽であれば人々の本心を解き放つことができると考えていたことに。

たとえその本心に基づいた行動が今までとは異なり、法に反するものであろうと。

~~

各々の自由意思はそれぞれ異なる結果を導く。

だが私たちは皆後悔することなく思うがまま――
本心に従い突き進むのだと。

彼女の聴衆も――
彼女自身も。

~~

だがそれは、これから起こるすべての始まりに過ぎなかったのです……


フェデリコ:再評価完了。アルトリアの法と秩序に対する脅威は依然として明白。このまま捕縛任務を継続します。

~終~

キャラクターの解釈

 表記揺れ:アルトリアの両親、「ルチアナ」と「マルチェッロ」はそれぞれルチアーナとマルチェロという書き方などもあります。
フェデリコの愛称である「フェデ」も、フェディ、フェドなど様々です。

 参考にした情報としてイグゼキュターとアルトリアの関係は、二人の父親が従兄弟といういわゆる再従姉弟関係であることがプロファイルにて判明しました。

阿尔图罗·吉亚洛,她的父亲和费德里科的父亲是堂兄弟,档案里记录得非常清楚,没有什么好隐瞒的。在吉亚洛夫妇殉职后,费德里科曾经在这位堂亲的家中寄居过一段时间,大约是有......两到三年吧,在这之后他进入中学开始住校。

圣约送葬人,档案资料三

 ~以下の内容は事実の確認不足が判明したので信用しないでください。このあと調べて訂正します。(6/25 1:44)~
 その後の幼少期に両親を亡くしたフェデリコは3年ほどの間アルトリアの家で暮らしており、中学校入学後は寮生活をしていたことがわかります。そのため今回の漫画ではイタリアの学校制も鑑みてフェデリコが8~10歳、アルトリアが13歳ほどのイメージで翻訳しています。

 アルトリアについての情報として6/15に同じく泰拉记事社から出された個人ファイルがあり、そちらは以前Twitterで翻訳しているので興味があれば、是非。

最後に

翻訳はミスがあれば適宜修正していきます。何か質問や誤字脱字の報告、言いたいことがあればsivol(sivol07)までよろしくお願いします。
感想いただければうれしいです。

謝辞

今回の翻訳ではチェックから訂正までおーちゃんさん(@oochan0803)にお手伝いしていただきました。ありがとうございました。

追記

6/24 10:00頃、投稿
6/24 22:00頃、本編訳の後半3頁ほど訳修正、キャラクターの解釈に追記
6/24 22:00頃、訳の微調整


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