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第24回:「喜び」で生きることが日本人の新しい役割

前回は、マズローの5段階欲求説を使いながら「自己承認」の大切さや「喜び」の意識が「自己実現欲求」には欠かせないということを書きました。

あらためてマズローの5段階欲求説を簡単に説明すると、人の欲求は「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の5段階に分かれていて、下位の欲求を満たしていくごとに上位の欲求へと欲求の質を変えていくというものです。

しかし、マズローは晩年この5段階欲求説よりも、もう一段上の欲求である「超越的な自己実現的の欲求」があると説いています。そこで今回は、この「超越的な自己実現的の欲求」と「喜び」の関係性について書いていこうと思います。

「超越的な自己実現の欲求」とは

こちらの図は、マズローの5段階欲求説に「超越的な自己実現的の欲求」を加えたものです。

マズローの6段階欲求説

この「超越的な自己実現的の欲求」を説明すると、以下のような内容になります。

「社会をより良いものにしたい」など自分のエゴを超えたレベルの理念を実現したいという、他者や社会など自分の外にあるものにベクトルが向いている欲求。

つまり、「超越的な自己実現的の欲求」とは、「自己実現欲求」を充たすことができた人が、「この世界をよいものにしていきたい」とする欲求であり、個人的な欲を充たすことを終えた人が、欲求の対象を自分以外に向けたものといっていいでしょう。

マズローが述べている欲求説は、人が行動する原理を何段階かに分けて図式化したものになります。人は基本的に「欲求を充たしていきたい」ということが動機になって行動するものです。

したがって、マズローが晩年に加えた、この「超越的な自己実現的の欲求」は、人は個人の欲求を充たし終えると、その対象を他者や社会に向けるようになるものだということを説明しているといっていいでしょう。

このことを歴史的な偉人で例えるとブッダが分かりやすいかと思います。王子として生まれたブッダはその時点で、「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」を充たすことができていました。彼が王宮を飛び出し修行に出たのは、「人間が存在する理由を知りたい」という自己実現欲求を充たすためであり、彼が悟りを得た後に、その教えを説いて回ったのは、まさに「超越的な自己実現的の欲求」における行為といっていいでしょう。

ブッダは、自身が得た真理を多くの人に伝えることで、世の中のあり方を変えようとしたのだと思います。こういったブッダの生き方は、マズローの段階的な欲求説通りに進んでいったということができます。

日本人としての役割と「超越的な自己実現的の欲求」

この日本という国で暮らす私たちの欲求がどの程度、充たされているかというと、前回も書きましたが、国レベルでは「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」は高い割合で充たされていると思います。

そういった意味では、私たちの生まれた時点での欲求認識は、ブッダ同様に高いところにあるといえます。つまり、私たちは存在として「超越的な自己実現的の欲求」のレベルまで到達できる可能性を持っているとっていいでしょう。

現在、私たちの多くが意識的にせよ無意識的にせよ、今よりも上の意識へと到達しようとしているのは、こういった理由がありからといってもいいかもしれません。日本の精神性の高さは、東日本大震災以降の様子から伺い知ることができるものであり、他の国では真似のできないことといえます。

こういった精神性の高さや社会的インフラが整っている日本だからこそ、今後、日本人の多くが、「承認欲求」や「自己実現欲求」といった個人としての上位の欲求を充たすことができたなら、次なるステージである「超越的な自己実現的の欲求」を国レベルで果たしていけるようになると思います。

そう考えると、もしこの世界そのもののあり方を運命論でみるならば、私たち日本人は何かしらの役割を持って、この日本に生まれたという理由も理解できます。

日本人が持っている強み

では、私たち日本人にはどんな役割が存在しているのか。それは誰もが平和に暮らせるようなこれまでになかった新しい仕組みを作って行くことだと思います。そうやって新しい仕組みのを創り出して平和な世の中を作っていくことで、日本人として「超越的な自己実現的の欲求」を充たしていくようになっていくのだと思います。

『[実践版]ヒマラヤ聖者の道Ⅱ』という本の前書きに船井幸雄さんが、「世の中の大ルール」という文章があるので引用します。

世の中の大ルール、すなわち私が「天の理」といい、「真の自然の理」といっているのは、⓵単純で、➁自由で、③効率的で、④共生的なものです。それゆえ⑤開けっ放し(公開)だといえるものだと思います。

この船井さんのいう5つのルールを具体化できる存在が日本人であるといっていいでしょう。その理由は、この日本という国の地理的条件や国としての文化のあり方で証明することができます。

では、日本人が持っている強みが何なのかということを船井さんの5つのルールに照らし合わせていきます。

⓵の「単純で」という点で見ると、日本人は宗教による縛りがないという点があげられます。物事は縛りがあればあるほど複雑化していきます。しかし、日本人の精神性は縛りがない分、非常にシンプルであり「自由度」が高く柔軟性があるといっていいでしょう。

➁の「自由で」という点で見ると、日本人は差別意識の少ない国民性ということがいえます。差別は不自由さを意味するため、日本は「自由度」の高い国だといっていいでしょう。人は自由だからこそ、他者との交流を深められるようになります。「自由度」の高さとは、どんなことでもできるという応用力を意味するものです。

③の「効率的で」という点で見ると、日本がこれまで発展できた理由が豊かな自然に恵まれてきたことにあり、豊かな恵みを様々な形で応用できたことで自術力を磨くことができたといっていいでしょう。こういった自然との応用力が国としての「効率性」を上げている原因だと考えられます。また、こういった応用力が国民としての応用力にもなっていて、柔軟に受け入れられるという「自由度」の高さを持っている原因といってもいいでしょう。

④の「共生的で」という点で見ると、日本には民族による対立がありません。また、民意として戦争を反対する姿勢を有しています。つまり、私たちは共生的な思想を持って生きているといえます。

⑤の「開けっ放し」という点で見ると、⓵~④の要素を総合すると開けっ放しということがいえます。私たちが現在、平和に暮らせるのもこういった開けっ放しの体質があるからです。

こういった強みを持った日本人の多くは、やがて「自己実現欲求」を充たすことができるようになって、徐々に「超越的な自己実現的の欲求」を果たそうという意識を持っていくことになると思います。というのも私たちの多くは、あと「承認欲求」を充たせばいいという段階にあるからです。

日本人に必要なことは自分自身を承認すること

マズローの5段階欲求説を使って国の欲求レベルでみるならば、日本は世界的に見ても高レベルの位置に存在してるといえます。その一方で、自分自身を承認するということが、思った以上に出来ていないように感じます。謙虚さは日本人の美徳の一つでもありますが、その謙虚さが謙遜となって自己承認を妨げている部分もあるように思います。

また、日本人が自己承認できない理由として、自分の欲求を追求するという生き方を知らないということも上げられるかもしれません。私たちはどうしても個人としての社会性を充たすことを重視するあまり、自分の欲求を押さえてしまっているように思います。

ある意味で、これまで社会性を磨くことで、この国の衛生面や安全面を充実を図ることができ、私たちの生活面での基礎を造ることができるようになったということがいえるため、今度は個人個人の欲求を充たしていけるようにしていくことをしていくことが国レベルでの課題かもしれません。

現在の日本人は、一人ひとりの自己実現を果たしていけるような土台が十分に出来上がっています。欲求とは「喜び」を充たすことであり、我慢することで得られるものではありません。つまり自分の欲求を充たしていかない限り「自己実現」はいつまでたっても実現できません。現在の私たちは、生きる理由を「自己実現」にすることができる存在でもあるのです。

私たちが今後、自分にとっての「喜び」を明確にし、それを自らが承認し追求できるようになったなら、自己実現を果たしていく人が増えていくことでしょう。そして、たくさんの人が「自己実現の欲求」を充たすことができたとき、私たちは「超越的な自己実現的の欲求」を果たす存在として、世界に先立ってこれまでにはないような新たな仕組みを生み出すことができるようになることでしょう。

自己実現とは自分で出来ることをするということ

先ほど紹介した船井さんの文章には、次のようなことも書かれています。

「自分でしかできない最低限のことだけを自分でやり、後は、他の存在にまかせるのが、宇宙では最も正しいやり方」

私は、この文章から、自己実現とは「自分しかできない最低限のことをすること」と理解することができました。

自己実現とはそんな難しいことではなく、今、目の前にある自分しかできないことをしていくことで達成されるものであり、シンプルに今、自分が達成したいと思うことをしていけばよかったりするのです。周りを気にして我慢をせずに、自分が「嬉しい」「楽しい」ということをシンプルにしていくだけで「自己実現」が可能になるものなのです。

私たちが、自分に対する正直な気持ちを承認できるようになっていくと、今後、私たちの集合意識が大きく変わっていくようになり、私たちにしか生み出せないような「新しい何か」を生み出していけるようになっていきます。そして、その「新しい何か」がこの世界の仕組みそのものを変えていくようになっていくと思います。

達成感で自分自身を肯定する

といったわけで、今回はマズローの「超越的な自己実現的の欲求」と私たちの日本人の今後について書いてきましたが、次回は、達成感を得ることで人としての欲求を充たせるようになるということを書いていきます。

人は達成感を得ることで自己実現を果たせるようになっていきます。また、人は達成感を得ると幸せな気持ちになるものなのであり、そういった幸福感がこの世界を変えていくということについて書いていこうと思います。


*こちらが文中で紹介した『[実践版]ヒマラヤ聖者の道Ⅱ』です。この本の前書き部分に船井さんの記事がのっています。本編も読みごたえ十分です!


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