サイコパスとメンタルヘルス系サスペンスの佳作『ガール・オン・ザ・トレイン』

アマゾンプライムで『ガール・オン・ザ・トレイン』を観た。

最近、サイコパスや、メンタルヘルス系スリラーといえる二作(リー・ワネル監督『透明人間』『アップグレード』)を観て、似たものを探していたのだった。
これもそっち系ぽいと思って観たら大正解。

女性主人公が列車の景色で見る夫婦に執着する、というストーリーに前から惹かれていたのだが、あまり評判をきかず、すっかり存在を忘れていた。

細かいストーリーを書くとなかなかややこしいので省略させてもらうとして、後述となるが、そのややこしさをどう対処するかが評価を二分した作品といえる。

確か、本国アメリカではそんなに評判は高くなく、印象に残るようなヒットにはならなかった記憶。
でも、個人的には結構好みの作品だ。

メインビジュアルの女優をてっきりエイミー・アダムスと勘違いしていたが、主演のエミリー・ブラントの演技がよかったし、なんといっても列車という、舞台設定が好みだった。

覗き見る系のサスペンスとしては異色の舞台設定であるのが新鮮。
また、ハリウッド映画らしく、車内のセットや撮影がしっかりしていて目を楽しませてくれる。

しかし、その見せ方自体はかなりご都合主義、
(夫婦の家を差し掛かるバッチリのタイミングで作業点検中として速度が落ちたり停車する!)
そこも評価を落としている気がしなくもない。

また、主人公が恨む対象を演じたレベット・ファーガソンは『ミッション・インポッシブル』の印象が強すぎて普通の主婦にはみえないのだが笑、実際、性根の逞しいキャラクターなのでミスマッチではなく、楽しい配役だった。

もう一人のキーとなる女性キャラクター、主人公が執着する夫婦の妻を演じたヘイリー・ベネットは本作で初めて知ったのだけど、観ているあいだ、てっきりレア・セドゥと思い込んでいた。
たまにジェニファー・ローレンスにもみえる不思議な感じだなあと思っていたので、そのどちらでもないとエンドロールで知って衝撃を受けた笑。

前半で触れたストーリーのややこしさだが、シナリオの段階から、そこはなんとか編集で解決しようとした結果、ちょっとした困惑をもたらす出来になったんじゃないかと思う。

何度も過去の描写が差し挟まれ、それによって、入り込んだ物語の設定がわかるので、物語が進むにつれ、ええ~!?と混乱するつくりだからだ。
これは犯人探しをわかりづらくする狙いもあり、相乗的な効果を狙ったつくりだが、それがあまり受けなかったんじゃないだろうか。

『ゴーン・ガール』のヒットを受けてつくられた企画らしく、その構成を参考にしたのだろうけれど、女性を三人描くとなるとより複雑になるのだから、もう少し検討の余地があったかもしれない。

また、サスペンスとして、過去のフラッシュバックに何度もミスリードをしている。それにより結末を読めなくしているのは少し安易に感じられた。

自分は割りとその安易さは許容できる性格なのだけが、映画の水準として評価する人はそこを見逃さないだろう。

そして、旦那役があまり印象に残らないのはどうかという問題。地味である必要があるのはわかるんだけど、設定上、顔に説得力が乏しい笑。

ラスト近く、エイミー・ブラントの目の前を列車が横切るショットがとてもよかった。
映画としてみせるとこはみせる心意気を感じるショット。自分はそういうところがあると観てよかったなあと思う。

作品のテーマ的に思い起こした作品は『ガス燈』。これもサスペンスとして似た系譜がある。サイコパスとメンタルヘルスの系譜だ。
『ガス燈』はリメイクもされていて、見比べることでそれぞれの演出のスタイルを楽しめる。

本作は女性が監督したらどうなっただろう、と思う作品。
なので女性監督でリメイクされたら観てみたい。

あと、リサ・クドローも出てるよ!彼女の演技もよかった。ニューヨークが舞台のひとつでもあるから、ニクいキャスティング。
彼女演じる社長の奥さまが、日常的に主人公と同じ列車に居合わせるのは不自然なんだけど笑。
『フレンズ』好きな人には本作のイチオシポイント。

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