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あのフィンチャーがやってくれたぜ!!最悪な時代を、最高の無表情で噛み締めろ。『The Killer』

『Mank』をNETFLIXで観たとき、「あ…はい」という感想以上のものが出てこなかった。でも、今回は予告でグイグイくるものがあったので、劇場に行って鑑賞。 観終わったあと、最高に無表情になるひとときを、緩く、噛み締めた。 おそらくエンドロールで席に座っていた観客のほとんどは他のどの映画のエンドロールより、己の無表情を噛み締めたのではなかろうか。 デヴィッド・フィンチャー待望の新作を観にわざわざ劇場に来た、気合いの入った連中なのだから、そうであろう…。 しかし、あくまで

    • 『ナイヴズアウト』久々に、「映画が一番」と思えた作品

      「映画が一番」 昔は、そう思っていた。 20年ほど前の、若い頃の話。 先日、職場で、『スター・ウォーズ』を観てない、という若い子達の多さに驚いた。 「宇宙とか興味なくて、苦手」 「ハリー・ポッターはユニバは楽しいけど、映画は寝ちゃう」 映画はすっかり古い娯楽になってることをひしひし感じた。 木~日曜の夜9時からはどこかで映画がやってる、というテレビ番組の日常(関東圏以外がどうだったかは知らないが)がなくなったときから、ずっと映画は存在を小さくし続けてきたと思う。 インタ

      • シン・エヴァンゲリオンとオリジナル(テレビ)版。

        シン・エヴァは素晴らしい。旧劇は凄かった。 でも、TV版ラスト2話はなによりヤバかった。 シンエヴァで一番のサプライズは、このテレビ版ラスト2話のオマージュが散りばめられていたことだ。 テレビ版ではアスカ、ミサト、レイ、そしてシンジの場合が描かれ、シンエヴァでは、ゲンドウ、アスカ、レイ、カヲルの、場合というよりは解放が描かれている。 (補完計画発動中にミサトはすでに死んでいる。なのでミサトの場合があるのはおかしいのだが、いまとなってはそれがレアだ) シンエヴァは旧劇とい

        • サイコパスとメンタルヘルス系サスペンスの佳作『ガール・オン・ザ・トレイン』

          アマゾンプライムで『ガール・オン・ザ・トレイン』を観た。 最近、サイコパスや、メンタルヘルス系スリラーといえる二作(リー・ワネル監督『透明人間』『アップグレード』)を観て、似たものを探していたのだった。 これもそっち系ぽいと思って観たら大正解。 女性主人公が列車の景色で見る夫婦に執着する、というストーリーに前から惹かれていたのだが、あまり評判をきかず、すっかり存在を忘れていた。 細かいストーリーを書くとなかなかややこしいので省略させてもらうとして、後述となるが、そのやや

        あのフィンチャーがやってくれたぜ!!最悪な時代を、最高の無表情で噛み締めろ。『The Killer』

          『シン・エヴァンゲリオン』アディショナル・インパクトとはなんだったのか?

          『シン・エヴァンゲリオン』の上映があと2週間で終わる。 できたら見納めに行きたいと思っているが、私は後半のゲンドウの独白辺りから全然のれなかったクチなので、どうしようかなという迷いもある。 観終わったあと、庵野さんはあそこら辺から、つまりアディショナル・インパクトの描写辺りから、なにをやりたかったんだろうという疑問がずっと残っていた(なんせノれなかったもので)。 旧劇場版のサード・インパクト描写(シンジの内面描写)の発展型でありながら、シン~ではシンジが運命を仕組まれたキ

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          クリス・プラット主演・プロデュース!『トゥモロー・ウォー』

          Amazonプライムで『トゥモロー・ウォー』を観た。 予告編は全然面白そうじゃなかったけど『LEGO ムービー』の監督とキャスト(クリス・プラット)のコンビなので期待していた。 感想は、この監督、キャストらしい、親子の絆や葛藤が描かれた娯楽大作となっていた。 前半は本当に面白くて、斬新な未来への戦争が描かれている。 たくさんの民間人が何故徴兵されるのか、という疑問もなるほどな、という感じで、また、彼らの着る服のラフさがこの戦争の奇妙さを際立たせる。 未知の生物を倒す切り

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          庵野秀明監督登壇の日にー。『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』庵野秀明作品として大傑作。映画としては?

          (これはTV版リアルタイム組が書いたものです。 前半は鑑賞前の思い入れを書き綴っているだけなのですっ飛ばしてOKだよ。) ・鑑賞前のこと3月9日。公開二日目に、有給をとって観に行った。 朝、池袋駅に降りてグランドシネマサンシャインへの通りを歩いていると、それらしき人たちがポツポツ。 皆足取り早め。街は静かで、天気雨が降っていたのが印象的だ。 公開3日前から、もう喪失感で一杯だった。 そしてだいぶ緊張していた。 Qから9年ぶりの続きがようやく観られる、そして完結すると。 と

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          マイケル・マン『クラッカー 真夜中のアウトロー』

          マイケル・マンのデビュー作。恥ずかしながら初めて観た。 というか、これがデビュー作だとも知らず、『アンカット・ジェムズ』の元となった映画であるという情報と、タンジェリンドリームの音楽が流れる、という理由だけでレンタルしたのだった。 観ているうちに、これはデビュー作では、という感じがどことなくしてきた。 デビュー作ならではの端々しさが漂う瞬間というのが、映画にはある。 とくに本作はそのショットの構成に、全編に渡ってその監督の後々のフィルモグラフィーに花開く要素の全てがあり、そ

          マイケル・マン『クラッカー 真夜中のアウトロー』

          "泥臭い"コロナの時代に聴く音楽、中村一義『十』

          中村一義の10枚目(100s含め)のアルバム『十』は2020年2月に発売、配信された。 当時、コロナウィルスはまだ中国・武漢での出来事で、その拡がりが懸念され始めていた頃だった。 その頃『十』を毎日、仕事帰りに聴いていた。 「十」と「スターズー」がお気に入りだった。 「すべてのバカき野郎ども」「イロトーリドーリ」にもグッときていたが、その泥臭さに少し戸惑っていた。 もともと、中村一義という人の音楽には、泥臭さがあった。『十』は、彼のこれまで発表してきたなかでもっとも泥臭いア

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          セス・ローゲンと映画『ロング・ショット』

          ・『パラサイト』よりよかった。 『ディスイズジエンド』は、自分にとって重要な作品だった。 10年代前半、クラブパーティーに魅せられた時期の感覚が、そこには凝縮されていた。 いまになってそう思うのは、映画『ロング・ショット』をこの2020年のはじまりに観たからだ。今年一本目は傑作『パラサイト』だったが、正直、二本目の『ロング・ショット』にノックアウトされた。 セス・ローゲンの映画に出会ったのは、『ディス・イズ・ジ・エンド』だ。 世界が終わる、というシチュエーションと、コメ

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