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ハンマーダルシマーとの邂逅🎵

ハンマーダルシマー。畏れ多くも、私はつい最近までその楽器の存在すら知らなかった。
たまたま仕事を通じて知り合ったのがハンマーダルシマー奏者の方だった。その時は初対面というのにも関わらず、私がピアノや吹奏楽経験者というのを知り、たくさん音楽の話をしてくださった。年齢も立場も住む地域も違うのに、こんなに音楽を通じて初対面から打ち解けたのは初めてだった。元来人見知りで打ち解けるのに時間のかかる自分だが、音楽を通じて打ち解けたことが嬉しかった。その方に「コンサートをやるからぜひ見においで」と誘われて、初めてハンマーダルシマーのコンサートに行った。

関西某所にて。その日はよく晴れた、暖かな日だった。空気も澄んでいて、大きな窓もあって、室内だけど解放感あふれるサロンのような演奏会場。お客さんは比較的年配層が多い印象。小規模な会場だったが、満席になっていた。
私は初めてのハンマーダルシマーコンサートで、尚且つそもそもダルシマーの楽器自体を見たことがなかった。誘われてから、実際に聴くまでのお楽しみとして、あえて実物を見たり音源を聴かなかった。
そのコンサートは、ダルシマーだけではなく、クラシックギターのデュオもあった。

どんな音が奏でられるんだろう。半ばそわそわ、ドキドキしながら、一曲目。和風の曲をダルシマーとクラシックギターでアレンジしていた。昔ピアノの発表会で演奏した曲だった。初めて聴いたダルシマーの音は、お琴みたいな印象。優しくて繊細な音だなあ。
以降も、民族音楽や、北欧地域の音楽、中世音楽、クラシック音楽とアレンジ曲が続いた。
音楽の心地よさのあまり、お客さんの中には眠ってしまう人もいたが、私はいくつもの弦を巧みに操る姿に魅了されていた。すごいな…。
北欧地域の曲の時は、田舎ののんびりとした牧歌的な音。中世音楽の曲の時は、教会の厳かな雰囲気、打って変わって情熱的な力強い音など。
ダルシマーもさることながら、クラシックギターの生音も初めてだった。普段ギターといえば、ロックバンドのエレキギターをよく聴いていたので、ギター=かっこよく掻き鳴らす、イメージが強かった。実際は、まず構え方から違っていて、「掻き鳴らす」ではなく、優しくそっと触れるような弾き方だった。
ダルシマーとクラシックギターのデュオの時は、本当に音で会話してるんじゃないのかなというくらい、絶妙に融合していた。ドーム型の天井に沿うように、五線譜の上に色とりどりの音が見えるような気分だった。
曲ごとに種々折々の情景が思い浮かんだ。なんて奥深いんだろう。聴衆の私たちの心地良さも勿論、演奏者も幸せそうに音を奏でていた。
良い音楽に出会えたなあ。

演奏会に行く前、ダルシマー奏者の方と話した時に、「私は音楽が好きで、音楽でしか生きられないの」とおっしゃっていた。私も音楽が好きだが、そこまで覚悟を決めて音楽の道で生きておられることに感服した。私は普段、好きなことを仕事にするのは無謀なことで、そんな覚悟は持てないと尻込みしてしまっていた。なので、その言葉を聞いた時に、尊敬と共に強烈に憧れの念を抱いた。
好きを仕事にできるって大変だけど、すごいことだな。
ダルシマー奏者の方は、とても社交的でパワフルな方だった。音には、演奏する人の人柄や性格が出やすいと思っていた。でも、実際はパワフルな音だけでなく、牧歌的な音、甘美な音、もの悲しくなるような切ない音など。何通もの音が奏でられて、ダルシマーの楽器としての奥深さだけではなくて、奏者の方の表現力にも圧倒された。

耳心地が良くて、演奏が終わってからも、暫くダルシマーの音色を反芻しながら余韻に浸っていた。
新しい音楽に出会えて、感性が刺激された良い時間だった。全身が浄化された気分。やっぱり音楽は良いな。長らく吹いていなかった、家にある管楽器を吹いてみたくなった1日だった。




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