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カイシャの再建に、全てのリソースを注ぎ込むとき

これまであまり勤務先について詳細をお伝えしてきませんでしたが、少し触れてみたいと思います。西新宿に本社のある企業に入社したのが1997年。あっという間に27年が過ぎました。時にJTC:Japanese Traditional Company(伝統的な日本企業の略で上意下達の企業文化や硬直的な組織運営といった「昭和」体質が残る企業を指す)と揶揄される旧来型マネジメントが当然のものとされ、組織としてそれに違和感が唱えられる事なく現在に至りました。

長年の悪しき風習のもとに醸成された組織風土は「世間の常識」から大きく逸脱し、その結果として昨年来の報道の通り多くのお客様にご迷惑をお掛けすることとなりました。

その中で私自身は、カイシャと一定の距離を保ちながら関わってきました。30代後半に岐路を迎え、管理職を目指し組織内での肩書き・ポジションを追求していくのか、そうでなく社内で一定の役割はこなしつつも社外にも通用する独自の専門性を高めるキャリアを積むのか。その時点では確信は持てなかったけれど、後者を選択することを決断し、2013年に開業届を出しました。

当時はまだ珍しかった"二足のわらじ"としてサラリーマン兼個人事業主のファシリテーターとして社会との接点を持つことで、感覚的に「社会常識」とされるものを講師業の仲間やクライアントの皆さん、そして地域コミュニティとの多様な関わりの中で得ることが出来ました。

その後世の中では「副業ブーム」が何度か訪れましたが、現在の就業者に占める被雇用者率(サラリーマンの割合)は2022年時点で約90%と、過去最高値になっています。言われているイメージほど起業したり兼業フリーランスでマイビジネスを始める人は少なく、また副業としても「事業化」とは程遠い段階で採算が合わず断念する方が多いのが実態です。

その結果として個人のキャリア形成は「勤務先の組織内でどのように上手く立ち振る舞うか」に大きく左右されることとなり、それ以外の選択肢を持たないままに働く人たちが依然として多数を占めているのが現状ではないかと思われます。

そうすると、所属する組織に最適化することが個人として最も合理的な判断となり、その小さな選択の繰り返しが長い時間の中で個人の価値観や人格形成にも影響し、結果として徐々に「世間の常識」と乖離した、それぞれの組織特有の文化に染まっていくこととなります。規模が大きいほどその中での生態系は充実し、あらゆることが完結し不自由なく過ごすことができる。それが、多くのJTCを生み出してきた理由なのかもしれません。

ただ、その全てを否定するつもりはありません。個人は自由な発想のもと、それぞれの価値観で、それぞれの幸せのカタチを求めれば良いと思います。しかし、組織人としてどのような期待役割を担い発揮するかという際の一つ一つの選択は、常に誠実さに基づいたものであること、そして誰に後ろ指さされる事なく正しいものであることが現代においては大切ではないかと考えます。(インティグリティ、と言われているものです)

言い換えると、私たちはいま一度「はたらく」とはどういうことか、正面から自分ごととして捉え、考えるべき時に置かれているのです。私の所属するカイシャは本来望まざる逆風の環境下に置かれましたが、見方を変えれば長年蓄積された組織風土を良いものに変化させることのできるチャンスを得たのだとも言えます。

数万人で構成される組織のカルチャー変革を実現する、その道のりの困難さは想像して余りあるものです。組織の隅々に、そしてそこではたらく人々の心の奥底に長い時間をかけて刷り込まれている「常識という名の非常識」を一旦リセットし、両目を開けて世の中のリアルを見る必要があります。その上で、本当の意味での「顧客視点」や「多様な価値観」を理解することができ、そうしてはじめて、個人も組織も善悪の判断をきちんとすることが可能となっていきます。

私自身は3月に50歳を迎え、定年まであと10年です。そして節目となるこの4月から新設されたカルチャー変革を推進する部門に縁あって籍を置くことになりました。取り組むにあたり何よりも大切なのは「対話」だと考えています。一方的なルールメイクや単なるアイデアによる形づくりは意味を成さないでしょう。組織ではたらく一人一人に「対話する文化とその価値」を伝えていくことに、注力していきたいと思います。カイシャの再建に向けて、この役割をこれまで得てきたあらゆる知見を活用して果たしたいと考えています。

そして、これまでお世話になった皆様との出会いから教えていただいたことを思い起こし、また時にはあらためてアドバイスもいただきながら「カイシャの常識と社会の常識」が限りなく近づき、世の中に必要とされる存在となれることを目指したいと思います。

それが、これまで自由にはたらくことを許容してくれた組織への、私なりの恩返しになると思いますし、またその先には組織を超えた社会全体にも共通する新たな「解」を発信していくことにもつながるのでは、と考えています。

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