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自分を噛みしめる



私は短気だ。

これは自他ともに認めるわたしのキャラクターだ。


瞬間湯沸かし器とか鉄砲玉とかいろんな表現で揶揄されてきた。

小さなころから年子の姉と張り合って育ったのもあって、負けず嫌いで気が強い。ずっとそう思ってきたし、実際そんなところもある。



だけどそれだけでは生きにくくて、どこかで冷めた部分も持つようになった。


悔しい場面や辛い場面でも、仕方ないとか調子が悪かったとか…気持ちを逃す術も身につけてきたし、嫌なことを避けて通ることも、出来るようになった。無駄に人と摩擦を起こすことも、エネルギーの無駄使いだとわかった。



そんな風に大人になった私がここ数年で自分の気持ちをコントロールできなくなったことがある。

それが娘の発病。


厳しい現実を突きつけられて絶望し、

暗闇の底の底、真っ暗などん底に突き落とされた。


毎朝病院のベットで目が覚めて、夢ではないことに絶望した。


逃げられなかった。怖い・悲しい・悔しい・辛い。

押し寄せてくる感情の黒い渦は逃がしてくれなかった。

飲み込まれて、もがいて苦しんだ。

そしてそれは今も。


本当の絶望は逃がしてはくれない。

逃げようとしても避けようとしても逃げられない。

心を止める。


長く苦しんで逃れられない絶望を知ったとき、

気付いた。



今までうまく逃してきた悔しさや痛みは実はよく噛みしめるべきものだった。

あの痛みや苦さは愛すべき日常の輝きだったんだ、と。


目を背けないでよく味わって自分の心を余すことなく使えば良い。


自分がうまく上手に立ち回れるようになればなるほど、心が後回しになる。

うれしいことも、そうでないことも。もっと味わっていけばいい。


闘病中の娘は今日も全力で日常の輝きを謳歌する。

トランプで負けては地団駄を踏み、10円ガムのアタリをみつけて歓喜の声をあげている。


今日も食べて笑って泣いて、この瞬間を味わおう。


しっかり自分を噛みしめる。



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