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国の審査はなし!「機能性表示食品」ってなに?

機能性表示食品を摂取して健康被害が生じたという報道がなされているようです。様々な専門家がこの事件に関して発信しています。そして機能性表示食品の制度の在り方の意見も出されているようです。このままの制度の継続は見直したほうがよいとか、廃止も検討したほうがよい、との記事も目にしました。

それにしてもなぜ多くの専門家がこの食品の制度を批判しているのでしょうか。私自身も機能性表示食品には課題があると感じていますが、それはなぜか、そもそも「機能性表示食品」とはどのような食品なのか、解説します。


●機能性ってなに?

機能性表示食品とは、国の制度に従って、食品の「機能性」が表示でき、販売できる食品です(文献1)。ここでいう食品の「機能性」とは、食品による生体リズムの調節や免疫系の調整などに関わる機能のことで、体調調節機能ともいわれています(文献2)。つまり、健康の維持及び増進に役立つ様々なよい影響を与える機能のことをいっているわけです。たとえば、「おなかの調子を整えます」とか「脂肪の吸収をおだやかにします」といった表示は「機能性」の表示だといえます。

●機能性が表示できる食品の仲間

機能性を表示できる食品は保健機能食品と呼ばれていて、大きく3つあります。特定保健用食品(よくトクホと呼ばれます)、栄養機能食品機能性表示食品、の3つです(文献1; 図1)。

図1. 食品の分類

機能性表示食品も、それとよく対比して出されるいわゆるトクホも、同じ保健機能食品です。

●キーワードは「事業者の責任」

さて、機能性が表示できる食品には種類があるわけですが、そのうち今話題になっている「機能性表示食品」の最大の特徴は「事業者の責任において」機能性を表示した食品であることです。消費者庁に決められた書類を提出しさえすれば、表示をすることができます。消費者庁では書類の信頼度などの中身は審査しません。その食品の安全性や、表示される機能のような効果が本当にあるのか、という国の審査はないということです!そのために、個別の「許可」などもありません(文献1; 図2)。

図2. 機能性表示食品とは

これがトクホとは大きな違いで、多くの専門家がこの制度の課題として指摘している部分です。ちなみにトクホは、その食品の安全性や、表示される機能のような効果が本当にあるのか、という国の審査が行われ、問題ない、とされたときのみ表示を「許可」されます(文献1; 図3)。

図3. 特定保健用食品とは

●「消費者の責任」も負わされている?

事業者の責任で表示がされ、それがどんな根拠資料をもとに表示されているのか、わからないのは消費者にとって不安です。そこで、この機能性表示食品として登録された食品の届出に使われた書類は、すべて公開されています。「機能性表示食品の届出情報検索」サイトで検索すれば、必要な情報は消費者が閲覧できる状態になっています。つまり、機能性表示食品を摂取するときには、自分でその内容が信頼できるか確認してね、ということなのでしょう。国は信頼度を確認してくれませんし、ある意味、自己責任をつきつけられているような気がします。

●機能性の根拠は?

ちなみに、機能性を表示するための根拠として使えるのは「1. 製品を用いた臨床研究の論文」または「2. 製品または機能性成分に関する研究レビューの結果」のいずれかとなっています(文献1)。

私はよく、食情報を判断するときには疫学研究の論文の結果を根拠にしているかを確認しましょう、と伝えています。

とはいえ、論文1報ではまだ、日常の活用へは程遠い気がします。上のブログ記事でも書いているように、最終的には複数の論文の結果が得られたときに、ようやく日常に活用ができるかな、という感じです。けれども、機能性表示食品は、1のような論文がひとつでもあれば表示はできてしまいます。そして、2のような論文レビューを実施したときにも、ひとつでも論文が存在すれば表示はできてしまいます。これはかなり大きな問題だと感じます。

ちなみに、論文レビューがなにか、そして複数の論文の結果を統合して結論を導くことの大切さはこちらのnoteで説明しています。

●安全性の根拠は?

そして、安全性を示すための根拠として使えるのは、「1. 今まで広く食べられていたかどうかの食経験」「2. 安全性に関する既存情報の調査」「3. 動物や人を用いての安全性試験の実施」のいずれかとなっています(文献1)。「食経験」は、欧米では「25年以上」などと基準のある国もありますが、日本のこの制度の中では期間の目安はありません。数年でも摂取していれば「食経験あり」となってしまいます。これはちょっと短すぎるという印象です。

現在問題になっている商品に関しては、この安全性の面で課題があった印象があります。専門家の方々が以下のような記事で指摘されていました。

●まとめ

機能性表示食品は、事業者の責任において機能性が表示されている食品です。この表示の内容に国は責任を負ってくれません。さらに、機能性だけではなく、安全性の面に関しても、現在の制度で市場に出回るのは不安が残ります。実際に今回健康被害が生じている案件は、安全性の面での制度の不備があったように感じます。

実際に私も別の機能性表示食品の消費者庁への届出資料や根拠になっている論文を読んで、論文には誤りがあり、研究があまり丁寧に実施されていない印象を受けました。そのことはこちらのnoteで解説しています。

やはり機能性表示食品には課題が多そうです。制度の見直しをぜひ進めていただきたいと感じます。

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【参考文献】
1. 消費者庁. 機能性表示食品って何? 2015.
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/pdf/150810_1.pdf (2024年3月29日アクセス)
2. 山田耕路. 食品成分の機能と科学. アイピーシー. 2001


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