見出し画像

どう書く?葉酸の摂取量を見直すためのコラム(こばやん先生の添削つき)

一般の人向けに食事のコラムを書くことがあります。今回、葉酸の摂り方に関して以下のような内容を伝えたいと思うのですが、この書き方に問題はないでしょうか。

フリーの栄養士さんからの質問

こんな質問をいただきました。コラムの案と、悩んでいるポイントはこちらだそうです。

【コラム案】
「葉酸について、厚生労働省が策定する『日本人の食事摂取基準(2020年版)』によると、20~30歳代女性の1日の推定平均必要量は200 μgです。さらに、妊娠期の1日の推定平均必要量は400 μg、授乳期の1日の推定平均必要量は280μgです。『令和元年国民健康・栄養調査』の報告を見てみると、日本人の20~30歳代女性の平均摂取量は230μgほどで、通常時は半数以上が充足している傾向にあることがわかります。しかし、妊娠期、授乳期にはさらにとる必要があることが示唆されます。」

<悩むポイント>
・推定平均必要量を用いましたが、推奨量を用いるか悩みました。基準値を示す際、どちらを使用した方が良いのでしょうか。
・国民健康・栄養調査の平均摂取量を現状の数値として用いましたが、中央値や標準偏差には触れておりません。こちらについて問題ないかどうか分からず悩んでおります。数値の正しい読み取り方、そして、どのような書き方が問題のない書き方となるか教えていただけますと幸いです。
・対象は栄養疫学や栄養学を学んだことのない一般の方を想定しています。そのため、正確でありながら、できるだけ容易な文章を目指しています。標準偏差などの言葉は難しく感じてしまわれるかもしれません。できるだけ専門用語は使わず容易にしながら、誤った表現にならない具体的な書き方ができたらと思っています。

この質問をくださったのは、「日本人の食事摂取基準(食事摂取基準)」の知識をある程度お持ちの栄養士さんなんだなと感じました。だからこそ、正確に伝えようとして、色々悩んでしまっているんですね。承知しました。このコラム案に意見出しをしてみますね。

まず気になったのは「このコラムを読んだ人にどんな気づきを与えたいのか」が今の時点で明確でなさそう、ということです。この目的によって、書き方は変わってくるように思いました。2通りの方針があるように思います。その方針を決めたうえで、細かいことを確認して、内容をブラッシュアップしていきましょう。

※今回のコラムの校正案は、現在活用されている「食事摂取基準2020年版」(文献1)を活用しての内容となります。2025年度より活用が開始される「食事摂取基準2025年版」では、葉酸の基準値の内容が変更となる案が出されています(文献2)。2025年版を活用するとコラムの書き方はまた変わってきそうですが、そちらは2025年版が正式に公開されて以降、改めて考えていきたいと思います。

※こちらのような疑問・質問をお持ちの方は、以下を参考に、疑問・質問回答サービスを活用してご相談いただければと思います!


●このコラムの目的は?

食事摂取基準の活用は、1) 個人 に対して活用するのか、2) 集団 に対して活用するのか、で活用の仕方が変わってきます(文献1)。総論には、この2種類の場合それぞれの活用の仕方が書いてあるので、ぜひそちらを読んで参考にしてください。

個人への活用の場合、つまり、この文章を読んだ人に自分の摂取量をふり返ってもらいたいような場合のことです。そのときには、個人が目指すと安心な摂取量である推奨量を意識するように書きたいですね。

一方で、集団への活用の場合、つまり、この文章を読んだ人に日本人全体の摂取状況を考えてほしいような場合です。栄養政策の決定者や行政栄養士さんたちなどに向けての文章になりますかね。その場合は今書かれているように、推定平均必要量を使うことで構わないと思います。

ここから先は

3,082字 / 1画像

¥ 330

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?