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ひとりじゃないから汚れながら生きてる

昔に比べ、当地に於いて「ラブホテル」がだいぶ減ったような気がした。人口減少の一途を辿り様々なアミューズメントが減少しているので当然のような気もするが、単純に昔よりも需要が減ったのかもしれない。先述の野球の話ではないが、以前より娯楽の種類も増えたというのもあるし、あるお笑い芸人のように多目的トイレなんかを不正に利用するような輩も増えたということも要因かもしれない。

考えてみれば、「ラブホテル」という名前の癖に、そこで真剣に愛を育んでいる奴なんて殆ど居ない。恋人とのデートコースの選択肢の中で優先候補からは外れ、特段何もすることがない時や夜に寝床がない時に訪れる候補に浮上する場所である。そもそも一般的な宿泊施設ではなく、風営法物件だ。利用者の多くは派遣型風俗や援助交際、不倫の相引きやその他の情事で用いられる場所で、いわば「名のない事件たちの現場」という認識だ。私自身も人生を振り返ると、圧倒的に派遣型風俗店利用時にお世話になった場所であり、稀に入口で同じような輩と出くわしてお互いに目を逸らすということが何度かあったということは、皆同じような認識の元で利用しているのだろう。

誰が名付けたのか知らないが、そもそも「ラブホテル」というネーミングがダサい。むしろ利用者の状況からすれば「モーメントホテル(Moment Hotel)」とか「刹那宿」言った方が格好良く、その方がいずれも一曲作れそうなぐらい響きが良い。
wikipediaによると歴史は江戸時代に遡るようで、昔は「出会茶屋」だの「待合茶屋」など言われていたらしいが、まだその方が本来の意味に沿っている気がする。「ラブホテル」という呼称は1970年代に定着し、以降バブル期に他のレジャー・アミューズメント施設と共に全国的に増加したという流れらしいが、バブルの崩壊と共に減少したというのはいかにもな話であり、まさにその栄華こそモーメントだったのだろう。

近年は「レジャーホテル」化し、ビジネス向け・女子会向けなどとして業態を変化しつつあるらしいのだが、田舎である当地などでは前述のような認識が根強く、到底純粋にビジネスマンが宿泊場所として選択する場所とは思えないのが現状だ。ましてや女子会なんて別に開催出来る場所が腐るほどあって、SNSに投稿するための悪ノリが過ぎた時の候補地の一つにしかならない。確かに地方こそ首都圏などと違って永遠の車社会なので利用者が多そうな気もするが、そもそもの母数がないためこれ以上発展する可能性は極めて低い気がする。

当地ではフロントを潜るタイプと、車で乗り付けてダイレクトに部屋に入る所謂「モーテル」型の2タイプをよく見るが、田舎にいけばいくほど後者のような仕様が多い。昭和20〜30年代生まれのバブル期を謳歌した世代は一極端に全てを「モーテル」と呼ぶ傾向にある気がするが、おそらく高齢層は「タクシー」と「ハイヤー」を一極端にしてしまう感覚同様に「ラブホテル」と「モーテル」を混同してしまっているのかもしれない。言われてみれば昔からあるラブホテルについては限りなくモーテル仕様であり、当時はトレンドだったのだろう。個人的にはモーテル仕様の方が情事の際、他人との接触が極めて低くなる上になんとなくアメリカンな雰囲気とバブルの残骸感の哀愁を感じてしまう部分があるので非常に好ましく思っていた節がある。

バブルの残骸感が強めな日本産モーテル。妙なタバコ臭さも哀愁を感じる。

ただ、稀にメゾネット風の1F駐車場・2F部屋みたいな物件があるのだが、あの建物の場合どこからが施錠ポイントかわからず、嬢の訪問時勢い余って1Fまで迎えに行き、オートロックで2Fが施錠され、他人と交差したくないのにやむを得ずフロントのおばちゃんを呼びに行って開けてもらうということがあったのだが、あれは最高に恥ずかしかった。しかもあの手の従業員は最高にノリが悪い。まあノリを必要とする職業じゃないので仕方がないことなのだが、仮に上のような事例が発生した際は笑顔でイジってくれた方が当事者としては救われるのだが、無言で粛々と解錠されるとこちらも更に恥ずかしくなってしまい、最後まで気まずい空気の中で事が終わってしまうのだった(実話)。正直都市部に住み、東京の丸山町のようなラブホ街の存在がスタンダードな人にとっては「マジで何の話」な話の連発なのだが、田舎ホテル事情はだいたいこんなもんで、ギラギラとした空気とは一線を画した長閑な光景を色んな意味で楽しむことが出来る。

話を戻し、この「モーテル」という呼称こそ未来に残していきたい言葉であり、再び発展を目指すには「モーテル黄金時代」の到来を期待するしかない。そもそもモーテル発祥の地・アメリカと風俗先進国・日本とはモーテルそのもののニュアンスが違う。アメリカではあくまで自動車旅行でさらっと寄って泊まるだけの宿で、いわゆるドライブインの宿泊施設版みたいなニュアンスなんだろう。日本に渡来しいつから今みたいな連れ込み宿風になったのかは知らないが、世界観は要するにB'zの名曲「MOTEL」みたいな感じが正しい。

アメリカの本家モーテル。看板がデカいのは世界共通らしい。

B'zの珠玉の名曲達の中でも個人的には一番と言っていいほど好きなのだが、まず松本氏の冒頭のブルージーなギターからぶっ飛ばされる。終始「モーテルの気怠さ」みたいなのがエモく、サビ入り部分の稲葉氏のボーカルパートだけ際立つ箇所も土や砂の香ばしい感じのするワイルドさがなんとも堪らない一曲である。熟女系の派遣型風俗店を利用するとたまに稲葉に似た、もしくはTAK MATSUMOTOに似たババアが来たりするが、モーテルで利用した場合にそんなB'z達と遭遇するとまさに「Flash Back」(BMGジャパンからリリースされた非公式ベスト盤タイトル)状態であり、一層雰囲気が出る気がする。

しかし、仮にこの曲が「LOVE HOTEL」というタイトルだったならば何もかもが成立しない。言わずもがなクソダサい。それっぽいのが好きなサザン桑田でももう少し捻るだろう。まあ普通の感覚だと「いやいや〜」と思うが、根強い信仰で知られる多くのB'z信者は「稲葉さんマジでエロいわ〜」とか考える可能性もある。しかしそこはミリオンアーティスト、流石のセンスでアメリカンハードロック臭漂うテイストに仕上げる辺り一流である。まあ野口五郎が歌い上げる「MOTEL」の方がいかにも日本的でバブリーな感じはするが、特に下記動画の1:05あたりが激にアツい。

というわけで冒頭に話は戻るが、時代は令和に移り変わり、ますますこの国ではラブホテルの需要は陰りつつある。これからの時代、モーメントホテル略して「モーテル」なんてのは如何なものだろうか。

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