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「半年たったんか」から好きな短歌を挙げる 睦月/如月

 半年たったんかからいい短歌を探したい! でも作者がだれだかわかってるとバイアスがかかっちゃうし…。そうだっ! 作者の名前を隠して読んでみよう! そしたらまっさらな気持ちで短歌が探せるはず…!

ルール

・半年たったんかの作者名をわからない状態にして短歌を読む
・初頭効果を避けるため、読む順番をシャッフルする
・単純接触効果を低減するため、全首を3回以上読む

 …以上のルールで気に入った短歌をリストアップしてみました。作者びいきなし、本気でいいと思った短歌のリストです。

睦月

ひろり
 楽しくてたまらないので酢こんぶの箱にテープをずっと巻いてる

梅丘つばめ
 この傘をたためばきみの守りかたもしらないただのわたしが残る

尾崎飛鳥
 河津桜散りて無人の名所なり菜の花はただ菜の花として
 花言葉選んで花を買っている これは本格的な恋である

縞田 径
 いい感じ秒ごと私を死なせてこう更新してこう歯ブラシ変えよう

長谷川伝
 美しければ 美しければ生きられる 檻の外では滅びゆくヒョウ

赤片亜美
 祖母が煮たあわびの匂いするおじさん、おじさん、田舎は三陸ですか

海月莉緒
 万札をこれ見よがしに募金して君の偽善を粉々にする

秋月祐一
 ロバに乗つたことがないつて気がついてすこしさみしい履歴書を書く

たろりずむ
 へその緒の、どこからどこがおふくろでどこからどこがぼくなんだろう
 ろっぽんのいろえんぴつをにぎらせる 青のぶぶんは空にゆだねて

不可村 天晴
 これはあなたのためにちぎった心です煮るなり焼くなり好きにしなさい

夜凪柊
 ふたりきり教室中の窓あけて夕焼けの一部になるごっこ

小林菫子
 見終わった映画を君に返すとき確かに海に触れていたこと

藤田美香
 雨が降りだしてそれぞれ開く傘なんかいう事あるだろ二月

横山信幸な(短歌)
 梔子の、命がまるで美しいものであるかのような白日
 病んで聴くマーラー、病んで聴く春雷、病んで聴く隣の馬鹿犬の声

如月

深海若
 マジカル死 死といえば遺影(その顔は必ず笑っているものとする)

己利善慮鬼

豊増美晴
 夕暮れが来たのではない更年期私は更新されたのである

雨虎俊寛
 汗かきと決めつけていた ただきみが歩幅の違い埋めていただけ

中嶋港人
 完璧な人じゃなかった洋服のすそで眼鏡を拭く癖があり

梔子
 手をつなぎデートみたいとはしゃぐ君これはデートじゃなかったんだね

矢澤愛実
 せりなずなあなたさよならさらさらとかき込む粥の塩味の強さ

近江瞬
 僕たちは世界を盗み合うように互いの眼鏡をかけて笑った
 区切られた砂場にひとりどうしても地球に似てしまう泥だんご

真島朱火
 この暮らしに互換性などあり得ないほらタッパーに合う蓋がない

一音乃 遥
 安傘に陰るふたりも今だけは軽い ほろりとさつきのくしゃみ

エノモトユミ
 「海だ」って声で車内が目を覚ます「海だ」「海だ」がひろがってゆく
 速すぎる街の流れにバス停はただ立つだけの理由をくれる

御殿山みなみ
 雪は口にふしぎと入らないままにどうでもいいことを話してる

からすまぁ
 タイミング良く降ってきた雨があり傘を忘れて正解だった

未補
 あじさいの褪せてようやく待つことも待たせることもない国へゆく

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