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「半年たったんか」から好きな短歌を挙げる 皐月/水無月

短歌を読むということは、自分の好きと向き合うこと。短歌とわたし。わたしの見つけたわたしだけの好きをまとめました。半年たったんかに関わったすべての人に、おつかれさまでした。

睦月/如月 編
弥生/卯月 編

ルール

・半年たったんかの作者名をわからない状態にして短歌を読む
・初頭効果を避けるため、読む順番をシャッフルする
・単純接触効果を低減するため、全首を3回以上読む

 …以上のルールで気に入った短歌をリストアップしてみました。作者びいきなし、本気でいいと思った短歌のリストです。

皐月

結江里香
 ゆっくりと走る長女と早く歩く次女と動く歩道の三女

おり
 全身の骨を抜かれるころ鯖は海の記憶を失っていた

宮下 倖
 蔦をゆるす放置自転車もうだれも乗せないことを決めたのだろう

伊豆みつ
 うるせえぞおまへ、挽歌詠んだろか。花の名前をつけてやらうか。

うさうらら
 帰ろうとするふうせんをつなぎ留める腕の角度だセブンスコード

手乗り心臓
 タンポポは強く揺らすな 綿毛にもそれぞれ好きな風があるから

寺阪誠記
 ぼくの暮らしはみ出している白菜の箱って意外と小さいんだな

袴田朱夏
 短歌論ぱたんと閉じる 阪急の車掌が俺よりずいぶん若い

とうてつ
 何色のLEGOを踏んだらあの夏のあなたの痛みがわかるのだろう

史乃
 原材料)とてもじゃないが墓場まで持っていくこと、小麦粉、砂糖

街田青々
 道という道に明かりをつけながら神さまみたくトイレに向かう

ペンギンおじさん
 悔いの無い者から順に目を開ける墓前の曾孫あくびを一つ
 僕史上最高の日が増えていくあなたと食べるパンの数だけ

水無月

真壁カナ
 誰だっけ、カモメのピアスくれたやつ そのあと大麻で捕まったやつ

夏山栞
 タグ切ってください今すぐこの帽子で会いにゆきたい春があるので

架森のん
 濡れたまま春雷を聞く バス停の屋根はわずかにわたしを守る

他人が見た夢の話
 いずれかの平澤さんちの干しいもだ平澤ばかり居るあの辺の

谷口泰星
 ねえ、きみの人差し指が煙突に見えてそれから息ができない

しらくま
 雨音の響く浴室今日だってそんなに悪くなかったわけだ

鴨衣
 シーソーが砂場になった公園にどうせどこかで死ぬ子どもたち


 私でない誰かの情景描写だろうこの町が今日快晴なのは

尾渡はち
 黒ばかり選んでしまう僕だけが半音高い横断歩道
 まだ傘は未練のほうへ傾いて右肩ばかり濡らす五月雨

深水きいろ
 乳液の瓶を逆さに立てておく優しさはただ待つということ
 にんげんを営んでいるメモ帳に足は片方ずつ出すとある


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