鹿島戦~首位相手に完勝

2022年5月7日 サンフレッチェ広島 vs 鹿島アントラーズ エディオンスタジアム広島


 前節から中3日。野津田、塩谷のボランチコンビで負けた打撃は大きく、もはや打つ手を無くした感があった。それだけに一体この試合は手詰まり感しかなかったものの、スキッベ監督がその斜め上をいっていた。塩谷をDFに下げ、野津田、森島のボランチ。そして前線にはベン・カリファが初スタメンで入りサントスと初めてコンビを組むのだった。こういう大胆な采配、前監督だったらできなかったなと昨シーズンを思い浮かべてしまうのだった。

 ゴールデンウィークの終盤、昼間で天気も晴れ渡っているものの客入りが悪く、せっかくの首位チームとの対戦なのに寂しくもあったものの、試合が始まると積極的に前に出た。ゴール前に迫りサントスがペナルティエリアで受け打った。ブロックで弾き返されたものの流動的なポジションが効いている。それぞれがボールに関われてる。これはいいペースだ。そう思ってたら鹿島はロングボール一本で鈴木が落としてシュートまで持っていった。枠にはいかなかったもののワンプレーでフィニッシュまで繋げるしたたかさはやはり侮ることはできないのだった。

 この後も一本のスルーパスで抜けられる。最後の最後で塩谷が防いだものの一瞬の隙をついてくる。その為に攻めてるようでいながらボールを刈り取られると一気に中盤に当てられ攻守が逆転する。それを野津田がことごとく潰すものの毎回ファールになってしまう。更に中央からのFKを与えることで鹿島はゴール前へ選手を集めてきた。

 これには結構圧力を感じたものの、このセットプレーは上手く抑えることができ右サイドからのスローインとなった。ベン・カリファが縦で受ける。鹿島の寄せが早く前後で挟まれる。キープからかろうじて前に出す。とそこにサントスが走っていた。

 サントスのドリブル。縦を切られ中に入ると躓きながらもボールをこぼす。走った満田がワンタッチで逆へ流す。底へ入った柏が抜け出る。足を出すDFよりも先に蹴った。ファーに放ったグラウンダーのボールは逆サイドのネット、際どいとこに収まったのだった。

 先制、先制、先制。3人、4人と関わったサンフレッチェらしいゴール。決めた柏のシュートも素晴らしかったが何よりベン・カリファのキープからシュートに行くまでの流れが速かった。素晴らしい、素晴らしい。ただし必要以上に喜ぶことはできない。なぜなら前半の内に先制したのは前節も一緒。後半逆転されたら元も子もない。実際に鹿島にはそういう力がある。しかもこの後野津田がイエローカードを貰ってしまった。度重なるタックルはピンチの芽を潰していたものの、もうそれは期待できないのだった。

 ただ、後半に入るとスキッベ監督は早くも野津田を下げ松本を入れた。理に叶った交代だったものの松本は鹿島に対応できるのだろうか。ただ、前節は後退が遅れて追いつかれたという面もある。果たしてどちらに触れるかというものがあったが、鹿島の攻撃はブロックを敷くことで耐え凌ぐのだった。よく堪えてシュートまでは持ち込ませてないもののそれは決して余裕はなかった。そんな中、右サイド藤井に渡れば単独で持ち上がってくれる。それがカウンターとなり鹿島の攻撃への重心を落とすことができる。ただせっかく縦に突破してもクロスに対してサントスの動きが合わない。逆サイドから柏が上がりクロスを入れるもベン・カリファはヘディングを枠に入れることはできなかった。最後が上手くいかないというのはやはりまだ解消されてないようだった。

 再び攻め込む鹿島。ロングボールを跳ね返す。DFからの繋ぎに対しては鹿島もプレスをかけていく。GK大迫も加わりパスで逃げる。逃げる。逃げる。そして前が空いた瞬間縦へ入れた。サントス、ポストプレーで粘る。そこに駆け上がってきた満田が貰うとそのままドリブル、ドリブル、ドリブル。DF2人を前にして方向を変えつつシュート。DFの股下をすり抜けゴールまで飛んだ。GK触るもゴールに突き刺さった。

 決まった、決まった、決まった。追加点、2点差。これがないことから負けた試合がどれほどあったか。そしてこれが強引なまでの満田の駆け上がりとシュートによって決まったことが今までにないものだった。

 満田は走る。とにかく走る。攻撃だけでなく守備でも運動量を惜しまない。それにより相手の自由を奪いプレーに制限を与える。そしてそんなプレーをベン・カリファもサントスも行う。誰もがサボらない。それでいて2点差となった今、無理にボールを奪いにいくこともない。その辺の手堅さに成長を感じる。それでいてマイボールになると3点目を目指しにいくのだった。

 そんな前掛かりになった展開で奪われると中央に出され一気にカウンターへと持っていかれそうになった時、それを鼻先でカットしたのは松本だった。そこからサントスに繋げるとペナルティエリア内、1対1でシザースからシュート。枠には入らなかったものの相手に恐怖を与えるだけで十分効果がある。鹿島の攻撃も慎重にならざるを得ず、ゆっくりとした持ち上がりから前線へ速いボールを入れるも受け手に渡ることなくラインを割るのだった。

 ゴールキックで始まり後ろから繋いでいく。ワンタッチで回し右サイド藤井へ。そこから縦へ一気に駆け上がっていく。駆け上がり、駆け上がり、ボックス前のサントスへ。ワンタッチでDFの間を縫うシュート。が、GKブロック。だがこのこぼれへ逆サイドから柏が詰めた。ゴールに押し込まれる。決まった。入った。3点目が決まったのだった。

 3点差。柏の2ゴール。もはや残り時間もそう多くはない。勝利をグッと近づけた。スタジアムの手拍子の熱が高くなる。ここでベン・カリファとサントスを下げ柴崎と永井を入れ逃げ切り体制に入る。前線で時間を稼ぐ。奪われるとブロックをつくり守備に徹する。ボールに対してはシンプルにクリアする。跳ね返して跳ね返して跳ね返す。そして次々に選手交代をしていき時間を稼ぐのだった。

 そんな中でも前線で満田のキープでファールが貰えた。それだけで時計を進めることができた。そして粘って粘って粘ってタイムアップを迎えることができた。3-0、首位相手に完勝。前節の課題を見事に克服したのだった。

 全員が最後まで走り切った。そして新たなフォーメーションは配置を特定できないような流動性があった。そして何より決めきることができた。それをもたらすことができたのは満田とベン・カリファという新戦力とスキッベ監督の手腕によるとこも大きいのだろう。

 素晴らしかった。何回も見返したい。絶望的な前節から打って変わって言いようのない幸福感に満たされるのだった。

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