札幌戦~北の大地でのスコアレスドロー

2023年11月11日 コンサドーレ札幌 vs サンフレッチェ広島 札幌ドーム


 温暖化の影響は北の地でも寒さをもたらせなかった。もはや日本に冬は訪れないのだろうか。そんな懸念すら抱いてしまったものの前日の雨が気温を一変させた。張り詰めたような冷気。乾いた風が吹けば寒さが一層身に染みるのだった。

 そんな厳しい気候であるが故にドームというのは一定の安心感をもたらした。少なくとも風が凌げるのはありがたい。階段を上りアウェイゴール裏に躍り出るとすでに紫のユニフォームの姿はあった。とはいえさすがに北海道であるが為に人数的には厳しいものがある。なのでなるべく集まって座るよう応援団の呼び掛けが行われるのだった。

 屋根のついたスタジアム。試合演出の音楽が鳴り響くが、やはり音響がいい。そしてサポーターの声も響く。お互いのチャントが渦を巻く中、試合は始まったのだった。

 攻撃的サッカーを施行する札幌を前から嵌めようとするものの上手くかわされる。そして両サイドが高い位置を保ちどんどん仕掛けてくる。時に浅野がスピードに乗ったドリブルで切り込んでくる。志知と佐々木の2人掛かりで止めるもその後の2次攻撃、3次攻撃が素早い。クリアをしても拾われる。まるでそれはどこにどうボールを蹴り込んでも事前にその場所を把握してるかのようだった。

 そんな相手の守備を切り崩す為に器用されたのがCBの山﨑だった。ところが山﨑のパスは読まれてしまう。ビルドアップのパスが引っ掛かる。ロングキックは収まらない。そのせいで守備の重心は低くならざるをえない。それが余計なこと札幌に前を向かせる。そしてフィニッシュまで持っていかれるのだった。ただ、その数々の危ない場面、GK大迫の安定したセービングによりなんとか無失点のまま前半を終えることができたのだった。

 後半の始まり、サンフレッチェの選手がピッチに出てくるのが遅かった。綿密な作戦指導があったのは想像に難くない。明らかに機能してなかったもののそこで人を代えるという選択をしなかった。そこを貫いたのはこのメンバーでやり切りたいというスキッベ監督の意思があったのだろう。加藤のワントップ、CBに入った山﨑をあくまでも使いたかったのだろう。

 相変わらず防戦一方のサンフレッチェ。プレスを掛けても巧みなボール捌きでかわされる。それによりまたしても重心は低くなるものの奪ってからのキックが前線の加藤に渡るようになる。そこで2人のDFを背負いながらも失わない。それがエゼキエウや満田の飛び出しを生んでいくのだった。

 エゼキエウがフリーでドリブルに入る。東が最前線がボールを収める。カウンターにより満田がドリブルで持ち上がる。そんな場面が続出する。ただ、その後がよくない。シュートが枠に入らない。満田のラストパスはDFに引っ掛かる。東に至っては相手を背負ったらシュートすら打たずに奪われる。ああ、その消極的プレーは脱力してしまう。前が空いたら距離があっても打とうという気概がどうして生まれてこないのだろうか。

 それ以後も攻める札幌に対してカウンターでチャンスをつくり出していく。だが決まらない。最後決める人がいれば。そしてとうとう志知に代えてピエロスが入るのだった。

 トップに入ったピエロス。それによりわかりやすいターゲットができた。中盤でピエロスが収めた。逆サイドへのロングキック。が、これが相手GKへのパスにしかならない。なんて適応なキックなんだと頭を抱えるも再び訪れた同様の場面ではちゃんと味方が走り込んでいた為チャンスへと繋がる。が、やはり最後を決め切るまでにはいかない。逆に札幌はサンフレッチェの守備を切り裂くパスが通りまくる。恐ろしくレベルの高いボール回し。追い詰めたと思っても適当に出したかのようなクリアさえ逆サイドに繋げた時、気が遠くなるのだった。

 エゼキエウに代え松本泰志が入り残り時間のスパートを掛ける。だが札幌は譲らない。それどころかサンフレッチェが攻めれば攻めるだけ食い止めることで自らのチャンスに繋げていく。それがボールを前に出す自制に繋がったのか、終盤に向けて攻撃を急がなくなってしまった。アディショナルタイムに入る。もう時間は残されてない。それにもかかわらずGK大迫はゴールキックを急ぐことなくゆっくりゆっくりセットするのだった。

 急げ、急げ。

 そんな声を出しそうになるもやはり急がない。そして佐々木がファールを受けてFKを得るもやはり一呼吸を置いていると鳴ってしまった。試合終了のホイッスルである。最後の最後に点を取ろうという気はなかったのだろうか。もしかしたら引き分けで御の字という計算が働いたのかもしれなかった。

 機能しなくても貫いたスタメン。これはある程度来季に向けた構想も入ってたのかもしれない。それ故に交代枠も2つしか使わなかった。加藤のワントップ、山﨑のCB。不安定な部分もありながらも試合で成長を促すのだろう。今や右サイドで完全なレギュラーとして定着した中野がそうであった。

 スコアレスドローには満足してない。むしろ可能性のあるシュートは札幌の方が打ってた。それでも挨拶に来た選手には拍手で迎えた。そのひと時に勝敗を超越した至福をもたらされるのだった。

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