ガンバ戦~幸せな形でのEスタ最終戦

2023年11月25日 サンフレッチェ広島 vs ガンバ大阪 エディオンスタジアム広島


 チケット販売完了。

 エディオンスタジオ最後の試合というメモリアルには多くの人が集まった。入場待ちの列は長く連なり背後の山まで続いていった。グッズ売り場ではほぼ整列が意味をなさないような混雑ぶり。3万人以上の席のあるスタジアムながら実際には2万人以上の来場に耐えられない。今更ながらこのスタジアムの限界が垣間見れた。

 そんな混乱の中、潤を追った入場により徐々にスタンドを埋めていく。いつもよりも時間は掛かったものの観客で埋まっていくとコレオが上がるとその光景は壮観だった。観客が多いからできた演出。最後にこういう光景を観れて気分が盛り上がるのだった。

 そしてスタメンに青山が入ってるアナウンスが入ると余計に気分が上がる。サンフレッチェを支えたベテラン、青山以外にも柴崎、柏がベンチに入っている。更に引退の決まったGK林までベンチにいる。スキッベ監督の粋な計らい。そこに長年応援してるサポーターは熱くなるものが体に走るのだった。

 割れんばかりのチャントの中でのガンバボールでのキックオフ。ロングボールで攻めてくる。単純にクリア。そのセカンドボールに反応してロングシュート。GK大迫のキャッチ。そしてここからのロングキックが川村に渡りシュート。遠目からの低い弾道のシュートは枠には入らなかったがお互いゴールへの積極性を見せた立ち上がりだった。

 ボールの寄せが速くアグレッシブに奪いにくるガンバ。それに対し軽快なリズムでパスを散らすのは青山だった。それがチームにリズムを与え最後列からのビルドアップも澱みなく進む。GK大迫から左の佐々木へ。縦へ送るとヴィエイラの落とし、それをフリック、縦のスペースへスルーパス。加藤が左のポケットに飛び出し中を伺う。カットインからのクロス。ゴール前に守備は揃ってるがそこに飛び込んだ満田。ピンポイントで捉えたヘディングがゴールの脇に入ったのだった。

 先制。コーナーポストに駆け寄るパフォーマンスの満田。スタンドからは満田のチャントが繰り広げられる。早い得点。流れるような展開であっさり決まった。それはチームの調子の良さを窺わせた。そしてそれを生み出したのは間違いなくスタンドを埋め尽くした観客の声援によるものだった。

 その声援はより一層ヒートアップしてチームを盛り立てる。そして再開後再び左サイドでボールが駆け上がっていく。今度は満田がポケットに入り込み東へと落とす。フリーで受けたもののゴール前は人数が足りてない。それでも入れた。左足のクロスはDFの壁に向かっていく。が、ここでファーサイドから駆け上がった中野が飛んだ。頭に当て叩きつける。入った。またしても左からのクロス。そして決めた中野はJリーグ初ゴールだった。

 湧き上がる歓声はとめどがない。打っても打っても入らなかった中野がこのホーム最終戦で決めた。それだけに単純なるゴール以上の価値があった。雄叫びを上げる中野。でもスタンドのサポーターもそれに負けない声を発するのだった。

 早い時間での連続ゴールで一気に優位な展開になる。相手に付け入る隙を与えない。いつもより選手が勇気的に動いてる。普段のパフォーマンスにバイアスが掛かってる。スタジアム一体となってこのゲームを動かしていくのだった。

 この為後1点取れると決定的だったもののそれが入らない。チャンスは作り出している。だけどあと一歩が足りない。シュートは打ってるもののボール1個分逸れてしまう。そこはガンバも最後の最後は複数人でブロックに入り枠に入れさせない。この雰囲気、この展開で止めを刺せないとこにガンバが粘り強さを見せるのだった。

 このままの展開で終わってしまうかもしれない。そんな中弛みを見せそうになったその時だった。中盤で満田がファールを受けるもプレーオン。その流れで川村が縦パス。バイタルエリアで受けた加藤。ゴールを向きコントロールショット。ファーに向かったボール。GK東口が飛びつくも届かず入ったのだった。

 決まった、決まった、決まった。3点目。これはもう決まった。後半の時間帯から言ってももはやこのゴールは試合を決定づけるものとなったのだった。

 もはやここまでくると攻撃姿勢は止まらない。勝敗に関わらず更なる得点を狙っていく。勢いは止まらない。その圧倒的勢いの中、青山に代わって柴崎が入るとスタジアムに拍手が響き渡る。まだまだやれることを示した青山に対して。そして柴崎を激励する意味でも。するとその柴崎が魅せる。サイドから入った横パスに反応してシュート。ガツンとポストに跳ね返される。あとボール1個分であった。惜しい。ただ、これにより柴崎もまだまだやれるのでは思わせるのだった。

 更にメンバー交代が告げられる。ピッチサイドに立ったのはGK林と柏だった。大迫が駆け寄りハイタッチによりピッチに入った林に割れんばかりの拍手が起こる。加藤に代わって入った柏も左サイドでカットインを魅せる。残念ながらそこでのコンビネーションが合わずカウンターを受けたことでサイドでFKを与えてしまう。ゴール前へ向かってのキックが入る。ヘディングで合わされた。が、そのシュートをキャッチ。GK林は無難に仕事をこなす。そして前線へ飛ばすことにより試合を終えるのだった。

 3-0の勝利。満員の3万人近いエディオンスタジアムの最終戦。ここでJ2降格もJ1優勝も味わった。そしてそれらの中にいた林が引退を発表しつつも最後にピッチに立つことができた。更にはその去就が不透明な青山はスタメンで責務を全うし、柴崎、柏も可能性を見せた。次節勝つことができればACL2への出場もあり得る。だとすると当然試合数増加により選手が足りなくなる。もしかしたらその為の見極めだったのかもしれない。そんな憶測ができるのも勝ったからこその余裕のなせる技だった。

 やはりこのスタジアムは満員に近くなると独特の雰囲気を醸し出すことができた。それだけに新スタジアムへの期待も掛かる。そんな中、試合後に林卓人の引退セレモニーが行われる。グッと胸が熱くなる。こんな形で選手生命を終えた林は幸せだったと思う。そしてそのセレモニーを観てるぼくらも幸せな感情に包まれるのだった。

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