FC東京戦~取って欲しい選手のゴールによる勝利

2023年10月28日 FC東京 vs サンフレッチェ広島 味の素スタジアム


 日差しの強い日だった。その分日陰に入るとひんやりとしていて時間の経過と共に日が傾いてくるとむしろ肌寒さを感じるようになった。この時期の寒暖差は激しい。だがアウェイゴール裏のエリアは満席となり熱き応援が繰り広げられる。そこには2022年以来勝ててないFC東京に対して今度こそはという想いも湧いていたのだろう。

 スタメンはヴィエイラとエゼキエウが入っている。この2人はジョーカー的な役割の方が合ってるような気がしてどうもこの采配は受け入れることができなかった。特にヴィエイラはスタメンだと点が取れない。時間の経過に伴って存在が空気になる。それだけに早い時間で決めてしまいたい。高い位置からのプレスで嵌め込んで行きたいのだった。

 ところが試合が始まると最初に攻め込んできたのはFC東京だった。CKを防ぐとセカンドボールをヴィエイラが収めてそこからチームが前を向く。ところが東京のチェックも鋭く攻め切ることができない。ハイプレスで嵌めようとするも東京は1本のパスで局面を打開する。それは前線にアダイウトンがいるのが大きかった。右サイドで受けるとスピードとパワーで切り込んでいく。それにより全体が押し上げることができゴール前へ入ってくる。守りの時間が多くなる。が、前掛かりになる為一旦ヴィエイラに入るとそこからカウンターに繋げられるのだった。

 高い最終ラインの東京。それだけに裏を狙う縦パスを送るも悉く最終ラインのトレヴィザンに蓋をされてしまう。それにより再び東京の攻撃に移っていく。ライン側でアダイウトンのドリブルから始まりバングーナガンデのオーバーラップ。ディエゴが最前線で収め仲川がドリブルで切り込んでくる。厚みのある東京の攻撃。だが簡単にはやらせない。最後を防ぐとカウンターにつなげる。左サイドを東が駆け上がりクロスを入れると加藤。ヘディングはGK野澤に防がれてしまったものの可能性のある攻撃だった。攻めているのは東京であるもののシュートが打ててるだけにそれほど悲壮感のない前半となるのだった。

 そして後半になるとサンフレッチェは攻勢に出た。相手のクリアを再び跳ね返し前線へ入れるとボールは浮き上がった落ち着かない展開に。ボールが飛んで飛んで地に着かない中、中野が最前線の加藤へ浮き球を入れるとトラップで反転。ゴールを向くとシュート。入った、決め切ったのだった。ボールが落ち着かない中、加藤のボールを収める技術、そして正確なシュートにより決め切ることができたのだった。

 先制。それは大きな自信となり勢いとなることができた。が、ここで緩んでは行けない。先制しつつも逆転された結果が東京との7試合未勝利である。追加点を取るべく攻勢に出る。その分後ろが薄くなるだけに東京はそこを狙ってカウンターに出る。奇しくも前半とは逆の展開になる。そして東京のカウンターに迫力があるのはやはりアダイウトンの存在が大きいのだった。

 フリーで受けたアダイウトンが縦に抜ける。チェックに行くもまるで無力化するかのように突き進む。そしてゴール前へのグラウンダークロス。仲川が中央に詰めている。それを背中に感じた荒木がスライディングで脚を伸ばす。先に触った。が、ボールはそのままゴールに跳ね返ってしまったのだった。

 オウンゴール。追いついてしまった。ただこのプレーで荒木を責めることはできない。クリアしなければ中川に決められていた。一か八かのクリアだった。むしろアダイウトンを止めれなかったことが問題だった。いつもいつもアダイウトンに決められる。ああ、アダイウトン、アダイウトン。

 勢い付いた東京は更に攻撃の厚みを増していく。だがサンフレッチェも火は消えていない。お互いに点を取りたい中でオープンな展開へとなるとエゼキエウがドリブルで左サイドを上がりクロス。加藤のシュートはDFのブロック。そして今度は中野が右サイドからのクロスはクリア。サイドを使っていくがこじ開けれない。むしろ人数を掛けた守備は尚更東京のカウンターを発動させやすくなっていく。そこを佐々木が身体をぶつけて取り切ると右サイドからの展開。中野がゆっくりと運んでいくのだった。

 中の満田に預けようとしたもののそこをカット。が、ルーズボールを再び拾った中野。満田に預けると中央のヴィエイラに出す。DFを背負いながらもワンツーで裏へ出すと飛び出した満田。GKとの1対1。ここをニアのわずかなスペースに流し込んでいったのだった。

 黄めった、決まった、決まった。満田のゴール。ボランチでの出場であるにも関わらずゴール前へ飛び出してのゴール。球際の競り合いでも優位を続け試合を決めるゴール。まさにスーパーだった。そしてこのゴールによりスタジアムの応援は一層熱を帯びるのだった。

 追いつきたい東京が押し込んでくる。バイタルエリアに入ったディエゴがDFを背負いつつも奪われない。じっくり溜めて溜めてシュート。GK大迫の正面。キャッチはできたもののあの体制でシュートまで持って来るのはやはり油断ならない。それだけに引きこもって守備に徹するよりも攻めることで攻撃の自由を奪うのだった。

 疲れの見えたヴィエイラとエゼキエウに代えナスと志知が入る。これにより相手のバックパスに追い込みを掛けることによりビルドアップの余裕を与えない。それでもCKからポストに当てるヘディングをかましてきた東京。まだまだ気は抜けない。7分というアディショナルタイムの表示に気が遠くなりそうだったが、もはやここまでくると時間稼ぎのプレーも入れて来るのだった。

 そしてタイムアップの笛が吹かれる。揺れるスタジアム。勝った。加藤、満田という決めて欲しい選手が決めたというのも高揚感を高める。マルコス、ピエロスがいない中でも点を取ったというのも大きい。シュートが入らないと悩んだ1年だった。そこに加藤と満田が最後のシュートへ精度をもたらせた。チームがもう一段上にいく為にもこの最後の精度を上げていく必要性を感じた。

 だがそんなことよりも今日この勝利に酔いたい。追いつかれての勝ち越し。こんな試合を観れただけでも興奮は収まらない。残された試合、こういう試合を続けてこの興奮をまた味わいたい。タイトルも何もない中、ただただそれだけを願うのだった。

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