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恐るべき軽井沢アウトレットモール

 出張にて軽井沢へ来てる。確かに雪という予報はあった。だけど4月にも入ったので多少ちらつく程度だろうと高を括っていた。だがホテルを出るとしっかり積もっていたのだった。
 それにも関わらず車を出し仕事へ向かう。多少スリップするのでマズいかなという気はしつつも歩くには多少距離があることからそのまま走らせる。視界を遮る雪が落ちてくる。それはどんどん勢いを増し路上の走行を一層悪くさせる。積雪の嵩が増す度にやっぱり車置いてくればよかったと後悔を強めるのだった。
 案の定この雪では仕事にならず中止。車も皆チェーンなど巻いてないから帰れる内に帰ろうということになり俺もホテルに戻った。そして時間ができたのをいいことに駅前のアウトレットモールに繰り出したのだった。
 念の為に持ってきておいたベンチコートを羽織りホテルで傘を借りて出て行った。こんな日に来るのは俺くらいのものに違いない。そんな目論見をしてたもののそれも見事に外れこんな日でもしっかりと来てる人はいるのである。一体どこからやって来るのか。ああ、それは俺と同じような旅行者なのだろう。雪景色背景にやたらと写真を撮ってる人を見かけるにつけ、地元の人間ではないのに気づくのだった。
 旅行に来た人にとってはたまたこういう天候になっただけ。せっかく来たからにはアウトレットモールに行かなければならないという強迫観念が浮かぶのだろう。
 そんな旅行者に混じってどうせなら各店舗回ってみようとその広大な敷地を歩いていく。グッチといった高級ブランドが果たしてどれだけ安いのか店内に入ると早速店員に捕まる。一応名刺入れサイズのカード入れが欲しいには欲しいからその旨を告げると商品が広げられた。見た目的には分からないものの、グッチのロゴが入ってるだけにすぐに高級品と分かる。そこで値段を聴いてみたら駅前の安売り名刺入れが軽く30個は買える値段だった。それでもここじゃないと買えない値段なのかもしれない。そして多少高くても本当にしっかりしたものが欲しいとは常々思ってたことではあった。そこで高級店の雰囲気に飲まれたのもあって一瞬検討に入ったのだったがすぐに打ち消し、適当な理由を並べて店を出たのだった。
 危なかった。あんなもの俺の身分に合ってない。何せ中身より入れ物の方が高いなんてかっこ悪いたらありゃしない。そしてそれ以上に懸念を感じたのが盗難だった。あんなグッチなんてロゴ付けたものあったらどこで盗まれるか分かりゃしない。余計な心配事が増えるくらいなら持ってない方が幸せだ。
 やっぱり軽井沢はどこ行っても高い。だからこそこういうとこに来るとお買い得なような気がしてしまうのかもしれない。金銭感覚が麻痺したとこで旅行の思い出として売りつけられるのだ。ま、それはそれで否定しない。これは軽井沢で買った財布と言えばそれだけで付加価値となるだろう。でも俺のようにお洒落に興味ない人間には豚に真珠なのである。
 そこで再び歩いて行きついたのがアンダーアーマーのショップ。他にもアディダスやナイキもある。こちらは確かにメーカー品にしては安い。いかしたシャツもある。これもいい、あれもいい。そうして数点抱えてレジに行くとしっかりとブランド物の名刺入れを買えるだけの金額にいってしまったのだ。
 自分だけこの場の雰囲気に飲まれない賢者のように振る舞いながらも自分の興味ある分野にはしっかり金を落としてしまう。そんなどんなタイプの人間も飲み込んでしまう軽井沢アウトレットモール。恐るべし。雪の日でも人が集まるのがよく分かるのだった。

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