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魔法焼却少女少年⦿大門寺太人

(2019年4月28日22時58分 改行・強調部分のみ修正 本文修正なし)

やあみんな!

ボク、大門寺太人! 府立八賀谷高校に通う15歳!
えーっと……いきなりこんな姿で申し訳ない!

今ボクの姿は、眼帯ツインテールにミニスカニーソの魔法少女少年!
この変身フォームを考えた奴は誰だ、マジで出て来い!
利き目に眼帯被せるの本当に迷惑だからマジで止めろ!

あーともかく……今はちょっと取り込み中なんだ!
ボクが何でこんな破廉恥な姿になってるかと言うと……。
「「「ギャーッ!」」」

「ゲロゲーロ!」

ボクらのホームタウン、八賀谷で暴れ回る超巨大ガマガエル!
開いたマンホールから急に出てきたと思ったら、いきなり発光して巨大化!
つーか本当にデカいよ、体高15メートルぐらいあるんじゃないか?

「ゲロゲーロ!」

うわっ、デカい舌を伸ばして何人も丸呑みにしちゃった!
ヤバいよヤバいよどうしよう! 早く何とかしなきゃ!
幼馴染で魔法少女のひとみちゃんとは、変身後5秒ではぐれちゃった!

アッそうか、説明が必要だね!
ボクの幼馴染で×××フレンズの平等院ひとみちゃんは、変身して魔法で戦う魔法少女なんだ! 武器はなぜかチェンソーだけど!
「ひとみちゃんがいない! ひとみちゃーん! どこ行ったのーッ!?」

「落ち着け、大門寺!」

サラサラロングヘア―を掻き揚げ、颯爽と現れるゴスパンク少女!
……イヤちょっと待て、「少女」じゃないッ!?
「アッその声は、イケメン高身長でクール眼鏡、頭脳明晰、スポーツ万能、生徒会副会長でドMの五所川原先輩!

「ハッハッハ……ドMは余計だ、大門寺!」

「っていうかあんたも魔法少女少年だったのか!」
「いかにもッ!」
五所川原先輩は颯爽と前髪を掻き揚げる!
いい加減にしろ! これ以上、男の魔法少女はこの物語に必要ないぞ!

「ゲロゲーロ!」

うわっ、巨大ガマガエルのベロが飛んできた!
「逃げなきゃ、先輩も避けてッ!」
「とうッ(とうッ――とうッ――とうッ――とうッ――)」

先輩の大ジャンプ! 掛け声に超自然のエコー! そういうのいいから!
ボクも慌てて横っ跳び、ツインテールにベロが掠める!
「この髪も大概邪魔だよなァ」

カエルの舌が車列に突っ込む! 乗用車の窓ガラスを3台も貫通!
「「「ギャーッ!」」」
逃げ遅れた人たちは血塗れミンチだ!

「そうだ、早くあいつを倒さなきゃ! ひとみちゃーんッ!」
落ち着けィ! 平等院くんは今、府立八賀谷高校の校舎裏ッ!」
「はぁッ、瞬間移動!? いやそもそも何でそんな場所に!?」

「転校生で魔法少女のギヨチーヌくんと、今は決死の決闘の最中だッ!」
「エーッ、ギロチンさんと!? 大変だ、彼女転校したばかりでフランス語しか喋れないじゃない! そもそも会話すらできないよあの二人!

「心配ないッ!」

先輩がサラサラヘアーを振り乱してキメポーズ!
「魔法少女同士に言葉は不要! ただ肉体という言語で語り合うのみさ!」
イケメンだからギリギリアウトだ!

「そして大門寺! 魔法少女少年となった貴様は何時にもまして美しい! さわッ……フムン、素晴らしいプリケツだァ!」
「ちょっ、どさくさに紛れてお尻触らないでもらえますか!?」
先輩がボクの横に並び立つと、肩に腕を回して乳首を撫で回す!

「……どうだ? この後、二人きりの部屋で将来を語り合わないか?」
「いや、ボクはノンケなんで、遠慮してもらえますか!?」
「私は貴様が男でも一向に構わんッ!」
ボクが嫌だって言ってんだよこの変態!

「ゲロゲーロ!」

巨大ガマガエルが長い舌で通行人を絡め取って捕食!
「「「ギャー!」」」
いや、いくらなんでも舌長すぎだろ!

「ゲロゲーロ!」

「いかん! このままでは危険が危ない!
先輩がボクの股下から顔を出してキメ顔! 気色悪いから止めてくれ!
「この魔法少女少年・五所川原 方正大門寺 太人ッ! 共に魔法の薫陶を受けた同胞、街の平和を乱す者は、たとえ何者であろうとも――ッ!」

「ゲロゲーロ!」

巨大ガマガエルは更に三人捕食!
すいません先輩ッ! そのキメ台詞まだかかりますかッ!
巨体が跳躍! タンクローリーとクレーン車がまとめてぺしゃんこだ!

「フッ、お前の出る幕はないぜ後輩、しかと目に焼き付けなッ!」
ボクのミニスカートとω(ふぐり)を揺らし、先輩のエントリーだ!
「見せてやるぜ俺の魔法ッ!」
先輩のキメポーズに呼応して、その両手に超自然の光が収束!

その手に召喚されたのは――
魔法インパルス放水銃! こいつで一発決めるぜ、FOOOO!
その無骨な形状は、放水銃と呼ぶには余りに攻撃的だ!

「オッ、想像してたより結構強そうな道具だ!」
「あたぼうよ! そんじゃイックぜええええ――ッ!」
スカートとω(ふぐり)を揺らしながら、五所川原先輩が突撃!

オラオラオラアッ! COOL! COOL! COOOOOOL!
BOOM! BOOM! BOOM! BOOM! BOOM!
高圧放水の連射に、超質量のベロが弾き返される!

「まだまだあッ! アン、ドゥ、トロワァ――ッ!
「先輩、ギヨチーヌさんのフランス語がうつってますって!」
先輩がガマガエルの身体を駆け昇り、高圧放水の大バーゲンだ!

凄まじい水柱の連続! 巨大カエルの身体がボヨンボヨンたわむ!
生身の人間なら一吹きで木っ端微塵の殺人高圧だ!
「「――やったかッ!」」

イヤちょっと待て、何かおかしいぞ!
……辺り一面を霧めいて覆い尽くす、水煙が晴れていく!
そしてその先には……。

「ゲロゲーロ!」

「ぐわぁーッ(ぐわぁーッ――ぐわぁーッ――ぐわぁーッ――)」
先輩が宙を舞って三回転、一撃でやられちゃった!
「つーかしつこいんだよ! いちいち叫び声にエコーをかけるな!

先輩がアスファルトに仰向けで衝突してバウンド!
「クゥーン(クゥーン――クゥーン――クゥーン――)」
子犬めいて鳴いてみても、その姿は女装した男子高校生だ!

「ゲロゲーロ!」

そこへ延びる巨大ベロ!
「アッ危ないッ!」
僕はたまらず駆け出し、先輩をお姫様抱っこで脱出!
CRAAAAAAASH! 消火栓が弾け飛び、水柱が吹き上げる!

「ゲロゲーロ!」

「ンン゛ッ! 何てこった、全然効いてないよッ!」
そうか! カエルだから水鉄砲で撃っても死なないんだ!
「グフッ! どうやら、そのようだな、大門寺。さわっ」

「おい! どさくさに紛れて尻を揉むな、この変態!」
「すんすん。このツインテールは……お前の髪なのか?」
「それ以上何か変なことしたら焼き殺すぞこのド阿呆!」

ボクは着地して、取り敢えず変輩先態を投擲!
「アッFOOO! 非道ぅい!」
そして10メートル程先に降り立つ小動物!

「クルックー」
「アッ鳩だッ! ここは危ないから余所へお行き!」
「カァーッ」
「アッ烏も! キミ頭いいんだろ、早く逃げろ!」
「ピィーッ」
「アッ鳶も来た! 何だか嫌な予感がするぞ!

「ゲロゲーロ!」

「クルックーッ!」「カァーッ!」「ピィーッ!」
ガマガエルの舌が飛び出し、三羽纏めて捕食!
「あぁーッ、もうッ! 結局ボクがやるしかないのかッ!」

八賀谷の市街地は無惨に蹂躙され、死屍累々!
ひとみちゃんとギロチンさんは、まだ校舎裏で決闘中なの!?
変態・五所川原先輩に至っては、敵との相性が悪くて役立たず!

……だけど、こんな所で負けてたまるか!
「かくなる上は焼却処分だ! 出でよ、魔法フレイムスロワー!
超自然の光が収束! ボクの諸手に、火炎放射器が召喚!

「生き物って奴ァ、大体焼いたら死ぬンだよおッ!」

FVOOOOOOO! 紅蓮の火焔が吹き荒れる!
途轍もない高熱で、周囲に飛び散った水分が一瞬で気化!
もう逃げたりしない! 来いよ! 魔法怪物ガマガエル!

「ゲロゲーロ!」

カエルの大舌が突貫!
信号や道路標識をなぎ倒し、一直線にボクへと飛び込む!
「同じ手は何度も通じないぜッ!」
跳躍! スカートの裾がはためきω(ふぐり)が揺れる!
アスファルトにカエルの舌が突き刺さる!

「大門寺!」

「何すか先輩ッ!」
ボクはカエルの舌の上に着地! ねっちょりして気色悪い!
「あなや……縞パン、縞ニーソ」
うるせえな! もう黙って寝てろ!
ボクは全速力で舌を駆け上がる!

「ゲロゲーロ!」

巨大カエルが凄まじい舌を引き戻す! まるでジェットコースターだ!
「させないぜ!」
火炎放射器のノズルを絞る。収束モードでこんがり行くぜ!

跳躍! 中空で1回転! 今上空何メートルだ!?
巨大カエルが大口開いて、ボクを睨みつける!
限界までアイドリング、そしてスロットル全開!

COOOOOOOO…………ZVOOOOOOOOOOOOOO!
「ゲロ―――――ッ!?」

カエルの口から猛火が噴出! 内臓までこんがり焼けたかな?
「だけど、まだまだこんなもんじゃないぜ!」
巨大カエルの額に飛び降り、衝撃をバネにして更に跳躍!

カエルは口から火を吐きながら、苦し紛れに舌を振り回す!
「悪いな、背中がガラ空きだッ!」
畳何枚分かの広さの頭を踏み越え、宙返りで落下!
赤茶色でいぼだらけの大きな背中!
「これでトドメだッ!」

COOOOOOOO…………ZVOOOOOOOOOOOOOO!

最大出力の火炎放射が、カエルを背中から腹まで貫いた!
FOOOO! こいつはCOOL! いやHOTだな!」
回転着地したボクの隣に、いつの間にか五所川原先輩!
「待たせたわね、たっくん!」

GROOOOOOOOOOOOOV!

その音は、ひとみちゃんの魔法チェンソー!? 
振り返れば、大穴の空いたカエルを上から下に真っ二つだ!
「Mourir!」
またなんか来たぞ! ひょっとしてその見目麗しい銀髪は!

GASHOOOOOOOOOOOO!

巨大な油圧ハサミが、巨大カエルの首から上を切断!
カエルは三度の致命傷でオーバーキルだ! ちょっとやり過ぎだぞ!
「Bonjour, Mademoiselle!

ボクの隣に銀髪乙女、ギロチンさんが優雅に着地!
いや待てよ、フランス人だから読み方はギヨチーヌだ!
そしてそれ以前にボクは男だッ!

「あ゛あコラ? うちのたっくんに色目使ってじゃないわよ!」
「N'importe quoi」

「ゲロゲーロ―――――ッ!」

魔法怪物ガマガエルの生首が宙を舞い、断末魔を放った!
ボクらは四人で背後を振り返り、トドメにキメポーズ!

\!  妖  魔  退  散  !/

「ゲロ―――――ッ!」

CRA――TOOOOOOOOOOOOM!

巨大カエルは木っ端微塵に爆発四散!
壮絶な爆風が死屍累々の市街地を洗い、四人の魔法少女の背に吹きつける!
いや正確には、二人の魔法少女と、二人の魔法少女少年……だけど。

爆風でなんか色々吹き荒れる中、四人の変身が解けていく。
そして!
「Quoi!?」
驚くギロ……ギヨチーヌさん!

「美少女少年……美少女少年はいないか喃……」
ボクの制服ズボンの股下から突き出す顔!
それは美少女少年禁断症状に陥った五所川原先輩だ!

「あっそうだ☆ ここいらで記念撮影、いっとく?」
ひとみちゃんは何食わぬ顔でスマホを取り出した!
セルフィーの仕草に、ギヨチーヌさんも無言で察した!

ボクの右隣にひとみちゃん、左隣にギヨチーヌさん。
そして股下には五所川原先輩! ほんとに写真撮るのか!?
「はーい♪ それじゃーみんなスマイルスマーイル♡」

荒れ果てた八賀谷市街地を背景に、スマホのカメラが閃く!
パシャリ。
「やだ! やだ! 小生やだ! ギブミー魔法少女少年!」
……いや待てよ、股下の先輩は写ってないんじゃ……??

とまあそんなこんなで、ボクは何とかピンチを乗り越えました。
そうそう、このあと近くの壊れてない喫茶店で打ち上げしたんだけど。
ジャンケンで負けたボクは、四人分のコーヒーを奢らされましたとさ。
まあ、それはまた別の話。

【魔法焼却少女少年⦿大門寺太人  終】


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