伊藤映雪

見習い俳人。 俳句ポスト、俳句生活、俳句道場、おウチde俳句くらぶ、一句一遊、青嵐俳談…

伊藤映雪

見習い俳人。 俳句ポスト、俳句生活、俳句道場、おウチde俳句くらぶ、一句一遊、青嵐俳談などに投句しています。24.04.~南風俳句会 レーベル「麦雨舎」 Twitter→ https://twitter.com/slbzk

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    現代詩手帖に投稿した作品など

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2024俳句(随時更新)

1月 8句 2月 9句 3月 12句 4月 11句

    • NHK俳句5月号「春塵」

      佳作より気になった句 中七下五が魅力的。なかなかこういうことをすらっと書くのは難しい。「塵」が「屑籠」、「春」が「詩のかけら」にそれぞれ呼応している。 「大乳房」と体の部位をピンポイントにした動き方に惹かれる。「駆け出す」という複合動詞と「大」の字が一句に勢いを与えている。 銭湯の隅に置いてある観葉植物を初めは本物の植物と思っていたのが、近づいてみるとプラスチック製だと気づく(①)。更にその偽物の葉っぱを触ったときに葉っぱに積もっている塵に気づく(②)、更にそれを「春の

      • 病床白書

        2024.4.12 入院初日 点滴をつながれてゐる花の冷え 晩春の夜や病室の読書灯 入院や手持ち無沙汰に春夜更く 読書灯消す春雨の音残る 2024.4.13 入院2日目 胃を病みて春あけぼのの木々にほふ 陽炎やわが血管のうすきあを 春の灯のローソン点滴棒を曳き 梅ジャムの重湯を啜る春なりけり 胃カメラの検査を終へて水ようかん 缶コーヒーごとん春昼の病棟 春風や重湯に溶かす塩のつぶ 血管に沁み込む春の夜なりけり テレビジョン消して全き春の闇 病床へ声こぼれくる春の星 2

        • ランダム単語ガチャde俳句②

          「ランダム単語ガチャ」で出てきた10個の単語(レベル1~3)をお題に俳句を作ってみました。 引いた単語は 雪崩 エンドレス メリーゴーランド まつぼっくり(秋の季語) 運転 パジャマ ピンポイント 夏めく 鏡 友人 作った俳句がこちら。 遠雪崩に被爆の耳を欹てり 離れてはまたくつついて飛花落花 夏近しバロック調のカルーセル 思春期の子ののどぼとけ松の花 四月来る若葉マークのマニュアル車 遅き日やパジャマのボタンかけ違ふ 核心に触れるな春の苺パフェ 玻璃皿に緑走れば夏隣

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        記事

          季語「山笑ふ」について

          山笑ふ 三春・地理 傍題 笑ふ山 春の山の明るい感じをいう。◆北宋の画家郭熙の『林泉高致』の一節「春山淡冶にして笑ふが如し」に由来する。 褐色の産毛に蔽われたような早春の山々の木々が、次第に潤みを帯び、春の日に照らされて山そのものが笑みを浮かべているようだという。峻険な山にこの感じはしないが、1000メートル程度までの低い山の姿はまさしくこんな印象。 故郷やどちらを見ても山笑ふ  正岡子規 山笑ふ聴けばきこゆる雨の音  千代田葛彦 安曇野の真中に立てば山笑ふ  藤田湘子

          季語「山笑ふ」について

          ランダム単語ガチャde俳句①

          「ランダム単語ガチャ」で出てきた10個の単語(レベル1~3)をお題に俳句を作ってみました。 引いた単語は 保健室 盲点 エントリーナンバー インフルエンザ(冬の季語) パウンドケーキ 会社 トナカイ 腐女子 スーパースター アライグマ 難しかった「盲点」「腐女子」はテーマとしました。 また、インフルエンザは冬の季語なので「春の風邪」としました。 「カトルカール」は「パウンドケーキ」の別名。 作った俳句がこちら。 保健室で受ける古文や目借時 行く春を捉へてゐたるキリンの

          ランダム単語ガチャde俳句①

          松任谷由実『時のないホテル』with 俳句

          #01 セシルの週末 冬凪や真面目腐ったプロポーズ #02 時のないホテル 戦争の足音そこに冬の鵙 #03 Miss Lonely 戦地から戻れぬ夫や木の葉髪 #04 雨に消えたジョガー 冬雨やランナーのごと死は迫る #05 ためらい ショール脱ぎ昔の恋をこぼしけり #06 よそゆき顔で 凩やマリッジブルーの歩道橋 #07 5cmの向う岸 しぐるるや蚤の夫婦とからかわれ #08 コンパートメント ふるさとを離れ行く汽車や霙降る #09 水の影 ゴンドラの誰も無

          松任谷由実『時のないホテル』with 俳句

          投句記録 夏井いつき/家藤正人の俳句道場

          2023年【鰆】秀作 【若布】佳作 【燕】秀作 【トマト】佳作 【蛸】佳作 【阿波踊】秀作 【相撲】秀作 【鰤】秀作 2024年【文旦】秀作 【牡蠣】秀作 【雛祭】秀作 【桜餅】秀作 【鮎】 【紫陽花】

          投句記録 夏井いつき/家藤正人の俳句道場

          投句記録 俳句生活~よ句もわる句も~

          2023年【春雨】佳作 【蝶】人 【栗の花】佳作 【ビール】人 【河童忌】人 【蜩】人 【水澄む】人 【後の月】人 【山茶花】人 【河豚】人 2024年【寒し】地 【霞】人 【花見】 【蜂】 【?】

          投句記録 俳句生活~よ句もわる句も~

          投句記録 俳句ポスト365

          2019年【罌粟坊主】(旧・並) 2020年【野分】(旧・並) 【狐火】(旧・人) 2021年【花野】類想 【小春】佳作 2022年【芒】並 【立冬】並 【寒卵】並 2023年【鳥雲に入る】並 【花冷】佳作 【野遊】並 【麦の秋】佳作 【蜘蛛】並 【雷】並 【コスモス】佳作 【夜長】並 【新酒】並 【霜】佳作 【セーター】佳作 【蜜柑】並 2024年【余寒】並 【囀】佳作 【山笑う】 【薄暑】 【南風】

          投句記録 俳句ポスト365

          2023年俳句『林檎磨く』

            体操着わざと忘れて初燕 野田牛(べこ)のふぐりに砂(いさご)やませ来る 点字読む人さし指や蝶ほろほろ 客捌けて微熱のドラム花の冷え 鰆食ふ祖父竹取の翁めく ああおれにはおれしかゐない春菊噛む 故郷てふ故郷もなくて木の芽和 麦秋や埴輪の犬は舌を出し 新じやが食ふ生まれた時はみな無職 楽器箱担ぎ朝顔市に入る ほうたるの地軸をふつと逸れけり ハンカチの名のさんずいの消えさうな おれ太宰おまへは中也ビール呑む 海月飼ふことの淋しさ、あかるさよ みづからを鳥と思つてゐる海月 「

          2023年俳句『林檎磨く』

          ボクシング・デイ

          賞味期限を過ぎたおんなは返却されなければならない 十二月も二十六日、 店頭には ケーキたちが すました顔をならべて わたしに視線を投げかける その群れのなかから わたしはショートケーキをひとつ するりと皿に移す 置き去りにされた 無数のわたしが 顔をならべて いる 本日はしんしんと雪の降るなか 素晴らしく病んでいくお日がら ご機嫌いかがですか 返却台は 賞味期限を過ぎた おんなでごった返している 子供が父親にケーキをねだります 父親は拒否します 子供は強情にケーキをねだ

          ボクシング・デイ

          堆積する

          あとかたなく弛緩しては ゆるやかに膨張 九月のしまいに やわらかく結ばれて ほどけて ほどなく帰宅する 呼吸をひとつの歩行として 単一に染められたはしばしが 染まることのないまま なりをひそませている  ひとしれず地層をかさねて  鮮やかに裏切られていく午後 ひとを許せないことを ほこらしく思う 時間がかさぶたとなり 剥がれ落ちるまで 幸せに生きようと思う。 言わない言葉が 喉に降り積もって わたしの輪郭を いっそう濃くする 九月のしまいに 曇天に包まれ 靴紐を堅

          堆積する

          賽の河原

          愛される過程で ばらばらになった わたしの四肢 まっすぐ射抜く その、声 ひび割れたせかいのすきまから 死産した赤子の声が洩れて わたしはもう二度と 孕めないのだと 思い知る やわらかく逸脱した腕で おとこはわたしを捉えた わたしの産声を半径として 形成されたせかいで 二十三歳のおんなは ひたすら泣いた ばらばらになった四肢を 砂浜に集め 火を放った ごうごうと燃えた 海の奥から産声が聞こえる わたしを発端として せかいが揺れて揺れて どうしようもなく ベッドの枠に

          賽の河原

          冷えたトマト

          手首に実っていく 赤い果実を 実るたび 摘みとっては 野菜室にほうりこむ わたし、静脈から 蜜が流れているんです それで、わたし 怖くなって 咄嗟に 夫の名前を叫んだ 夫は 怖いくらい冷静に 大丈夫だよ とささやき わたしの手首を舐めた 夫の熱がつたわって 不覚にも コウフク になってしまった 摘んでも摘んでも 実っていく果実で 野菜室は満たされ 水色の光を跳ね返している なにもかも とりかえしのつかないまま わたしの静脈を媒介として 果実はしずかに育っていく それ

          冷えたトマト

          詩集『越冬』より 5篇

          詩集『越冬』より 「越冬」「コインランドリー」「かたちをなす」「未知の方角へ」「冷凍庫のなかの宇宙」の5篇公開します。 よければ→こちらからお求めください。 越冬わたしの庭に まあたらしい白が 間断なく降りしきって うずたかく 連なる 思考する速度で 言葉、交わって わたしだけのセーターを 編みこんでいく 雪が舞うように 雪虫が飛んで この森のどこか深く シマリスがドングリを運んでいく 埋められたドングリは 掘り起こされないまま 芽が出て あたらしい実をつける木になる

          詩集『越冬』より 5篇