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旧吉田茂邸を訪れて

先日から「このままでは審美性が腐っていく」ということを危惧して、GWということもあり出かけることを決めていた。
とは言っても東京にはあまりそう言ったところは無い。いや、正確にはあるが数ヶ所しかなく、大抵行ったことあるところばかりである。

人によって心躍る場所というのは違うと思うが、そういった意味では私にとって東京など伝統を破壊していく街としか言えないのである。雑多なビル群を見ると常に思う。

もちろん東京はその破壊をする分新たな創造が行われる場所であり、その面では良い場所である。
ただ対人的な刺激を受けるのに相応しい一方、対自然的な刺激を受けるのに非常に向いていない。
そして対自然の刺激を欲していた今の私にとっての行先は東京ではなかったのである。

さてそんな私が向かったのは、神奈川県大磯町にある「旧吉田茂邸」。
日本の内閣制度発足してから過去5度に渡って首相を務めてきた、近代日本の発展を語るにあたって外せない人物であり、今も尚政治家として活動している元首相の麻生太郎氏の実祖父にあたる方である吉田茂氏の邸宅。

帰ってきてから気づいたが奇しくもこの日は4/28、1951年に吉田茂氏が第1次内閣時「サンフランシスコ平和条約」を結んだ日。
つまり戦後日本がGHQからの占有が終わり、主権国家としての独立が認められたということであり、かなり歴史的な一日である。

元々偉人の旧邸宅巡りが好みであり、特に和風な構えに弱い私、訪れてから気づいたのであるが元来から書院造をベースとした建築様式であったらしくかなり良かった。
2009年に原因不明の火事があったとのことで、吉田茂氏の生前使用した時の造りのままではなかったものの、当時の様式を最大限復活させた今の姿は採光がとてつもなく良かった。

そういえば2010年ぐらいに箱根駅伝観戦の際に訪れてた時閉められていたけど、この再建がされていたのかなと今になって感じた。
元々この場所を知っているのも箱根駅伝の現地観戦を神奈川県民の親が連れて来てくれたので、過去の記憶を照らし合わせながら感傷に浸っていた。

築年数的には新しいものの、古き当時の憧憬を思い出させる立地・風土はかなり良かったので、また近くを訪問することがあればふらっと寄ってみたい。

個人的な意見で1つ残念だったのは中庭の質。
下手な舗装がされていたこともあって当時の面影を感じることが出来なかったことに加えて、中庭に降りた時の物足りなさ、と言ったところか。

吉田茂氏が愛した梅の木についてはとんでもなく愛を感じさせ、景色に合う素敵な配置と色彩。これはどの四季に来ても楽しめると感じた一方で、それ以外の松竹の存在と池の様相、舗装がされているところとされていないところがあることの歪さ。
歴史的な場所であり車椅子の方に来てもらいやすいように舗装されているのは理解できるとして、当時の面影を残しつつ舗装された道を作れたのでは?作れずとも部分的に舗装をしない理由はなんなのか?
と正面入口から建物内までの通路以外に美しさの欠けた道があり残念さを覚えた。
梅の木だけ完璧すぎて、物足りない部分が目立ってしまったのが正直な感想。

私は当時の日本を生きたわけでなく、その孫が首相になった時に小学生をしていた人間なので、吉田茂氏の政治家としての側面は歴史で学ぶ中でしか感じとれないが、あれほどまで首相をやってこられた人物であれば邸宅の様子も本人の美学に則った美の結晶が具現化されているかと思ったが、建物内が良かっただけに庭がもう少し良くても、となってしまった。

旅のお土産に吉田財団と大磯町と地元の酒造メーカーが一丸となって作りあげた「決断の聖地」という日本酒を買おうと思ったが、駅前のお土産屋さんに行ったところ売り切れていて、これも悲しかった話である。

最後に邸宅に足を運ぶ前に昼食のため訪れた、駅前にあるお店「茶屋町カフェ」。
こちらのお店で頂いたチリコンカンライスたるものと珈琲が非常に美味しかった。
あとお店の構えがこれまた自分の好みでした。細い路地を通って古民家の中にあるカフェ、店前には青空の元で食べられるテーブル席、その横には陶芸品と本を売るお店。
性癖どストライクと言えば伝わるだろうか。
これまであんま意識来てなかったけど、私はおそらく古民家カフェが好きなんだろう。

大磯町にはもうひとつ島崎藤村氏の邸宅があるということで、まれに神奈川に来ることもあるので機会があれば来たいと思う。

やっぱり一人旅っていいな。

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