お酒、衒示的消費ではなく原始的消費を④

前回は衒示的消費の是非について書いてみました
書いてて思ったのですが、タイトルの「お酒」があんまり内容に含まれていませんね
今回からきちんと内容に絡めてきますので、どうぞよろしくお願いします

さて、注目を集めるための衒示的消費について書いていきたいと思います

注目されることに依存してしまう人たちは、常に人よりも優れていることを証明しようと、誰も持っていないものや限られた一部の人しか持てないものを手に入れようと躍起になります。

それらの商品はなぜ限られた人しか手に入れる事ができないのかというと、流通量が少ないからでしょう。流通が少なくなってしまう理由は様々あると思います。原料が希少だったり、大量に生産する事ができなかったり、記念品だったりですね

流通が少ないので正規のルートで手に入れる事が難しい。つまり一般的な販売店で定価で買うことが難しいという事です。しかしそれらを手に入れて、何とか注目を集めたい、人より優れていることを証明したい。いやしなければならない!と注目依存症の人たちは追い詰められます。そうなった時に取る行動は、非正規ルート。転売品などに手を出すことです。転売そのものの是非については非常に難しい問題ですが、私は希少品の転売に関しては断固として反対しています。その話は一度置いておいて、転売品は基本的に定価よりも高い値段で出品されています。そうしないといわゆる転売ヤーは儲けが出ませんからね。意味がないのです。

定価で5,000円で販売されているものと、それを転売で10,000円で販売されているもの

どちらの方が商品価値があると思いますか?

価値は同じですよね。同じものなのだから。

ところが注目依存症の人たちは、10,000円を出してでも購入するのです
それを知り合いに話したり、ネット上で報告をするのです
転売価格で買ったことを正直に話す人もいれば、伏せる人もいます

ここ数年ではジャパニーズウイスキーブームにより、国産のシングルモルトウイスキーが転売の餌食となっていますね
転売されている物の中でもウイスキーを始めとしたスピリッツ、ハードリカーは衒示的消費商品としての気質が非常に強いと私は考えております。理由としてはお酒というものがまず20歳を迎えないと買うことも飲むことも叶わない物だという、ある意味その時点で「手に入れにくさ」がある事と、紳士淑女が嗜むオーセンティックな嗜好品だというイメージが多くの人の中にある事だと思います。

現在SNSでは「プレミアムウイスキー」などと称される国産シングルモルトの購入報告の投稿で溢れています。その人らは手に入れたことを喜んでいるのでしょうか?
一見するとそうなのかもしれませんが、私からすればわざわざSNSに投稿するという時点で、注目されることが目的に見えるのです。もちろんSNSは様々な人との繋がりがあり、喜びを共有したいという麗しい理由があるかもしれません。ですがウイスキーを購入するだけで尊敬を集めていると錯覚に陥り、自尊心や承認欲求が満たされるのですから、そのような投稿をする人たちの自分でも気づいていないかもしれない真の理由は、瓶の中身の液体を味わうことではなく、プレミアムウイスキーを購入できる数少ない人間だという勘違いにより自尊心を満たす事なのでしょう

ウイスキーに興味がある注目依存症の人はそれを賞賛し、羨望の眼差しを向け、自分もそうなるべく勘違いを続ける事でしょう。ウイスキーにあまり興味のない人はそれらの投稿や話題に触れると、その勘違いが真実だと勘違いし、いつの日かその人がウイスキーに興味を持った時は、その勘違いが萌芽する事でしょう

そしてその注目依存症の人々を満足させる事ができるのは、転売屋が出品している転売品なのです。現状では定価で買えることの方が稀で、流通が少ないタイミングで手に入れる方が注目の度合いが高まるため、むしろ依存症の人たちにとっては出費は痛くとも、心がより満たされるのです

この負の連鎖により悪質な転売行為が終わることはないのですが、実は私が一番問題視しているのは転売屋と呼ばれる転売行為をする人々が、商品を購入する為ならありとあらゆる手を使う、犯罪に近い行為をするということです
何よりも、酒販店でアルバイトをしている人たちが脅迫され恐怖する日々が続いている現状が私は許せないのです

私は酒販店で社員として勤めていた事がありました。現在も酒販店で勤めてはいますが、非正規雇用で働いています
社員として働いている以上は、会社の利益のためにそういった転売目的での来客も、ある程度目を瞑らなければなりませんでした。もちろん様々な対策はしていましたが、それも限度がありました。管理者である社員が悪質な転売屋に脅迫されるのはまだ我慢できますし、我慢ができなくても対処のしようがあります
しかし、そこでアルバイトをしている人たちはどうでしょう。社員に頼るしかないのです。毅然とした態度で適切な対応が出来れば良いですが、邪悪な心を持った連中はアルバイトなど立場が弱い人を狙って脅迫をします。大きな声で一方的に喋り、萎縮させます。すぐに社員を呼び対処をするのですが、そんな事が毎月続いたら自分で対応しているわけでなくとも心が疲弊してしまいます。酒販店にアルバイトの応募をしてくれる人は、やはりお酒が好きで、興味を持って来てくれる人が多いです。転売屋によって、そのウイスキーが嫌いになってしまった人もたくさん見て来ました。だから私は利益の為に諦めないといけない事が多すぎる現状に嫌気がさし、正規雇用から降りたのです。

こんな事が続いていい訳がないのです。しかし注目されたいがために転売品を買う人がいる以上、この史上最悪の負の連鎖は永遠に繰り返される事でしょう。

衒示的消費は悪いことではありません
創りたい物を自由に創れる時代です
自分を自由に表現できる時代です

ですが、その自由のために誰かが搾取されることは絶対に許してはいけません

私はこの自由のための搾取を少しでも減らしていく為に、出来るだけの事を、人生を賭けて実行していきたいと思っています

次回はまとめになるでしょうか
頑張って書いてみますね
よろしくお願いいたします

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?