さあ、始めよう。

母が、年を取っている。そのやせた姿、増えた皺、薄くなった髪を、俺は見ないようにしてきた。親の老いと向き合うのが怖かったからだ。そうも言ってられない、と感じたのは、母が薬の数を間違えて飲んだり、「胃が痛い」と言って夜救急外来に駆け込んだこと、翌日再度病院に出向いて、散々待たされたにも関わらず、文句ひとつ言わずに待っていた。挙句、10時予約のはずが返ってきたのは18時。不必要なありとあらゆる検査を受けさせられたらしい。「一人のおばあちゃん」なんではないか

いつか、当たり前を失うのが、想像すると恐ろしくてたまらない。今生きていること、家族がいること、友人がいること、ただ生きている事。それ以上に大切なことなんて本当はない。だから、やりたいことがなんだ。

思いやりや人への気遣いができずにやりたいことがなんだっていうんだ。

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