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クサくたっていいじゃない

映画ダンスウィズミーを観た。
端的に感想を言うと最高だった。

この作品…というよりこの映画を監督した矢口史靖監督に私自身、思い入れがかなりあるので色々と感想なり思い出なり書いていこうと思う。

ここからダンスウィズミーのネタバレ注意!


注意!

注意

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主人公はミュージカル嫌いのエリート会社員の静香。あるとき姪っ子の世話を押し付けられ、偶然拾ったテーマパークのチケットを使って催眠術小屋を訪れる。そこで姪っ子のリクエストで「音楽を聴くと歌って踊ってしまう」という催眠をやってもらうが、偶然が重なって静香がガッツリかかってしまう。催眠術師のじいさんは夜逃げし、静香は催眠を解いてもらうために日本中を回る珍道中をすることになる…

というあらすじである。

映画を見終わって最初に思ったのが「やしろ優さん最高」。激ハマり役。出演者みんなオーディションで決めるらしいけど、ピッタリ。

やしろ優さんの役は、最初の催眠術の小屋でのサクラ役。催眠術にかかったふりをして美味しそうにタマネギを齧る。サクラ分の給料未払いのため、催眠術師のじいさんをボロ車で静香と追いかけることになる。しかし静香は色々あって全財産を失っている。でもじいさんを追いかけるためには諸々のお金が必要。現実だったら諦めるのだが、やしろ優さん(の演じる役は)は違う。行動力とポジティブさでどんどん状況を動かして行く。そのおかげでじいさんに近づいていくのだが、同時にトラブルも起こす。とにかくだらしないし、すぐ調子に乗るし、男性にちょっと声かけられるとすぐ油断する。静香も愛想をつかすほど。でも憎めない。静香と一緒に歌って踊るシーンの全力な姿や、純粋な笑顔を見ているとしょうがないなぁと言うしかなくなる。そういう愛嬌がやしろ優さんにはある。エンドロールの時、本当に愛おしい気持ちでいっぱいになった。


あと映像に関して、色味がきれいだなと思った。
矢口史靖監督の映像ってほんの少し赤みがかってる感じしませんか?
あの感じで田舎の風景写すと、夏っぽくて昔の夏休みを思い出すような懐かしさを感じる。あの色味がとにかく大好き。どんなカメラで撮っているんだろう。


最後に強く書いておきたいのは、矢口史靖監督が描く「偶然」のことである。ウォーターボーイズや、スイングガールズ、そして今作のダンスウィズミー全て偶然が多いと思う。静香がチケット拾ったのも、催眠術かかったのも、物語のラストまで偶然がぎっしりである。人によっては「リアリティーがない」と思うだろう。なんなら歌って踊ってボロ車で日本中をめぐるなんて「クサイ」かもしれない。でも私はとんでもない偶然を笑って、驚いて、心動かされるのを楽しむのがこの矢口監督の映画の醍醐味だと思う。クサくたっていいじゃない。

実際、NHKのSwitch達人たちという番組で芸人の鉄拳さんと対談した時、

「初期の方は『監督はここだ!』っていうような攻めた作品ばかり作っていたんですけど、ウォーターボーイズを作ったあたりから『(普段映画を見ない人にも)開かれた映画を作るってなんて楽しいんだろう!』と思うようになった。今では観客の表情を見に自分の作品を映画館に観に行ってる」

と言ったことを話していた。

もちろん映画においてリアリティーも時には必要だけど、矢口史靖監督の開かれた映画を観て、とんでもない偶然を楽しむのも良いんじゃない?