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赤いママチャリの話

大学1年生のとき自転車が必要で

赤いママチャリを買った

牛丼屋の前に止めていたらいなくなった

鍵はわたしの手元にあるのに

安いママチャリはすぐにいなくなった

新しい自転車は水色だった

社会人になって自転車に乗らなくなった

気づけばサドルには砂埃が積もっていた

あるひ遠くの警察から電話がきた

赤いママチャリが見つかったらしい

そういえば遺失届を書いたっけ

随分と長い間旅をしていたのだね

鍵をなくしたわたしは引き取ることなく

処分許可の署名をするためだけに

訪れたことのない遠くの地の警察に行った

盗んだ人に文句の一つも言えなかったけど

もはや文句すらも出てこない

こんなに長く乗ってくれてどうもね

と、なんだか変な気持ちになった



赤いママチャリはわたしに大切にされないと

分かっていたのかもしれない

水色の自転車も駐輪場で鍵をかけられ

待っている

埃を被ってその時を今か今かと待っている

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