赤いママチャリの話
大学1年生のとき自転車が必要で
赤いママチャリを買った
牛丼屋の前に止めていたらいなくなった
鍵はわたしの手元にあるのに
安いママチャリはすぐにいなくなった
新しい自転車は水色だった
*
社会人になって自転車に乗らなくなった
気づけばサドルには砂埃が積もっていた
*
あるひ遠くの警察から電話がきた
赤いママチャリが見つかったらしい
そういえば遺失届を書いたっけ
随分と長い間旅をしていたのだね
鍵をなくしたわたしは引き取ることなく
処分許可の署名をするためだけに
訪れたことのない遠くの地の警察に行った
盗んだ人に文句の一つも言えなかったけど
もはや文句すらも出てこない
こんなに長く乗ってくれてどうもね
と、なんだか変な気持ちになった
*
赤いママチャリはわたしに大切にされないと
分かっていたのかもしれない
水色の自転車も駐輪場で鍵をかけられ
待っている
埃を被ってその時を今か今かと待っている
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