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大ボスの存在感、「We」の価値観

二人の記者が必死で
真相に近づこうとしている。
通常、大手メディアの記者には
ボス(上司)が沢山いる。
まずはキャップやデスク、
その上に部長、さらに編集局次長、
そして、編集局長。
その上に、社運に関わることなら
最後の難関、編集主幹、主筆だ。

この二人の記者、
ウッドワードとバーンスタインは、
明日の紙面に用意した、
大スクープの裏取りに必死になっている。
彼らは、主幹の動きをじっと見ている。
その主幹は編集局フロアをのそのそと歩き、
各部長や記者たちに声をかけたり、
相談に乗ったりしている。

二人は主幹が帰ってしまうのを
懸念しているのだ。
あと一本の電話がかかってくれば
裏取りが完了する。
でも締め切り時間も間際に迫っている。
緊張の時間が流れる。
その主幹の名は、ベン・ブラッドリー、
ワシントンポストの名物ジャーナリスト。

このシーンは、
1976年の映画「大統領の陰謀」の一幕。
ピューリッツァー賞受賞の実話で、
ウッドワード役はロバート・レッドフォード、
バーンスタインはダスティン・ホフマン、
主幹のベンは名優ジェーソン・ロバーツ。

ベンは大ボス。
報道機関の最後の砦、守護神。
ウォーターゲート事件の裏幕、
不正の真相に近づく二人を
鋭く厳しい眼光で励ます。
口癖は「裏取りが足りないぞ!」。

明朝刊の締め切り時間のぎりぎりに
バーンスタインが何とか裏取りに成功、
彼は編集局フロアに響き亘る声で
相棒であるウッドワードに叫ぶ
ウッドワード!やったぞ!!
(Woodward!! WeGot It.)

この「We」が大切で、俺達の手柄の意。
二人、そして彼らを応援した上司の喜び。

そして帰ろうとエレベーターに
乗り込んだベンに裏取り完了を報告する。
ベンは言う
出せ!(We Go With It.)」。

ここでの「We」も極めて重要。
万が一、大誤報となっても、
俺は主幹として、
お前らを絶対に見捨てない、の意。

二人は事件を必死で追うので、
客観性に欠ける場合がある。
どんな仕事でも、とかく担当者は
目の前の処理に追われ
どこか俯瞰した考えが足りなくなるもの。
それを補い、客観性を担保し、
励まし、経験を促し、成長させるのが
ボスの仕事だ。
ジェーソン・ロバーツ演じるベンは、
少ない言葉かつ圧倒的な存在感で
それを示す。「We」の重さも。

2017年の映画「ペンタゴン・ペーパーズ
最高機密文書」では、
このベンをトム・ハンクスが好演。
そこでのベンは雄弁で、
正義感とスクープに燃える迫力がある。
本作ではワシントンポスト社主の
キャサリンをメリル・ストリープが好演。
僕は映画館で観て、Blu-rayで何回も堪能、
常々勇気を頂戴している。
45年前の名作「大統領の陰謀」と同様に。

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