乾ききる前に

 髪の毛を自然乾燥させるのは良くない。と分かっていながら、ついついリビングの座椅子に腰を下ろしてしまう。スマホを触ったり、YouTubeを見たり、今なんて濡れ髪のままでnoteを書いている。
 髪の毛が乾ききる前に、なんとか書き終えたいと思う。

「先に済ませちゃえばいいのに」
「ついでにちょっとやるだけでいいのに」
そういうことの方が手に付かない癖がある。部屋にいくついでに畳んだ洗濯物を持っていけばいいのに。明日の準備を今のうちにしておけばいいのに。ちょっとまとめるだけなんだからさっさとゴミを出しちゃえばいいのに。
 中途半端に放っておくことに気持ちの悪さを覚えない、そんな自分の人間性を、ダメだなあと思いつつも、実はちょっとありがたいと思う。
 全てが整然としていない、やりかけで溢れた空間でただ過ごす。ここに背徳感や贅沢さを感じられるのは周りの環境が豊かなことの証明でもあるような気がする。やりかけをやりかけのまましばらく置いておける。必要以上に必要に駆られないでいられる。洗濯物はしまわなくたって次の日にそこから取って着てしまえばいいし、ゴミは溜まってきたらまとめて出せばいい。それで時々思い立って服を全部しまって、買ってきて置きっぱなしだった本を片付けたりすると、部屋が綺麗になった達成感に浸ることもできる。
 心に余裕がない時、きっと出しっぱなしの服や洗っていないお皿を見たら「なんでこんな基本的なこともやってないんだ俺は!」とか「ああ、余裕ないのに、服もお皿もやらないと...」とか、必要以上にイライラしたり落ち込んでしまう。やりっぱなしをそのままに出来ている自分に、心の安定を見る。気まぐれていられる環境に、感謝を。

 とは言ってもただダラダラと生きているわけにもいかない。あえて自分にストレスをかけないといけない場面もあって、そういう時にいかにそういう脳みそに切り替えられるかが大事。
 今がまさにそういう時で、6月に上演予定のバー公演で初めての脚本・演出に挑戦中。一緒にやってくれてる人と決めた、締め切りがある。ちなみに全然手についてない。ちょこちょこ決めないといけないこともあって、色んな人と連絡を取り合っている。ものすごーく小規模だけど、公演を作るって大変なんだなあと実感。
 今まさに別現場の稽古に参加中ということもあって、時間を効率よく使わないとどっちの準備や作業もおざなりになってしまうから、ここは精神的にもカツカツ動いて行かないといけない。半端にやるのが1番よくない時期。

 そんなちょっと余裕ない時期に、あえて半端に髪が濡れた状態でリビングに腰を下ろしてゆったりと書き進めてみた。意外といい息抜きになったので、やりっぱなしを享受するのはやっぱりとても気持ちいいと実感。このキッカケをくれた、4ヶ月前に定期更新を始めた自分に、感謝を。

 生乾きよりちょっと乾いたくらいの触ると冷たい髪の毛を、今からちゃんとドライヤーで乾かして、今日はもう寝る。おやすみなさい。

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