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イージーリスニングとそのオリジナル

easy listening



 イージーリスニングって、ご存知ですか?

 最近、K-POP界隈でも、”イージーリスニング” という言葉を聞くことがあります。
 「聴きやすさ」や「心地よさ」を表した言葉なんでしょうが、なんか懐かしい響きなんですよね、とっても!

 実際、私が子どもだった70年代の頃は ”イージーリスニング” って音楽ジャンルが普通だった時代で、いろんなとこで流れてたんですよね。
 オーケストラによる演奏も多かったと思うのですが、クラシックとは違って、その名の通り ”気軽” に聴けるBGM的な音楽なんです。

 そんな ”イージーリスニング” ですから、曲自体の方も堅苦しいものではなく、当時流行してたポップスをカバーしたものもいっぱいあったんです。

 たとえば、 ”イージーリスニング” 界の巨匠のひとり、ポール・モーリアの初期の名作「恋はみずいろ」も、元はといえば、ヨーロッパを中心に活躍したアイドルシンガー:ヴィッキーが1967年にリリースした曲がオリジナルなんです。

「恋はみずいろ」1968


<原曲>
「恋はみずいろ (L'amour Est Bleu)」1967
 
唄:ヴィッキー


 ただ、自分の場合、”イージーリスニング” に、ポップスのカバーも多いことは知っていても、原曲の方はあんまり聴いたことなかったりするんですよね、世代的に…

 そんなことに気がつくと、なんか他の曲が気になってくるもので、今回は、懐かしい ”イージーリスニング” の名曲と共に、その原曲オリジナルについて "note" していきたいと思います。


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 60年代から70年代にかけて、日本でも大人気だった ”イージーリスニング” なんですが、個人的に印象的だった音楽家、レイモン・ルフェーブルフランク・プゥルセル、そしてポール・モーリアの3人を紹介していきます。


◆ レイモン・ルフェーブル ◆

Raymond Lefèvre  1929.11.20 - 2008.6.27

【レイモン・ルフェーブル】
 フランスの編曲家、作曲家、ピアニスト。
 イージーリスニング界の第一人者として知られている。

「涙のカノン(パッヘルベル)」

 レイモン・ルフェーブルは、「涙のカノン」みたいに、クラシックをイージー・リスニング風にアレンジした曲で知られてるんですが、他にも数々のフレンチ・ポップスをカバーしている音楽家です。
 その中でのヒット曲といえば、やはり「シバの女王」が有名です。
 多分、レイモン・ルフェーブルという名前を知らなくても、この「シバの女王」は聴いたことがあるんじゃないかと思うんですよね。

「シバの女王」1969

  ”イージーリスニング” 界の名曲としてヒットした曲で、その後、スタンダード曲となって、ポール・モーリアをはじめ、いろんな音楽家が演奏しています。

 原曲は、ミシェル・ローランというフランスのシンガーが1967年にリリースしたシャンソンの楽曲になります。

<原曲>
「サバの女王(Ma Reine de Saba)」1967
 
唄:ミッシェル・ローラン

 ちなみに "シバ" と "サバ" の音の違いは、英語を元にすると "シバ"、仏語を元にすると "サバ" になるようです。
 ”イージーリスニング” 版の「シバの女王」は日本でもヒットしたので、その勢いに乗って、元祖ミッシェル・ローランの歌も日本語版がリリースされています!

「サバの女王(日本語版)」1969
 唄:ミッシェル・ローラン
 日本語詞:なかにし礼

 日本語はたどたどしいですが、甘い声ですよね。
 でも、途中の歌詞、”愛の奴隷~♪” が昭和(なかにし節)を感じさせますね。

 
 さて、レイモン・ルフェーブルのヒット曲をもう1曲…

「とどかぬ愛」1970

 レイモン・ルフェーブルは、こういう甘くて切ないアレンジが秀逸なんですよね~
 「アイ ラブ ユー」っていうよりも、思いっきり「ジュ、デェ~ム」って感じなんです。(←なんだよそれ)

 原曲は、シルヴィ・ヴァルタンの元旦那で知られる、フランスのロックシンガー:ジョニー・アリディのヒット曲です。

<原曲>
「Que Je t'aime」1967
 
唄:ジョニー・アリディ 

 いや~、ジョニー・アリディの原曲の方は、一層、情熱的です!

 そして、この曲も ”イージーリスニング” 版がヒットしたことを受けて、日本語版がリリースされていました。

「とどかぬ愛( en japonais )」1973
 
唄:ジョニー・アリディ
 日本語詞:千家和也

 絶唱系です!
 この曲をさらに日本でカバーしてるのが、あの西城秀樹さんだったりします。
 とってもハマってるので、皆さんも、ぜひ検索してみてください!



◆ フランク・プゥルセル ◆

Franck Pourcel、1913.8.11 - 2000.11.12

【フランク・プゥルセル】
 フランスの編曲家、作曲家。
 1950年代半ば頃から活躍し、イージーリスニング界のリーダーの一人と呼ばれる。

 次に紹介するのは、3人の中で、最も早い時期から活躍してるフランク・プゥルセルです。
 この方の作品は、ストリングスが印象的な曲が多くて、古き良き時代を感じさせるんですよね~
 アメリカンポップスのカバーもあって、全米チャートを賑わせることも多かったんです。
 ということで、まず、王道のアメリカンポップスのカバーから紹介します。

「オンリー・ユー」1959

 オールディーズの名曲「オンリー・ユー」のカバーなんですが、こちらは原曲もポピュラーですよね。
 歌ってたのは、アメリカのコーラスグループ:プラターズで、1955年にリリースした曲なんです。

<原曲>
「オンリー・ユー」1955
 
唄:プラターズ

 やっぱ名曲ですよね~
 でも、フランク・プゥルセルのインストゥルメンタル版もすごく有名で、いろんな場面で流れてたと思います。

 また、「オンリー・ユー」と同じく、アメリカン・ポップスのど真ん中の「ミスター・ロンリー」をカバーした曲も、私世代にとって忘れることのない名曲なんです。


「ミスター・ロンリー」1967

 多分、私と同じくラジオが好きだった人なら、
皆様の、夜間飛行のお供を致しますパイロットは、わたくし、城 達也です。」というあのナレーションが聞こえてくるのではないでしょうか?
 この曲はラジオ番組「JET STREAM」のオープニングに流れる曲なのです。(ちなみにエンディングの方はレイモン・ルフェーブルの「夜間飛行」という曲が使われていました。)

 この曲の原曲は、数々の全米No1ヒットを持つシンガー:ボビー・ヴィントンが1964年にリリースした曲です。

<原曲>
「ミスター・ロンリー」1964
 
唄:ボビー・ヴィントン


    アメリカンポップスをプゥルセルがカバーした曲はほんと素敵なんですが、他の国のポップスもカバーしてるんで、もう一曲、1972年に日本ドラマの主題歌に使われた曲を紹介します。

「アドロ」1972

 なんか渋めな感じでしょ。
 この曲はメキシコのシンガーソングライターであるアルマンド・マンサネーロが1967年にリリースした曲のカバーなんです。

<原曲>
「アドロ」1967
 
唄:アルマンド・マンサネーロ


 日本では、むしろ、グラシェラ・スサーナのカバーの方が有名かもしれませんね。
    なんか日本人の琴線にも触れる部分がある名曲なんです。

「アドロ」グラシェラ・スサーナ 1973
 
作詞:毬まどか




◆ ポール・モーリア ◆

Paul Julien André Mauriat, 1925.3.4 - 2006.11.3

【ポール・モーリア】
 フランスの作曲家、編曲家、ピアニスト。
 「ラブサウンドの王様」と呼ばれ、日本でも特に人気となった。

 最後に、再度紹介するのは、私たち世代にとって ”イージーリスニング” といえばこの人、ポール・モーリアです。
 今でも心に残る数々の名品を残しています。
    冒頭で紹介した「恋はみずいろ」に加えて、その名品の中から紹介していきます。


「エーゲ海の真珠」1970

 「エーゲ海の真珠」という邦題が付けられた、ポール・モーリアの代表作のひとつです。
 間のスキャットがロマンティックな一曲なんですよね。
 この曲は、スペインのシンガー:ジョアン・マヌエル・セラットの1969年の「Penelope」という曲です。

<原曲>
「Penelope」1969
 
唄:ジョアン・マヌエル・セラット

 セラットの歌声もいいんですよね~、どこか地中海を感じるのです。
 ポール・モーリアは、この「Penelope」に "L'eternel Retour" という副題を付けています。

 
 次の曲は、ロマンティックな曲調の多いモーリアには珍しい軽快な曲です。

「口笛の鳴る丘」1970

 テンポ良く軽快に、様々な楽器が奏でられる曲で、とっても楽しい曲なんですよね。
 この曲はフランスで活躍していたシンガーソングライターのジョー・ダッサンが1069年に発表した「野ばらのひと」が原曲です。

<原曲>
「野ばらのひと Siffler sur la colline」1969
 
唄:ジョー・ダッサン

 ジョー・ダッサンの見た目はワイルドですが、まさにフレンチポップス!って感じで心地のいい曲ですね!
 邦題では「野ばらのひと」なんですが原題は ”Siffler sur la colline” なんで、モーリア版の「口笛の鳴る丘」の方が正しい感じです。


 さて、次も名曲です。

「涙のトッカータ」1973

 細かな音形の流れが特徴の ”トッカータ” というタイトル通り、流れるように奏でられるピアノのメロディが印象的な一曲です。
 実は、この曲はポップスのカバーではなく、フランスの音楽家:ガストン・ローランの曲をカバーしたものです。

<原曲>
「Toccata」1950
 
作曲:ガストン・ローラン

 "Toccata" ですから、原曲はイタリア式の意匠が感じられますが、ポール・モーリア版は優雅さを感じます。
 自身がピアノを弾くことも多かったと言われる「涙のトッカータ」なんで、愛着のある曲なんだと思います。


   さて、最後は、ポール・モーリアといえばこの曲、あの手品のBGM曲でお馴染み「オリーブの首飾り」です。

「オリーブの首飾り」1975

    流れるように、テンポのよい曲なんですが、原曲の方は、ビンボー・ジェットというグループが1974年にリリースしたディスコソングなんです。

<原曲>
「嘆きのビンボー」1974
 
唄:ビンボー・ジェット

    グループ名からの連想なのか、「嘆きのビンボー」って邦題だったとこに時代を感じますね。
    ただ、ポール・モーリア版の「オリーブの首飾り」はヒットして、その後、さらに日本のシンガーもカバーしたりしてます。

「オリーブの首飾り」田中星児 1976
 
訳詞:武田全弘


「ゆうわく」ローレン中野&和田弘とマヒナスターズ 1976
 
日本語詞:なかにし礼

 1976年にカバーされた2曲、田中星児さんのバージョンはポール・モーリア版を下敷きにした感じなのに対して、ローレン中野さんのバージョンは原曲をイメージしてるのか、妙なグルーブ感のある感じで、すごく気に入ってしまいました。
 色っぽい内容の昭和歌謡(さすがのなかにし礼作詞です。)なんで、ディスコソングというよりもナイトクラブソングって雰囲気なんですが、マヒナ・スターズのコーラスが素敵すぎるのです。

    そして、80年代の終わりにも、新たな「オリーブの首飾り」がリリースされてます!

「オリーブの首飾り」石井明美  1989

 なんか、すごいですよね…
 時代を越えた名曲って感じですが、そうなったのはポール・モーリア版の影響が大きいと思うのです。


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 個人的にイージーリスニング界の巨匠と思う3人の名曲と、その原曲を紹介しました。
 イージーリスニング化されると洗練されて、とても聴きやすくなっているのですが、原曲は原曲で味わいがありますよね~、私的にはとても満足でした。
    その後の日本でのカバー曲も含めて楽しんでもらえていれば幸いなのです。

    もちろん、3人の巨匠さんたちは、それぞれ作曲家でもあるので、自作曲もたくさんあることはお忘れなくお願いします。

(このポール・モーリアの自作曲なんかも名品です)


蒼いノクターン」1969



(ポール・モーリア関係note)