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新春企画!一般入試が終わった世界を考えてみた(1)【一般入試最後の日】

能登半島地震で、被災された皆様のご無事をお祈り申し上げます。

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新しい1年。

それは、総合型選抜入試が主流になる夜明けの1年になるのかなと私自身は感じています。

なので、一般入試が廃止された未来を予測してみました。一般入試が廃止されると何が起こるのか。ちょっとした思考実験です。あくまで、個人の楽しみで書いていますので、それは、ご了承くださいね(^^)

今回は新聞記事風で書いてみました。

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20××年。
東京大学と京都大学で最後の一般入試が行われた。

すでに東大文科、教養学部、京大文系学部は一般入試が廃止されており、最後まで実施されたのは、理系学部のみ。入試科目は、英語リーディング&ライティング&リスニング、数学、理科(物理、化学、生物すべて必須)、面接(英語による自由課題のプレゼンテーション)、医学部医学科では、臨床医志望者については、適性試験が実施された。ちなみに東京大学の場合は、来年度から学部ごとの入試になる。そのため進学振り分け制度の最後の入学生となる。

一般入試が創造的な能力育成を棄損しているとして、文科省は、12年前に国公立大学に段階的に廃止するように通達。これは、15年前に一般入試を廃止した東北大学において、一般入試廃止による問題点が確認できなかったとの報告書に基づく措置となっている。

東京大学の教育学部のある教授は、「学びの機会平等において、一般入試が果たした役割は大きかったが、時代の流れには逆らえない」と話す。
一方で、私立大の関係者は「国立大学の一般入試の完全廃止を受け、学生の早期確保の手段を考えないといけない」と危機感を募らせる。

一般入試廃止の混乱を避けるため、文科省はさまざまな手を打ってきた。そのひとつが学力低下の懸念を払拭するために実施された高校での進級認定の厳格化だ。細かなガイドラインを策定し、高校には学習時に基礎学力が一定水準に達することを求めている。

すでに、各高校で実施されている定期テストは、各都道府県の教育委員会に設けられた専門部会に提出が求められ、AIによって自動解析されている。不備があった場合は、再テストとなるため、高校の教員はテスト作成に神経を使う。学校によっては、専門の教員を配置するほどだ。

さらに、進級に際して、生徒の成績を科目ごとにA~Fランク分けすることが義務化された。これが基礎学力の保証と指標とされることになり、各大学は、受験生の学習到達度を参考にできる。また、受け入れる生徒のランクを自由に選択できる。

首都圏のある私立大の関係者は、
「D以下の学生を受け入れることは、イメージが悪くなるが、厳しく絞りすぎると受験生が来ず経営を直撃する」とする意見があり、社会の反応も
「かつてあったFラン大の復活だ」
と否定的な声も聞かれる。

東京大学はすべてのランクの受験生が出願可としているが、
「東大だからそんなことができる。Bランクの生徒が受かることはない。うちとは事情が違いすぎる」と地方私立大の教授は受け入れランクの選定に苦慮する。

ある高校の教員は、一般入試が廃止されたのではなく、高校の定期テストがその代用手段になっただけではと声をひそめて話す。

今後の大学入試は来年度から実質的に総合型選抜入試を衣替えした、大学教育資格認定試験(資格認定試験)に統一される。文科省の幹部は、これでケンブリッジ大やハーバード大、アイビーリーグ、スタンフォード大などの欧米の一流大学と肩を並べられる入試制度になったと胸を張る。

資格認定試験では、現行の総合型選抜入試で高く評価されている創造的提案力を高めることが、合否のカギを握ることが指摘されている。そのための対策は必須で、総合型選抜入試専門予備校の講師は、「この創造型提案力(通称CPスコア、Creative proposal score)を高めることが受験生の間で熾烈な競争となっている」という。

だが、実は「やり方次第」と明かす。
「そもそも総合型選抜入試では、恣意的な要素が入る余地があり、問題点が指摘されていたが、事実上それは無視されている」という。その証拠に有力政財界の子息・息女が東京大学の文系学部に次々に合格している現実があるという。

高校1~2年で必死に詰め込み教育を受け、3年ではボランティア活動や職場体験などを積む「ソーシャル活動ツーリング」や大学での教育目的を開拓するための「創造型思考力向上ワークショップ」へ参加し、CPスコアアップを目指すことが高校生の受験活動の主流になると見込まれる。いずれも高額の費用が問題となっているが、富裕層の保護者の間では、「必要な投資で、これで有利になるなら安いくらい」と好意的に受け取られている。

海外の大学の出身者からは、現時点でもすでに海外の有力大学の入学試験との乖離があり、日本独自のガラパゴス入試ではないかと指摘する声が聞こえてくる。また、海外留学の経験が有利にはたらくことは、すでに一部で指摘されている。

さらに国内での格差も顕在化している。文科省が公表したCPスコアの平均値が都市と地方では20ポイント以上広がっている。ある地方の富裕層の男性は、「どう考えても東京などの都会の受験生が有利な仕組みだ。すでに二人の子供を東京の私立中学へ進学させるために都内にマンションを購入した。来春、長女の進学に合わせて妻と一緒に転居させる予定。逆単身赴任ですよ」とこぼす。

ある地方の高校教員は、「エリートを養成する大学は、どんどんハイレベル、ハイクオリティの入試をやればいい。地方の大学は従来の一般入試で十分。創造的な仕事ができることも大事だが、実務も淡々とこなせる人材も社会には必要。この国は、極端に振れすぎるのではないか」と警鐘を鳴らす。

文科省事務方トップの佐藤太郎事務次官は、「さまざまなご意見があるのは承知している。しかし、一般入試を廃止するという決断が教育のしがらみを打破することになると信じている。過去の遺物となった知識偏重、偏差値主義の一般入試を大学教育は乗り越えないといけない」と力を込める。

さまざま思惑や問題を抱えながら、日本の大学入試は新しい時代を迎える。これが良い方向に行くかどうかは、未知数であるが、G7からの自主的辞退に追い込まれた我が国の再興の切り札になることが期待されている。

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これまで、幾度となく、現行のペーパーテストによる入試(一般入試)の問題点は指摘されてきました。
その一方で、具体的な変更への動きは、遅々として進まず、現在に至るという状況になっている。

しかし、今度ばかりは、現状変更へ動くと見ています。

理由は、「少子化」と「国力の衰退」です。

その原因を一般入試に求めることは、いろんな面で都合がいいのでしょう。

その結果、何が起こるのか。

それは教科別の教育の価値の低減だろうと思います。次回はその点について書いてみます。





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