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入試の現場から見える、旧AO、旧推薦入試の風景(6)

私は、旧AO入試(総合型選抜)、旧推薦入試(学校推薦型選抜)への疑問を持っています。それは、私の体験によるところが大きいです。

そのような考えに至った私の体験を書いています。今回はその6回目です。

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本記事は、以下の前提で書いております。予めご理解いただけるとありがたいです。
・非一般入試を選択する受験生を批判している訳ではないこと。
・総合型選抜、学校推薦型選抜入試をサポートされている先生方を批判している訳ではないこと。
・この入試選抜方法について、継続して検証されている大学の先生方を非難している訳ではないこと。
・この入試制度が過渡期であること理解していること。
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前回は、私が塾講師に転じてから出会った、九州大学共創学部を目指すX君について書いています。一般入試を主、AO入試を副という位置付けで準備をしていていたX君。夏期講習では、数学の講座を受けないという選択をします。

私が勤務する塾には、小論文の先生がおられます。この方は、とても優秀な先生で、公立高校の教員の頃は、時代に先駆けてAO入試の指導をされておられた方です。多くの実績をもっておられました。

X君にとって、その先生に、ぜひ指導を受けたいという気持ちになるのは、ある意味当然のことだと思いました。

ただ、その一方で数学の講座を取らないことには、一抹の不安もありました。並行して勉強することに問題はないからです。

ただ、お金が絡むこともあり、強くは勧めにくく、彼の判断を尊重することで、落着しました。
私は、数学は自学で進めておくようにとアドバイスしていました。

そして、秋になりました。すると、塾長から更なる連絡がありました。
「X君は、AO入試をメインに考えたいとのことなので、AO入試の合否が決まるまで、お休みになりました」
とのこと。

私の一抹の不安は、「大丈夫なのだろうか?」という不安へステージが上がりました。

X君は、AO入試に手ごたえを感じたのでしょうか。

確かに、数学ⅠAⅡBの講座を取らなくても、自分で勉強できれば問題ないとは思います。

一方で、「自分はAO入試で通りそうなんで、一般入試対策はそこまで頑張らなくてもいいのかな?」と思ったのかもしれません。
もし、そうであれば、AO入試で失敗した場合のリスクは多大なものになります。

リスクの大きさを懸念したのは、私だけではなかったようで、周囲の説得もあり、AO入試の可否が分かるタイミングではなく、九州大学に提出する書類が整った後、彼は数学の講座に復帰しました。

X君はそれなりに勉強をしていたようですが、あくまで「それなりに」のレベル。模試の成績などは完全に伸びが止まり、一般入試での挑戦は「副」の立場とは言えるものではない状況でした。

合格がありえるとしたら、AO入試の方が現実的という事態になっていました。

そんな現実からか、「九大にはAO入試で行くので、数学はある程度の勉強になります」と言わんばかりの態度になっていました。
一般入試で通るイメージが持てないからこそ、よりAO入試に期待をかけるという悪循環になっていました。

これは、想像以上に悪い状況だという印象でした。塾長もそれを把握していたようで、AO入試で何とかいければいいけどね・・・と不安顔。

そんな中、AO入試の1次選抜が発表されました。

結果は合格!

よかったという雰囲気が漂う中、小論文の先生から衝撃的な発言が飛び出します。

「X君を合格に導いたのは間違いだった」とおっしゃるのです。

(次回につづく)

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