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090:五島のうまかもん(02 きびな)

 「きびな」とはキビナゴの長崎県・九州地方での呼び名らしい。

 キビナゴは魚の中でも脚の速い(痛みが早い)部類に入る魚で、それ故に刺身にできるのはその日に獲れた新鮮なものでないといけない、というのが定説。

 主な産地はわからないのだけれど、関東以北の漁港で量が獲れるという話は聞いたことがないので、恐らく九州など西の地方を中心に一定の漁獲高がある魚で、その影響で九州地方を中心に様々なキビナゴ料理が存在するのではないかと思う。

 私が住む関東地方では新鮮なキビナゴの刺身を出してくれる飲食店に出会ったことはないし、ましてや鮮魚店やスーパーなどでも刺身にできるようなキビナゴを売っているのを見たことはない。

これは私の想像だが、多分今の流通網の発達した技術をもってすれば関東地方でも新鮮なキビナゴの刺身を食べる環境を整備すること、購入環境を構築すること自体は物理的に可能なのでは?と思う。

 でも関東地方ではキビナゴを刺身で食べる文化が根付いてないこと(少なくとも日常の食卓に出すようなレベルにまでは浸透していないこと。このあたりは九州で一般的に食されている“ゴマサバ“と同じかも)、物流コストを価格に上乗せすると結構な値段になってしまうこと、つまりは需要と供給のバランスの問題で新鮮なキビナゴを食することができないのではないかと思う。

 そんなキビナゴだが、五島のスーパーでは新鮮な刺身用の逸品が簡単に手に入るのだ。

しかも380円。個人的にはワサビよりもショウガが付いてたら完璧だと思う

 そんな身近な魚なので、地元の家庭でも日常的に食べられている。

 昨年2月に福江島を訪れた時は新型コロナの感染者が増加し「まんぼう」が発令されていたため、地元の飲食店の多くが営業を自粛していた。空いている店もあるにはあったけど、滞在中は市役所の方と夕食を共にすることが多かったため「市役所の人間が見たことのないヤツと酒飲んでた」なんて噂が立つことのないよう、食事は専らその方の家での「家飲み」が中心だった。

 で、職員のご家族の方が出してくれたのが写真のお刺身。

どう考えても家庭で出てくるレベルを超越している。隣の鮪はまた後日

 見るからに新鮮であることが一目で分かるキラキラとした身、一流の板前の仕事のような見事な盛りに一瞬言葉を失ってしまったのを今でも鮮明に覚えている。味も最高だったのは言うまでもない。刺身以外にも一夜干しや


 珍しいところでは、煮干も売っていたりする。

酒のつまみに最高

 新鮮で種類豊富なきびなを食べるため「だけ」でも、十二分に五島を訪れる価値はあるんじゃないか?

とかなり真剣に思います。

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