ゆるせ

やみの中の
手触りほど確かなものがあろうか

わたしの手をそっと握った
あたたかい手

そしてやみの中で
わたしの頬を撫でた手のひら

わたしが許すまいと
やみの中で誓った思いを

諭すように肩を揺すり

そして背中に指を這わせて
字を書いた

そのひとの手
何度も何度もやみの中で
わたしにわかるように
ゆっくりと背中に書いた
文字

ゆるせ

やみの中でそのことばは
響いた

ゆるせ

ゆるせ

ゆるせ

ゆるせ