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思い出は

思い出は川のように
流れる

思い出が流れ来た源は
わからないが
流れ行く先は分かる

自転車をこいだ少年が
橋の欄干に足をかけ
その橋の下の流れを覗き込んでいる

まるで美しい宝物を
見つめるような目付きで
橋の下の川の流れを見ている

彼の思いは源を見る瞳か
それとも未来の海へとか

いずれにせよ
眼の前の流れを見て
やがてその彼方を見つめる 行為を繰り返し

少年の顔は
川面のひかりの乱反射に
照らされているかのように
輝いている

自転車を跨いだ片足を欄干にかけ
川を面白そうに
実に面白そうに見ている

魚は見えたか?
亀はいたか?
水鳥は綺麗か?
ずっとふるさとにいるか?

少年と通りすぎる間
かけたい言葉が
幾つも浮かんできたが

呑み込み

わたしも思い出の流れの中に
足を浸していることに気づく

それは少し冷たく清らかで…

山深きその流れの源を探る



魚捕まえたか?
ひとを愛せたか?
ひとの役に立てたか?

まだ生きていたいだろ?