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県道沿いの食肉処理場から
ガタガタと肩を揺らすように
白い錆びだらけのトラックが出てくる

夕方のこと
車通りも少ない県道を
深緑色のシートをつけた
白いトラックは何かを満載させながら
低速で走っている

後を走るわたしが
ふと眼を道脇に反らせると
電線に烏が

一羽二羽ではない
何十羽もの烏が電線に電柱にとまり
鳴いている

それがまるで
悲鳴のように聞こえていた

やがて信号は赤に変わり
前を行くトラックは静かに停車した

すると次から次へと烏が滑空して
トラックの荷台に飛び込み
何かを拐って行く

何羽も何羽も
赤錆が傷のように出来たトラックの
荷台の縁を掴み
啄み、食らい、声をあげている

食肉処理場から出た屍肉が満載された荷台に
首を突っ込んでは食べている
あの烏の鳴き声は悲鳴だった
歓喜の

烏を乗せて
真っ黒になったトラックは
やがてまた静かに走り出す
処分場に運ぶ屍肉の山
群がる烏

それは戦いに朽ちた野生の犀を
責めるように

独りで歩んでいく
犀に
纏わりつく烏の群れ

独りの犀が
自らの眠るべき場所に辿り着くまで

犀の歩む後を
ついて行くわたし

犀にとっては烏と同じか

若しくは参列者か

こんな時に限って
トラックの運転手はスピードを出さない
ゆっくりと
ゆっくりと

犀の肉体を苛む
烏の嘴

犀はやがて崩れ落ちた