しまさと

物語やエッセイなど、頭の中に眠っていた文章を少しずつ置いていきます。近頃は育児や日常の…

しまさと

物語やエッセイなど、頭の中に眠っていた文章を少しずつ置いていきます。近頃は育児や日常の短い日記中心に、「とにかく書く」習慣作りをしています。

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まえがき、のような。

毎日、言い訳ばかりしている。 小さな頃から、本を読むのと同じくらい、文章を書くのが好きだった。 頭の中には、自分で考えたお話の欠片がたくさんあって、それを形にしたくていつもワクワクと夢想していた。 けれど、はじめからおわりまでお話を書けたことは、あまりない。 時間がたっぷりあったはずの学生時代はいつの間にか過ぎ去って、気がつけば大人になった。 仕事や家事で忙しいから。 毎日疲れてしまっているから。 まとまった時間が取れないから。 やりたいことがたくさんあるから。 でき

    • 遠ざかる、一服

      子どもたちが寝て、自分がまだ活動できる余力を残している日。そんな日は週に何日もあるわけではない。だからたまに、5歳児がすんなりお布団に入り、0歳児もスヤスヤと寝息を立てている夜、心は浮かれてはしゃぎだす。 今なら、散らかった部屋を片付けられるし、ドラマを配信で観ることもできるかも。でもとりあえず、今日も一日なんとか乗り切ったご褒美に、ひと息入れようか。紅茶かな、コーヒーかな、冷蔵庫にスイーツもあったぞ、とウキウキしながら準備をして、いざ、とスイーツの袋を開けた途端、聞こえるか

      • 優秀なツールとポンコツな私

        育児アプリを導入してみた。赤ちゃんの授乳や睡眠、排泄などの記録が残せる物だ。 上の子の時は、「アプリを使うほどきっちり管理したいわけじゃないし……」と手書きでフンワリ記録していた。ところが2人目育児、どうも手帳を開く暇がちっともない上に、記憶力の失われた母は赤ちゃんが泣いた時、前回の授乳が何時だったかすぐに思い出せない。前の日のことになるとなおさらだ。授乳の時間や間隔をきちんと管理したい、というわけでもないが、助産師さんや保健師さんに会うことがあると「1日に何回くらい排泄があ

        • 【3行日記】おうち幼稚園

          週末の5歳児はよく「幼稚園ごっこ」をする。ぬいぐるみと親を相手に朝の挨拶から場の仕切りまで完璧に先生を模していて、感心すると同時に、親的には設定や遊びに付き合いきれなくて疲れてしまうことも多い。 日曜日の夜、「帰りの会を始めまーす」と号令をかけた5歳の先生が、「明日からこの幼稚園は5回おやすみになりまーす」と言った。明日からは本物の幼稚園があるので、幼稚園ごっこはお休みということだ。なかなかちゃんとしているな、と思ったところで、「5回お休みした後は、幼稚園の長ーいお休みがあり

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        まえがき、のような。

          【3行日記】海苔巻きの記憶

          5歳児が白米を残すので、海苔で巻いてやることにした。ちりめんじゃこをかけても表面だけ食べて残していたのに、味海苔に一口ずつ包んで渡すと面白いくらい食べる。 そういえば、私も同じくらいの年の頃、一口ずつご飯に海苔を巻いてもらって食べたことがある。やってくれたのは、7つ離れた姉だった。一度きりのことだったのか、日常的にやってもらっていたのかは思い出せないけれど、並んで座って、一口ずつ作ってくれる海苔巻きは、なんだかやけに美味しかった気がする。 並んで座って、ご飯に一口ずつ海苔を巻

          【3行日記】海苔巻きの記憶

          【3行日記】5歳の心配

          お腹の手術跡の部分に、市販の術後用テープを貼っている。入浴の時に取り替えようと思って剥がすと、5歳の上の子がそれを眺めて「取っちゃうの?」と聞いてきた。「新しいのに貼り替えるんだよ」と答えると、「ちゃんとあとであたらしいのはるんだよ。そうしないと、きずのところがひらいてきちゃって、またおいしゃさんいかないといけなくなっちゃうからね。わかった?」と諭された。テープで留めてないと開いちゃうと思っているらしい。 大丈夫、開かないよ。

          【3行日記】5歳の心配

          【3行日記】調べて、忘れて

          お土産を頂いた。クッキー生地にクリームがサンドされたお菓子である。 一口食べて、「この味わい、知ってるぞ」と思ったが、名前が出てこなかった。法事なんかがあるとよく、お下がりのお菓子に紛れ込んでいる、波型の生地の間にクリームが挟まった和菓子である。大好きなのに、すぐに名前を失念してしまう。 「和菓子 波型 サンド」で検索したら、すぐに出てきた。そうだ、ヴァッフェルだ。今度こそ覚えておこう、と誓いながら、「サンドクッキー」と書かれたお土産を齧った。

          【3行日記】調べて、忘れて

          【3行日記】生まれ変わる

          赤ちゃんのお顔に小さな赤い膨らみが2つあり、吹き出物だろうか、虫刺されだろうか、と心配していたのが、昨日の夕方。 その夜、授乳してもあやしてもちっとも寝てくれない赤ちゃんを胸に抱き、ゆらゆら、ゆらゆら、と揺れながらふと顔を見ると、吹き出物の赤みがすっかりひいて小さくなっていることに気がついた。 一度荒れたらちっとも治らないアカギレだらけの手を眺めながら、0歳児の新陳代謝に慄く、30代の冬である。

          【3行日記】生まれ変わる

          たどり着きたい

          ネット記事を眺めていたら、「家が片付かない人の特徴」というコラムがあった。残念ながら大体当てはまるのだけれど、中でも「便利そう、という理由で収納雑貨を購入している人」という部分が刺さった。「収納用品を買う前に、クローゼットなどの奥で死蔵している物を捨てるべき」という解説に頷きながら我が家の現状を見ると、そもそも「奥で死蔵している物」にたどり着けそうにもない。 山となっている子どもの服たちを、間に合わせで買ってきた収納ケースに収めながら、クローゼットまでの道筋をどうやって確保し

          たどり着きたい

          【3行日記】はなれがたい

          出産してからもマタニティの服を着ている。 産後2週間ほどで普通のズボンを履こうとしたら、帝王切開したお腹の傷に当たって、前のホックが止められなかったのだ。痛いのだから、仕方がない。諦めてマタニティを着用した。 ひと月が過ぎ、痛みは消失しつつあるが、普通のズボンを履く勇気が出ない。止まらない間食が別れを遠ざけているような気もするが、今しばらく気づかないふりをしていたい。

          【3行日記】はなれがたい

          おめめぱっちり

          昔、小説の文中に「アーモンド型の目」という表現が出てきた。容姿が優れているキャラクターの描写だったと記憶しているが、当時はあえて「アーモンド型」と表記することが、あまりピンと来なかった。 しかしどうやら、我が家に最近仲間入りした赤ちゃんは、その「アーモンド型の目」を持っているようだ。なるほど、確かに綺麗な弧を描いていて美しい。目の周りを縁取るカールしたまつ毛も合まって、なかなかの美形である。クリンとした目で、瞬きもせずにじっとこちらを見ている赤ちゃんは大変可愛らしい。 ただし

          おめめぱっちり

          【3行日記】選んで、包んで

          人にプレゼントを贈るのが好きだ。「これ、あの子が好きそうだな」というものを見かけたら、お誕生日やお祝い、労いなど、なんだかんだと理由をこじつけて贈りたくなる。ただ、いざ購入しようという段になって、急にブレーキがかかる。考えすぎてしまうのだ。 良さそうなタオルを見つけたとする。手に取って、これがいい、と思ってから、「いや待てよ、この色は好きじゃないかもしれないな」「実はタオルにものすごいこだわりがあるかもしれない」「家に溢れかえってて迷惑かもしれない」とありとあらゆる「かもしれ

          【3行日記】選んで、包んで

          【3行日記】全部、途中

          平日、上の子が幼稚園に行っているおよそ6時間に、やりたいことは山のようにある。 しかし今日もまた、授乳と授乳の間にゴミ捨てをし、朝食と昼食を取り、赤ちゃんを入浴させただけで終わってしまった。 玄関には受け取った荷物のゴミが散らばり、風呂場は赤ちゃんが入浴した時のままだけれど、外へ出て幼稚園バスを待つ。ああ、トイレに行きたかったなあ。

          【3行日記】全部、途中

          【3行日記】色、いろいろ

          服を買いに行った。2つのカラーのどちらにするか延々悩んでいる私に、お店のお姉さんは親身にアドバイスしてくれた。 「お客様の髪色は、綺麗な艶のある、落ち着いたカラーなので…」と表現されて、思わず笑いそうになった。ただの染めてない黒髪である。小学生の頃、髪が混じり気なく真っ黒であることを、友人に「髪色が重たい」とからかわれたこともあった。 同じものを表現するのに、これほどの違いを見せられるものなのか……と、サービス業のプロの力に感服し、お姉さんの一押しカラーに決めた。

          【3行日記】色、いろいろ

          【3行日記】ケロケロタン

          我が家の5歳児は幼稚園ごっこが好きだ。最近のテーマはもっぱら発表会の練習で、「かすたねっとそうを、はじめます」と本番さながらに勤しんでいる。 カスタネットは現物が手元にないため、「タン、ウン、タン、ウン」と声に出しながら手拍子を叩く。そういえば休符は「ウン」だったな、と遠い記憶が呼び覚まされたところで、「ケロケロタン、ケロケロタン」と聞き馴染みのない指示が聞こえて、思わず「今なんて?」と返してしまった。 「ケロケロタンだよ」と指先を小刻みに動かす仕草を見せてくれたが、見てもや

          【3行日記】ケロケロタン

          【3行日記】冬支度

          あんなにも季節外れの夏日が続いていたのに、急に冷え込むようになった。 寝室に人数分の掛け布団や毛布を用意したが、布団に入るとひんやり寒い。部屋が北側にあるからか、窓の冷気を感じるからか、と思いながらふと気づく。敷きパッドが接触冷感のままだったのだ。 夏の名残を片付け終わるまで、冬にはもうしばらく足踏みしておいて欲しい。

          【3行日記】冬支度