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本多劇場 赤堀雅秋プロデュース『ボイラーマン』観劇記録(ネタバレあり)

【日時】2024年3月17日(土)13:00開演
【会場】本多劇場
【作・演出】赤堀雅秋
【出演】田中哲司 / 安達祐実 / でんでん / 村岡希美 / 水澤紳吾 / 樋口日奈 / 薬丸翔 / 井上向日葵 / 赤堀雅秋
【製作協力】PRAGMAX&Entertainment
【協力】鈍牛倶楽部 イミリミ アルファエージェンシー アパッチ ソニー・ミュージックレーベルズ ナブラ ニコフィルム ウッディ LEARN
【制作】佐々木康志  新居朋子  木村義幸
【プロデューサー】西田圭吾
(以下、公式web siteからの引用)
「素性を隠し慎ましやかに暮らす主人公、悪の組織に捕われてしまった悲劇のヒロイン、主人公の相棒は実は悪の組織から送り込まれたスパイ、主人公はヒロインの前でついに己の正体をさらすことに。
その名は……という物語ではないことは確かだ。
何しろボイラーマンだ。
地獄のように何も起こらない現実の社会に生きる地獄のように何もない凡庸な中年の男。何もない世界に生きる市井の人々。それでも作者の私にとって彼ら彼女らはヒーローでヒロインだ。そう、その名は、
ボイラーマン!!」

【感想】
スパイもの、探偵ものではありません。
なかなかたいへんな作品だった。何がというと、なにも起こらないと言えば起こらない、いろいろ起きていると言えば起きている、登場人物誰一人として、何者なのか、はっきりしない。住宅街のマンション(というかアパートのような)の裏手の階段と路上が舞台。そこに入れ替わりで現れる登場人物たち。それぞれに、そこにいる理由があるといえばある。パンフレッットには戯曲が全部収録されているという豪華版なのだが、それを読むと、役者さんたちは結末がわからない状態で稽古を始めていたらしい。そういう意味でたいへんだったろうなと思う。
そんな中、登場人物それぞれに、クライマックスというか見せ場というか、が設定されている。そして、それぞれみんな、意外な事情というか設定をもっていることが徐々に明かされていく。絶妙な配役。みんな巧い!
静かな展開なのだが、どんどん舞台に引き込まれていく。われわれ観客はこの場所を少し離れたところからずっと双眼鏡で眺めているような気分になる。
誰もがみな、ちょっとした悪意も、ちょっとした善意も持ち合わせていて、それがどちらに傾くかなんて、ほんのわずかな偶然でしかないのだなぁ、というのが終幕後の感想。面白かった!
田中哲司さんの舞台は初めてだが、抑揚が効いた演技でさすが。安達祐実さん、 でんでんさん、村岡希美さん、ベテラン勢も本当に絶妙。樋口日奈さんの舞台はお久しぶりだけど、相変わらず活舌が良くて、こちらも配役にぴったり、な印象。

パンフレット(戯曲本)がかっこいい。

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