ぼくと三毛猫

画像1 薫風香るお天気の良いある日。僕はうつむきながら歩いていた。どうしよう、約束は明日だ… ふっ、と視線を感じて目を上げると、塀の上で寝そべっている三毛猫と目が合った。「悩み事かい?兄弟。」え?猫がしゃべった?! 三毛猫はプイっとそっぽを向いた。「気のせいだろ。で、どしたい?」前足を丁寧になめながら、興味がなさそうなそぶり。
画像2 この三毛猫は近所に住む野良猫だ。たまに餌をやったりしているからか、割と懐いてくれている。話しかけられるとは思わなかったけどね。「明日香ちゃんと約束したんだけど、ちょっと困ってて…。」なぜか立ち止まって猫に話しかけてる。ああ僕ってば、本当に困ってるんだ。あまり人には見られたくない。特に友人には。
画像3 「言ってみな。」うーんと伸びをして座りなおすと、三毛猫はちょっとだけ目線を僕に向ける。「YouTubeに投稿する動画を作ろうって約束したんだけど。。」もにょもにょと途中で言葉が途切れる。猫にYouTubeって言って分かるのかな?「それで?」髭を撫でつけながら、猫が問う。やっぱりしゃべってるよね?
画像4 「猫が話すわけないだろ。で、YouTubeって?」僕はあわててスマホを出して、適当に動画を再生してみせる。興味なさそうだったけど、かわいい子猫動画はちょっと見てくれたぞ。
画像5 「こんな風な面白い何かを撮りたいんだ。」ふーん、そんなことか。くだらないなぁ。全身でそういってるように猫は大あくびをして、きっちりと顔を僕に向けた。
画像6 「ま、頑張るんだな。」はっきり聞こえたぞ!しかも笑ったな? はっ!笑ったネコ?これはネタだ! 僕は大慌てでスマホを操作する。カシャっ。間に合ったか?
画像7 気が付くと三毛猫は消えていた。僕はあわてて写真を確認する。そこには、かなりピンボケの、でも猫とはわかる程度の生き物が写っていた。ちょうど身をひるがえしたところで、写っていたのは後ろ姿だけど。
画像8 「あ、あはは、わぉ!凄い!」僕は画面を見つめてジャンプ! そこにはきっちり二つに分かれた尾っぽがハート形になって写っていた。「雌がらみじゃしょうがねぇ。またあれ頼むぜ。」そういえばそんな声も聞こえたな。あいつ、猫又のくせに親切過ぎだろ。今度はお刺身持って行ってやろう。。そう僕は青空に約束した。

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