続・5弦ベースにまつわる願望の現況

過去5年間、あるいは7年間にジェットコースターのような上り下りを経験した中、稀少、あるいは貴重な楽器(=商売道具)も、時に手放さなければならず、結局1から揃え直したとも言える昨今でした。今住んでいる家を買ったのが一昨年の11月で、リフォームを終え越してきたのが昨年の7月。そこを起点としたスティントが現在地です。商売道具のラインナップは、おおよそ昨日お話しした通り。不満が0ではない。ただし、不幸でもない。

フレットレスのサウンドに合うことを念頭に置くと浮かび上がるのがウォルナットです。フレッテッドにおいてもウォルナットは一番好きかもしれませんが、うちの楽器、ボディ材はアルダーとアッシュ、リンバが1本という、あ、パドゥクというのもいた。というわけで今はここにありません。

墨のように濃い音が期待できるウォルナットは、使いようによってはクセが出やすくて、難しい材かもしれません。重めなのも実用面で不利になります。この10年以内のできごとですが、一度スルーネックのボディウィングにウォルナットを採用した楽器をオーダーで作ってもらいました。国内の工房で40万円台のどこか、といったリーズナブルな金額でした。

重量のプライオリティは高く、ヒップショットの軽量ブリッジ&ペグを指定し、ネックも細くしてもらい、トータル重量4.0kgを僅かに超える程度という理想的な仕上がりでした。トップ材はシカモアと、美麗さも秀逸でした。このような、オーダーがちゃんとヒットした、理想の具現化が可能であったにもかかわらず、手許にない理由は、結局その楽器を受け取らなかったからです。

受け取らずにどうなったか、作り直しでも返金でもなく、今思うと何故そうなったか不明(過去メールをほじくり返せばわかるでしょうけれど)なのですが、下取ってもらって何か別の楽器、あ、そうかそれが最後に使ってた NYCサドになったのか、に化けました。ちょっともやっとしてたのが収まりました。思い出せて良かった。どちらも24フレットだったんですね。

理由はちゃんとあって、そもそも、そのメーカーのとある楽器のトーンを再現したくてウォルナットボディウィングを指定しているのですが、もうひととつ、独自な位置に搭載されたピックアップも重要な要件でした。私はAというモデルの音が気に入り、Bというモデルのボディデザインでそれを再現したく、材とPU位置をAと同じくしてBをカスタムオーダーしたのですが、出来上がった楽器のPU位置はBの標準仕様だったのです。

なんと、私はそのまま受け取って持ち帰ってしまったのですね。その場で確認せずに。だから作り直しや返金・返品にならなかった…。結構ショックでした。で、それはそれで悪くないのですが、求めていた音があったので、やっぱりこれじゃない、と頑なになってしまったのです。で、サド買ってるんだから、全然筋が通りませんが。いっそ、全てを忘却しようと考えたのかもしれませんね。心が弱い。いずれにしても事態は満足すべき形にはなりました。

あれはそのまま別の顧客へ売られていきました。特価で。その、いずこかで働いているウォルナットウィングに、今また焦がれている自分が見て取れます。あれ、フレット抜いたら最高じゃないか?みたいな。

一方、PU位置が目論見と異なりましたが、抜群に弾き易く、且つ良い音していたのは事実であり、現時点で仕事に使ってみたいと思えるスペックでもあります。メイプル3ピース・スルーネック、エボニー指板、シカモアトップ、ウォルナットバック。18mmピッチでナット幅45mm、アラウンド4000g。ちゃんと2023年に生きる自分を予見した指定を行っています。

私、迷走しまくり、と自覚していますが、こと楽器については、非常に好きな音がはっきりしており、常に一貫した嗜好を持ってきたことがわかります。変化は弾き心地への評価ですね。なので手に取る楽器を替えてきた変遷があります。ずっと、ある方向を見て追究している気がしています。知識が深まるにつれ、オーダーの詳細は凝ったものになっていきますが、それこそがある種の財産ですかね。ただ、まだ途上なのか、と少し気落ちします。

40万、あるいは50万出せるなら、物価高騰が続く現在でも、まだ注文製作は可能であろうと思います。市場の一品に、これだ!と確信できるものが見つかれば別ですが、どこかを妥協した買い物をするよりは、相談できる相手に託すのが良いような気がするのですが、それだけ待てるかな?…。

ベースのボディ、ウォルナットトップ&バック、マホガニーコアというのはありました。あと玄関、上がり框がブラックウォルナットです。最高



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?