軽音楽部サポートのお仕事

高校生の部活に軽音楽部がお目見えしてそれほど長い年月は経っていないでしょう。4〜5年前にベースを習いに来ていた中学生の女の子は、とても素質があって群を抜く勢いで伸びていったら、ある日軽音の強い高校へ進学したいと言ってきました。「強い」という表現にはショックを受けたものです。現在は県にもよるようですが、学連があってコンテストが開催され、全国一の高校だか、バンドかが選ばれるようです。その上位には常連校があり、それらを平たく「強い」と言い表すようなのです。

その子はめでたく第一志望に合格しましたが、部活にも無事入部できた暁には、習い事禁止のルールによって私の教室からは退会されました。話に聞くと、入部には選別が行われ、狭き門だったようです。しかも週一でオリジナル曲の制作課題があり、練習は日々数時間、なんともプロダクションの育成を受けているような生活が始まっていたようで、本当に隔世の感です。2年生になると部長を務めるようになったことを手紙で知らせてくれましたが、コロナ禍で過ごした高校3年間はすでに終わっているかと思います。今はどこで何をされていることでしょう。

私にとって、高校軽音部というもののイメージはそうしたところから、あまり良いものではありませんでした。なにをもって、全国一などと決めるのでしょう。コンテストはオリジナル曲で審査されるようで、ただ上手なだけでは勝ち抜けません。いずれにしても勝敗を決して序列を付けることを、ある意味では励みとして精進するという学生生活を送ることになります。

軽音部は歴史的にもまだまだ未開拓な分野である分、光と闇という運動部につきもののような栄光と挫折を分けるシビアさは見受けられないし、実際に私が会った学生達は、全力でそれを楽しみ、ピュアに青春を捧げている姿に感動すら覚えました。

今日が、軽音部サポートのお仕事の初日でした。都内公立高校へ伺い、各1時間、2バンドのクリニックを行ってきました。本日の企画の内容を詳しくお話しすることはできませんが、明日また別の高校へイベントの視察に参ります。どちらも強豪校として知られ、軽音部がすでにアーティストを輩出しています。

担当した2バンドとも、演奏力は高く、楽曲に込める音楽的アイディアは豊かで「本物」っぽかったです。その一方で、その荒削りなままでは先へ進めないと思わせる部分が残っていて、いくらかの助言が今後役立てばいいなと思います。

どちらもメンバーによって楽曲が煮詰められていましたが、ともに客観性に欠ける部分があって、一リスナーとして感じるところを正直にお伝えし、それに対処するアイディアを提供しアンサンブルでそれを実験してみました。そのディスカッションは真摯なもので、私の耳にはみるみる良くなっていく吸収の早さに驚かされました。素直に一旦受け入れてみるという姿勢は、自分等の若い頃に果たして備わっていたか、ちょっと疑わしい。基本姿勢が立派でした。

私が好きなゴルフでも将棋でも、若年層の活躍ぶりは近年目覚ましいものがあり、現役高校生がトッププロと肩を並べて競い合う姿を何度も見てきました。それだけのポテンシャルを秘めているとしたら、今日見た彼等の優秀ぶりに不思議はありません。

軽音楽というものが音楽の一ジャンルとして境界を持つとしたら残念です。楽曲の完成度は高いものの、いくぶん型にはまったものだったかもしれません。それだって凄いことには間違いないですが、むしろ屈折が産み出すような、たとえいびつであっても唯一無二なるものが、部活動とは相容れないかと思うと功罪があるかもしれませんし、音楽はそれだけじゃないのだということを気付いていただきたいです。そうした憂いも更新されるべく、明日も楽しみに出掛けてきます。若い方の可能性を信じて。

私の一連の記事をお読みになって、もしも興味を持たれましたら、軽音楽部指導をお引き受けできますのでご連絡お待ちしています。一回のクリニックでも継続するコーチングでも、またイベント運営や機材系の相談等も可能です。来年には某校から『PA講座』のご依頼をいただき決定しています。

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