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その11 ビートルサウンド

The Beatlesの2023バージョン青盤・赤盤を、新曲が収録されているというので買いました。ビートルズは、国内で初CD化がされたときに全カタログを揃えていたのですが、大馬鹿者です、これだけのアーティストの音源は未来永劫得難くなることはないと踏んで、後日、大量整理の機会に売却しました。本当にバカ。圧縮フォーマットでしか残っていないながら、音が全然違います。恐らくは最新のものが、当時彼等がスタジオで聴いていた音に近いのでしょうが、モノーラルも含め昔のミックスだって当時のベストであり、むしろ本物であるように聞こえます。これらは別物です。

文句を言っているのではありません。楽器の分離、ステレオ配置、音像の強さ、残響の細部までよく見えてくる最新のミックスは、いちいち発見と驚きの連続で、特にかつてと現在、私の何が違うかといえば、決定的なのは米国滞在を経て英語が聞こえるようになったこと、即ち彼等の歌詞の伝わり具合が桁違いに向上しています。ヘルプ、って曲。全部わかっちゃうんだもん、何あれ、泣きそうになるよ。

特筆すべきはベースの存在感ですね。私はベーシストですからポールのベースラインもコピーしました。でも耳をそばだてなくても何をやっているかお見通しになって、随所でコードっぽく鳴らしたり、ゲットバックの特異なオクターブの動きも、あれこんなんだったっけ?と良い意味で意外に思えます。

時代ですから磁気テープに録音された音です。そのために生の楽器音はプロセッサーで圧縮されます。そこにはコンプレッサー使用法の教科書のような音で満ちています。初期は4人バンドの演奏と各人のコーラスワークを一発録音で2トラックに入れるような録音です(本来はステレオではありません)。たしかDIという機材も彼等のために開発されたのではなかったでしたっけ、うろ覚えですがどこかで読んだ記憶があります。

ピークをカットしてテープの狭いダイナミックレンジの中へ押し込むのですが、テープ自体が圧縮させる働きをします。潰されていき重みを増すと言うべきか、ベースの太い音色が、この赤盤・青盤の聴き所でしょう。驚くほどかっこいいです。あとストリングスね。

最近、高校軽音部の活動をYoutubeで見たりするのですが、文化祭のライブ映像など、ちゃんとバンドサウンドのバランスが取れていて、正直に凄いなと感じます。そんななか、ベースが痩せて聞こえることがしばしば。弾き方、楽器の状態、アンプのセッティングもまだまだやれることはあるでしょうが、BOSS BC-1Xでも踏ませてあげたいと思いました。でもあれDSPなんだよね。高校生には充分過ぎるけど。

音楽教室の発表会でベースを弾いたある方が、BC-1Xだけを、これがないと弾けないんですと言いながら使っていました。客席後方で聴いているとベースの音、いいんですよ。太くて。こういう音が簡単に出せるならいいよね、と思いました。

Ampegが"Opt Comp"という製品を出していて、Youtubeでのレビューを見るとなかなか良さそうです。製品はアナログだと声高に謳っており、音を太くする、という役に立っている模様です。光学式は実際に内部で電球を光らせており、音声信号の強弱が作る電圧変化で光量が変化し、それを出力レベルに反映させる超アナログなシステムです。そのため反応がゆっくりしていたり、変化への追随がソフトだったりと、不自然さが起きにくいという利点が根強く愛されてきました。これもまたデジタル化の反動とばかりに近ごろ目立って増えてきました。

オプティカルコンプ系は、知らなかったのですがレシオが3:1くらいで固定なんだそうです。なるほど、レシオノブが見当たりません。コンプレッションなどと書かれた効きの強さをコントロールするノブは、ですからスレッショルド(又はそこへ当てに行くゲインレベル)となっています。ということはリミッターとして使うにはアタックが遅いこととレシオが低いことで難しいと言えますが、それがベースにマッチしそうです。

真空管の特性を利用して音量をコントロールするのが「真空管式」と言えるものですが、ペダルコンプにチューブを実装していても、それはラインドライブにのみ用いられているかもしれません。それはそれで音を良き方向へ変えるデバイスたり得るのでしょうが、チューブコンプを名乗るのは実態にそぐいません。知る限り、MarkbassのCompressorreが圧縮を真空管で行う本物です。筐体が大きいですが音はその特徴を発揮して存在意義を高めています。

音を太くしたい、という要望を手軽に叶える道具という側面がペダルコンプレッサーから見えてきました。誰でも知ってるけど。私の中でコンプレッサーはプリアンプなんだと気付いてから、初めて積極的な音造りのツールに加えてもいいという気運が生まれました。

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