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dragonfly CHB5 / 345

とある仕事の現場で、所有機のローB弦の鳴りに不満が顕わになり物色を始めた11月、最初はSTR GuitarsのTE548に夢中になりましたが、訪れた長野でSugi NBの魅力に気付いて以来、35インチの封印を解くことを思い立ちました。これはという1本を見いだすことができましたが、苦い過去を払拭できず34.5インチで妥協する方向へ転じ、dragonflyをターゲットにしました。結果、うちへやってきたのはCHB5/345というモデルです。

スポルテッド・メイプルと書かれていますが、バールっぽいというか、節とかあるし、欠けたところを樹脂で埋めたり埋めなかったりと、非常にワイルドな銘木をトップに貼っています。バック材は近頃あまり見ることのない濃い色の、アルダーのようなスワンプアッシュで、指板のパーフェローともども、全体に褐色の楽器で、愛称を付けるなら「唐揚げ君」です。

dragonflyにはジャズベースのロングホーンをネックに沿わせたデザインのシングルカットモデルがありますが、試奏した限りは、そちらの方が好みに近い傾向がありました。ハイポジションのカッタウェイも、これより広いと思います。でも本品は4.06kgと軽量で、weightはやはりダブルカットの利があり、シングルカットならもっと重くなります。

5弦で4.0kg切るものも珍しくないダブルカットですが、材によっては4.7kg程のものもあります。メーカーとして軽くしようとする考えは特になくて、完成時の個性として選択肢を広く持とうとしているように見受けられます。それでも、1本筋の通った、dragonflyらしさというものを強く感じることができ、それが私が関心を持った一番の理由になります。ブランドのローンチから存じておりましたが、Weed各種製品への信頼から、このたび満を持してオーナーになりました。

ひとつ言えるのは、少しでも音を太くしようと腐心していること。それでいてシャープなキレの良さを備えさせ、どのようなバンドアンサンブルでも使いにくさが出ないよう考え抜かれています。

具体的にはボディの厚みが44.6〜45.0mmくらいと、嵩のある方です。世間のビンテージ系では42~44mmくらいでしょうか。また、私の迷ったポイントはネックの幅や厚みがあることで、願わくばもっと細くならないかと無心したいくらいですが、せっかくの音が痩せてしまうかもしれません。

CrewsのBe Bottom'21がナット46.6mm、24が48.8mm。12fで21が64.9mmに対し24は67.95mm。このdragonflyはナット47.4mm、12fで66.0mmでしたので、全く手に負えなかったBe Bottom'24に較べればなんとかなる範囲と思いました。余談ですが、国産のJ.W.Black5弦は設計上のナット幅43mmということですが、本当にあれは弾き易くて好きです。スリムネックに思えたSugiのNBも47mmあって決して狭くはありませんが、dragonflyよりも厚みがない分、とても弾きやすかったです。STR TEも46mmのスリムな理想のネック。TE558という手もなくはなかったです(34.5は断られました)。

ボディの話の続きです。トップ材が厚いのも特徴。測った部分では6.7mmあり、これは相当音に貢献する厚みです。バック材との間にはコンマ3くらいの黒い薄板が挟まれており、バック材に貼られた合計が7mmというのは珍しい気がします。というように、結構ここのは、物量を投じようとする基本姿勢が見て取れます。けちらない。

弦交換の際にネックを外してみました。柾目のメイプル3ピースにブビンガを挟んだ5ピースネックです。このような木取りならばアングルドヘッドにしてもらいたいものです。でもそこは敢えてのフラットヘッドなのでしょうね。

ポケットにもネックにも鉛筆書やスタンプなど一切ないです。ここはギターも作ってますが、特にベースは小ロットなのでしょうね。組み合わせを間違えることなど有り得ないのでしょう。塗料が吹かれていないネックポケットでご覧いただけるとおり、アッシュなのに茶色い。普通はネックのメイプルくらい白っぽいのですが。

最終フレットは、実はツバだしです。フレットは"#214 Hybrid2 stainless"と書いてあります。サンコーのミディアムですが材質は特注のようです。2.4mmx1.3mmで使いやすい。アバロンのドットが入っていますが杢目とのコントラストがなさ過ぎて、弾いている時にまるで視認できません。

マイクはエボニーのケースに入れられており、シリーズ接続のハムバッカーです。タップスイッチで、それぞれのネック側のコイルが残ってJB同様の使い勝手となります。ナット端からポールピース中心までの距離を計測すると、順に717.5mm、733.5mm、808.5mm、824.5mmとなります(太字がシングルコイルの時に生きるマイク)。34.5インチスケールから34インチへ換算すると、シングルのところで言えば707.1 / 796.2mmということになり、60's仕様にぴたりと一致します。さすが

シリーズハムですから両コイルの中点を磁束のセンターと考えれば、フロントマイクの真ん中まで725.5mm、リアが816.5mmとなり、換算で714.5 / 804.7mmということは、リアハム単体で70'sJBのリアに近いところでもあり、美味しい音が得られる正しい設定と思います。PU搭載位置は抜かりなく決定され、私は大変満足しています(シングルコイルでいいんだけどね)。

ヘッドストックの厚みは18.8mmで、これは厚い方です。うちにあるベースの中でAdamovicと同じで最大値。ギアはGotoh GB707が使われており、対称的にSugiがGB350(重量が707の半分という超軽量モデル)ですから、サウンド重視と言え、結果この個体が軽量な為にヘッドが下がり気味です。ライブで使用して気になるようでしたらHipshotに換えるかも知れません。音のキャラクターは変化しますが、これまでの経験で悪くない方向性だと思います。

当楽器はヘッドに突板がありません。購入した楽器店には同価格で販売されている個体がもう1本あって、そちらはボディトップと同じ材がヘッドストックに貼られ(マッチングヘッド)、ハードウェアカラーはゴールドでした。それらはオーダーメイドならアップチャージに関わる仕様変更ですから、吊しの楽器としてはお買い得です。ですが見た目の違いは音と何の関わりもありません。クォリティがイコールであれば売価もイコールである、というポリシーならば凄いことです。私は両者弾き較べてみた感覚で、こちらが気に入りました。良い買い物ができて満足しています。


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