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プロスペクトランキング(24年春)

はじめに

 お久しぶりです。長かった冬も終わり、遂に2024年シーズンが迫って参りました。今回は昨年に引き続き、北海道日本ハムファイターズの「プロスペクトランキング〜2024年春〜」です。
昨年8月にもプロスペクトランキングを投稿しているため、まだ半年ほどしか経過しておらず、ランキングに劇的な変化が見られるわけではありませんが、「ドラフト会議などを経て新たに入団した選手」「昨年秋や今年の春に大きく伸びた選手」がいるので、それらを反映したランキングにできればと思っています。
 また、ランキング化して投稿することの目的として、「まだ一軍で活躍していない有望株にフォーカスし、ファイターズの将来を一緒に楽しむこと」があります。この投稿を読み、ファイターズファンやそれ以外のプロ野球ファンに少しでもワクワクを届けることができれば嬉しいです。
 あくまで個人的なランキングなので、「色んな考え方があるんだな〜!」と受け取っていただければ幸いです。

対象となる選手

 対象となる選手は以下の通りです。前回と同様にDELTA社の条件に準拠していますが、一点だけ変更点があり、今回は「外国人枠の対象となる選手は除く」という条項を削除しました。つまり、外国人枠の選手でも下記基準に合致しているなら対象となります(勘の良いファイターズファンは”なぜ外国人枠を対象とした”かすでにお分かりかもしれません)。

対象となる選手

選定基準

 選定基準は、前回と同様に”キャリアを通してどれだけ多くの勝利に貢献できるか”を選定基準とします。換言すると、どれだけ多くのWARを稼げる可能性があるかとなります。
 投手で言えばリリーフよりイニングを稼げるスターターの方が評価は高くなり、野手で言えばコーナーの選手よりセンターラインの選手の方が評価は高くなります。
 また、上記選定基準をもとに検討する際、一軍/二軍のスタッツ選手自身の身体的スペック(身長、体重、球速、故障の頻度、年齢など)を参考指標として取り上げます。専門家ではないので、メカニクスは参考程度に参照します。濃淡を付けるならば、最上位に直近のスタッツがあり、次点で身体的スペックでしょうか。
 個人的には、投手のパフォーマンスと球速には強い相関があると考えているので、球速は重要な物差しとなります。また、MLBのプロスペクトランキング同様、若ければ若いほど評価は高くなります。一方、オープン戦の成績は「対戦相手のレベルのばらつき」「母数の少なさ」を理由に、あまり比重を置いていません。

引用・参照元

プロスペクトランキング

前回と同様、1位は福島蓮となった

1位 福島蓮(STAY)

 栄光の1位に輝いたのは福島蓮。21年ドラフトの育成1位指名で入団した190cmの大型右腕で、見事開幕前に支配下契約を勝ち取ったことで話題となった。近年のファイターズでは最も育成に成功した投手と言っても過言ではなく、八戸西高校時代はMAX143㌔だった球速が10㌔以上速くなるなど、急成長。まだ線は細いため、筋肉量増加に伴いさらに速くなるのではないだろうか。
 高卒2年目の23年は、二軍で17試合に登板し51回を消化。FIPが3.24K%が24.8%(参考:23年一軍 山岡泰輔(オ)24.9%、今井達也(ラ)24.4%)と素晴らしいスタッツを残す。また、特筆すべきは打球管理能力で、2年間で被本塁打は1本のみであり、被Hard%が非常に小さい
 ピッチセレクトはフォーシーム(60%)、スライダー(約10%)、カーブ(約5%)、フォーク(約25%)という王道の球種構成で、フォーシームはMAX153㌔(Av145.9㌔)。今春は首脳陣の意向で一時的にリリーフ起用されていたが、一軍の打者相手に150㌔前後のフォーシームで空振りを量産した。
 課題はコマンドで、23年のBB%は11.2%と高め。制御不能というレベルではなく、球威があるのでゾーンへアバウトに集めるだけでも通用するだろうが、一流のスターターになるためにも四死球を減らしたい。
 今季は先発投手として起用されることが明言され、早ければ4月中旬にでも一軍デビューするとのこと。昨年の51回が自己最多投球回数で、まだ線が細いため、今季は10日間隔で投げることができれば問題ない。体力的な課題はあるが、投球クオリティはすでにトップクラスを目指せる水準なので、まずは量より質にこだわって投げてほしい。将来的にはMLBも目指せる大器だ。
<24年成績予想>
 (一軍)3.50 3勝2敗 35回 30奪三振
<24年成績理想>
 (一軍)3.00 5勝2敗 50回 45奪三振

2位 金村尚真(UP)

 惜しくも2位となったのが金村尚真。22年全体13位指名の大卒2年目の投手であり、アマチュア時代は”指標最強投手”として名を馳せた。176cmと上背はないものの、抜群のコマンド多彩な変化球を四隅に投げ分ける。アマチュア時代は技巧派の印象が強かったが、プロ入り後に出力が伸びて球威で押せるようになり、一部では「投手に必要なスキルを全て兼ね備えている」とまで言われるようになった。
 23年は故障によりシーズンの大半を調整に費やすものの、一軍と二軍で計55回を消化。特筆すべきはその内容で、一軍では25回を投げてFIP 1.78K% 23.7%BB% 5.2%と圧巻の投球。投球回数が少ないとはいえ、”ドラゴンズの高橋宏斗(K% 23.3%、BB% 8.2%)より三振を奪いつつ、さらに四球が少ない”と言えば凄さが伝わるのではないだろうか。なお、投球のクオリティは一過性ではなく、二軍ではK%とBB%がさらに良化した。
 元変化球投手だけあって、フォーシームを40%前後に抑えて多彩な変化球を投じる。最もPitch Valueが良いのはスライダーで、一軍の打者相手でも威力を発揮した。また、フォーシームはAv147.3㌔に到達し、昨年に至っては戸郷(巨)則本(楽)より速い。長い回を投げても出力が落ちず、生粋のスターターと言えそうだ。
 特段大きな課題はないが、強いてあげるなら打球管理を気をつける必要があり、23年は二軍で被本塁打が多かった。比較的にHard%も高いので、狭い球場であるエスコンフィールドを主戦場とする今季は、いかにハードヒットを打たせないかがテーマとなる。
 今季の起用法が今年一番のサプライズとなったのだが、開幕からリリーフ(勝ちパターン)で起用されることが首脳陣より明言された。リリーフとしてはオーバースペックであり、故障歴もあるため、リリーフで消耗されるのは避けたいが、まずは目の前の仕事をしっかり果たしてアピールしてほしい。バーヘイゲンのコンディション不良などもあり、当初の予定よりスターターの頭数が少ないので、シーズン途中で再転向もあるかと思うが、果たしてどうなるだろうか。将来的にはNPBトップクラスの投手になる可能性が非常に高く、代表入りも夢ではない。
<24年成績予想>
(一軍リリーフ) 40試 2.00 3勝0敗 40回 50奪三振
<24年成績理想>
(一軍スターター)20試 2.50 10勝5敗 120回 100奪三振

3位 柳川大晟(UP)

 3位は柳川大晟。21年ドラフトの育成3位指名であり、福島と同期の大型右腕。高校2年秋の九州大会で152㌔をマークし、”191cmの152㌔右腕”という触れ込みだったが、故障もあり3年時の登板ではアピールできず。全体的に粗く、福島と共に大成するまで時間がかかると思われていたが、圧倒的な成長スピードで覚醒。入団前に右肘の手術をしていたこともあり、慎重に起用されているが、すでに投球のクオリティは圧倒的。一目見ただけで「あ、これは別格だ」と、思わず笑みがこぼれてしまうほどの逸材で、将来のファイターズのコアになることが約束された投手。
 23年は登板間隔を空けながら13試合に登板。1回限定の起用が中心で、15回の消化に留まったが、投球内容のインパクトは上位二人をも凌ぎ、防御率1.72K%は驚異の33.3%BB%も5%”とにかく三振が多くて四球は少ない”という支配的な投球。スタッツの似た投手を挙げると、松井裕樹(楽)の23年一軍スタッツがK% 32.4%、BB% 5.9%なので、柳川は投球回数が少ないという注釈をつけつつも、ファームレベルではいかに絶望的な投球をしていたか理解していただけるだろう。
投球の70%以上がフォーシームというパワーピッチャーで、ややストライドの小さいフォームから角度のあるMAX157㌔/Av152.4㌔(24年ファーム)のボールを投じる。空振りを量産できる球質のフォーシームで、23年Whiff%(スイング数に占める空振りの割合)は25.3%という圧巻の水準。母数は少ないものの、24年はさらに空振りを量産している。また、Pitch Valueはスライダーもフォーシーム並の値をマークしており、フォーシーム、スライダー、フォークの3球種が水準以上のボールとなる見込みだ。
 現時点で課題というほどの課題はないが、故障歴があるので慎重にイニングを伸ばすことが目標。柳川のSNSからはインプットに意欲的な姿勢を見て取ることができ、最先端のトレーニングや技術をもとにさらに大きくなってほしい。また、緩急をつけるボールがアクセントとしてあると良いかもしれない。
 24年は、ファン待望のスターターとして育成することが発表された。昨年の登板では回跨ぎをすると出力が低下気味であったが、今年は2イニング目でも155㌔を連発するなど不安を払拭。ゆったりとしたフォームから軽々150㌔中盤を投げ込む様子は山下舜平大(オ)を彷彿とさせ、私は同等のポテンシャルがあると確信している。同期の福島が支配下され焦るかもしれないが(実際「悔しかった」という記事がリリース済)、今季はゆっくり投球回数を伸ばし、今季中盤や今オフの支配下昇格を目指して頑張ってほしい。大きな怪我さえなければ、間違いなく日本代表、そしてMLBを目指せる大投手なので、その一挙手一投足に今後も注目したい。
<24年成績予想>
15試 2.30 5勝3敗 50回 70奪三振(MAX160㌔到達)
<24年成績理想>
シーズン途中に支配下昇格→スターターとして圧巻のデビュー

4位 根本悠楓(UP)

 4位は根本悠楓。20年5位指名の小柄な道産子左腕で、宮城大弥(オ)と共通点が多いため”ジェネリック宮城”と呼ばれている。ファイターズファンの間ではプロスペクトとして認知されていたが、昨年のアジアチャンピオンシップで快投し、一躍全国区の投手となった。出どころの見えにくいフォームからキレのあるフォーシームとスライダーを投じ、球速以上に差し込む本質的なパワーピッチャー。日によって波が大きいものの、のらりくらりゲームメイクすることに長け、試合を壊さない。
 23年はブレイクを期待されたが、オフに体重を絞ったことが原因で不調に陥り、開幕は二軍でスタート。体重を戻すまでは不本意な試合が続いた。ただ、シーズントータルでは一軍と二軍合計で90回近くを消化し、一軍では25回ながら防御率2.88K% 21.9%3勝を挙げた。調子が上がるまで二軍で調整していたため、一軍のスタッツより二軍のスタッツの方が悪く、一軍のスタッツが本来の実力に近いと思われる。
 ただ、すでに22年に一軍で60回を消化しており、求められる期待値はもっと上の投球である。特に23年はBB%が悪化しており、四球を減らすことが今後の飛躍のカギとなりそうだ。
 投球の50%強がMAX150㌔/Av142.4㌔のフォーシームで、全体の9割がフォーシームとスライダーという構成。課題は残りの球種で、カーブ、チェンジアップ、フォークは平均前後のPitch Valueとなっている。投球の大半を強力な2球種に絞っていることは賢い選択かもしれないが、右打者への武器としてサードピッチを確立したい。
 今季は開幕に向けて先発ローテ争いに参加し、猛アピール中。ライバルは北山やバーヘイゲンだが、仮に開幕ローテを逃してもすぐにチャンスは来るだろう。昨年は開幕時点でコンディション不良に陥っていたことを考えると、すでに十分順調である。投球内容の向上に限らず、年間通してコンディションを維持し、ファームと合わせて120回を消化できれば上出来ではないだろうか。将来的にファイターズのローテーションを支える投手になることは間違いないので、引き続き楽しみにしている。
<24年成績予想>
(一軍)18試 3.00 6勝3敗 80回 70奪三振
<24年成績理想>
(一軍)22試 2.50 10勝5敗 120回 120奪三振

5位 細野晴希(NEW)

 5位はルーキーの中で最上位にランクインした細野晴希。23年1位指名の大卒左腕で、MAX158㌔を投げるパワーピッチャー。東洋大学では2年生からスターターとして活躍し、多くのスカウトやアマチュアファンが注目するなか順調に成長。見事、ドラフト1位指名を勝ち取った。
 投手としての特徴は、抜群のメカニクスから投じる威力のあるフォーシームとキレのあるスライダーで、三振奪取能力打球管理に長ける。特に、4年時の入れ替え戦(2試合目)ではほとんどハードコンタクトをさせず、9回まで1安打無失点11奪三振。また、馬力があるため9回でも球速が落ちず、1試合を通して150㌔オーバーをマークする。牽制やクイックなど細かいテクニックにも優れ、ハイシーリングながら欠点が少ない。
 課題は明確にコマンドで、アマチュアレベルでも四死球が非常に多かった。一人相撲となる登板が目立ち、プロ入り後の課題もおそらくコマンドとなるだろう。成長意欲が高く、外部トレーナーのディメンショニング北川氏に師事しているため、今後も二人三脚で微修正を続け、課題をクリアしてほしい。
 24年は少し出遅れ、4月中旬にファームでデビュー予定。すでに仕上がりは順調という声も聞こえており、いきなり鮮烈な投球でファンの度肝を抜くかもしれない。前述の課題もあるため、1年目はファームで課題解決に取り組み、2年目から一軍の戦力となるステップが理想的。MLBスケールの大器であることは明白なので、焦ってリリーフ起用などせず、スターターとしてじっくり大きく育ててほしい。”柳川と細野、どちらの怪物が先に160㌔に到達するのか”、私はすでにワクワクしている。
<24年成績予想>
(二軍)15試 2.50 6勝3敗 80回 80奪三振
<24年成績理想>
(一軍)10試 2.50 4勝2敗 50回 60奪三振

6位 細川凌平(UP)

 6位は、野手で最上位のランクインとなった細川凌平(選出理由は後述するので、気になる方は読んでほしい)。20年4位指名のスピードスターで、スター性も含めてポスト西川遥輝の期待を背負うプロスペクト。智弁和歌山高校では主将を務めるなどリーダーシップがあり、入団時には「(目標とする選手像は)自分で引退を決められる選手」という名言を残すなど、視座の高さに驚かされた。本職はSSながら、CFでもスピードを活かして広範囲をカバーする。攻撃面が順調に伸びており、シャープな打撃と抜群のスピードで長打を量産する中距離系のリードオフが理想像。
 スランプに陥った22年とは変わり、23年はスタッツが向上。好調時にあまり起用されないなど不可解な時期もあったが、一軍で自己最多の60試合に出場。一軍では苦しんだものの、ファームでは攻撃面で目覚ましい躍進を果たし、wRC+は11→112OPSは.410→.773まで向上。HRを含めた長打全般が増加するなどパワーツールが開花し、引っ張った打球が明確に増加した。また、スピードが武器の選手だけあって走塁貢献の指標も良く、ファームレベルでは攻撃面で大きなプラスを生んだ選手となった。
 守備指標はポジションによって明暗が分かれ、2BとCFでUZRはプラスをマーク。一方、SSでは大きなマイナスをマークしており、将来的にSSに留まれるか怪しいが、少なくとも2BかSSでセンターラインに残れる可能性が高いのは良い傾向ではないだろうか。まだ4年目の22歳であり、今年の大卒組と同期であることを考えると成長の余地もあり、攻守にわたって隙のない選手となってほしい。
 24年は、一軍でユーティリティ起用されることが明言された。ファイターズ野手の中ではトップクラスのプロスペクトであるため、ファームでレギュラーに固定するなどじっくり育ててほしいが、出場機会の増加をプラスに捉え、途中出場からチャンスを掴んでほしい。西川遥輝や中島卓也が一気にレギュラーを掴んだように、レギュラー野手は飛躍のシーズンが必ずあるはず。ファイターズの若手はスラッガー系の選手が多いため(万波中正、清宮幸太郎など)、細川のようなタイプの希少価値は高い。彼らに繋ぐリードオフとして、グラウンド内外でチームを引っ張ってほしい。
<24年成績予想>
(一軍)80試 .230 2本 OPS.500
<24年成績理想>
(一軍)100試 .260 5本 OPS.650

7位 進藤勇也(NEW)

 7位は、ルーキーで細野に次ぐランクインとなった進藤勇也。23年2位指名(全体14位)で入団したアマチュアNo.1捕手で、上武大学では上級生の古川裕大から正捕手の座を奪った。同期入団の細野とは日本代表でバッテリーを組んでおり、息の合った活躍を見せた。ドラフト前の時点では1位指名も噂されていた逸材で、実際1位候補としてリストアップしていたという報道も出ていた(真偽は不明)。
 選手としての特徴は、捕手性能の高さで、ファイターズの大渕GM補佐は「ディフェンス面は何も欠点がない」とまで評価している。正確無比なスローイング、アームの強さ、握り変えの速さ、ブロッキング、キャッチング(フレーミング)のどれを取っても一軍の捕手レベルで、正捕手が固定できていないファイターズでは、入団後すぐにレギュラー争いに加わった。また、キャンプでは頻繁に投手陣とコミュニケーションを取っている様子が目撃され、まさに司令塔といったタイプのキャッチャーである。既存の若手捕手には、進藤のようなクラシックな司令塔タイプが少なかったので、非常に期待している。
 プロで通用するかどうかは、オフェンス面でどれほど貢献できるかによる。大学時代、21年春に打率.365、22年秋に.364をマークするなど非凡な一面があるものの、4年生時は不振に喘ぎ、リーグ戦では本塁打0であった。しかし、捉えた時の飛距離は目を見張るものがあり、プロレベルの投手に臆することなく、スケールの大きな打者を目指せるかが今後のポイントだろう。
 24年はキャンプから一軍に帯同し、安定感のある守備でアピール。特に、改めてプロの試合で見るスローイングの良さは異質で、ベテランキャッチャーかと錯覚するほどであった。開幕前にファームへ降格したものの、田宮や伏見のコンディション次第ではすぐに昇格もあり得る。課題の打撃をブラッシュアップしつつ、虎視眈々と正捕手の座を目指してほしい。ファイターズの長年の課題であった正捕手争いに決着をつけるのは進藤勇也かもしれない。
<24年成績予想>
(二軍)50試 .260 5本 OPS.700
<24年成績理想>
(一軍)30試 .230 3本 OPS.600

8位 奈良間大己(DOWN)

 8位は昨年大躍進を果たした奈良間大己。22年5位指名で入団した大卒2年目の選手で、思い切りの良い打撃が持ち味のショートストップ。常葉大菊川高時代は「静岡のジーター」という異名を持ち、甲子園で大活躍した。その後、立正大学へ進学してファイターズに入団。明るいキャラクター内野を複数ポジション守るユーティリティ性も魅力。
 23年は多くの期待を上回る活躍。二軍では開幕から無双を続け、51試合で打率.333、2HR、OPS.848、wRC+150という圧巻の打撃スタッツを残す。一軍昇格後も活躍し、65試合で打率.243、2HR、OPS.650、wRC+92という二遊間を守るルーキーとしては十分過ぎる活躍を果たした。しかし、一軍、二軍ともにBABIPが高く一軍でアプローチが粗かった(BB% 4.1%、K% 25.5%)ことを踏まえると上振れだった可能性が高く、今季は真価が問われる。一軍ではとにかく速球系を苦手としていたため、まずはどれほど速球を克服できるかに注目している。
 打撃は予想を上回る活躍をした一方、守備は苦戦。一軍ではSS、2B、3Bを守ったものの、すべてのポジションでUZRはマイナスを記録。二軍では多少良化しているので、エスコンフィールドの天然芝に苦戦したか。OFでプラスを出せるほどスピードがあるわけではないので、二遊間に留まれるよう修正してほしい。春のキャンプでは安定した守備を見せており、今季はさらに向上させることができるか。
 24年は開幕スタメンスタート。二遊間のライバルである上川畑が故障離脱で出遅れたものの、水野が台頭しつつあり、今季も熾烈なレギュラー争いとなる模様。攻守にわたってスタッツを伸ばしてほしいが、まずは昨年並みの打撃をすることがノルマだろう。守備も二遊間失格の烙印を押されるレベルではなく、今後改善できる範囲だと思うので、将来のレギュラーを目指して頑張ってほしい。愛くるしいキャラクターも含めて、チームの顔になれる素養を兼ね備えているので、楽しみだ。
<24年成績予想>
(一軍)80試 .240 3本 OPS.600
<24年成績理想>
(一軍)100試 .270 5本 OPS.700

9位 達孝太(DOWN)

 9位は達孝太。福島や柳川と同期の21年1位指名の大型右腕。当時のドラフト1位予想は、多くがBIG3(森木、風間、小園)と言われた高校生投手に集まっていたが、ファイターズはポテンシャルを評価して達を指名。1年目はすぐに才能の片鱗を見せた森木などに対して出遅れたが、現時点ではBIG3と肩を並べる存在となった。中学3年生から爪の保護のためにネイルサロンに通ったり、自宅にラプソードを設置するなど非常にストイックで、野球への姿勢は鎌ヶ谷でも頭ひとつ抜けている印象。
 23年は二軍で投球回数を伸ばし、14試合で43回を消化。制圧力に優れ、K%は21.5%をマークするなどポジティブな点もあったが、BB%は12.8%FIPは5.75と苦戦。194cmで手足も長く、大きなエンジンを制御できていない印象がついて回った。
 投球の構成はフォーシームが53.5%を占め、次にフォークを31.7%投げる。フォーシームの平均球速は年々伸びており、23年は144.6㌔まで向上。24年春はさらに伸び、MAX155㌔に達した。特に昨年までは球速のバラツキが大きかったものの、今季は安定しつつあり、150㌔前後で推移している。ただ、球速以上にフォーシームは打たれており、この点は福島や柳川に差をつけられている。変化球の精度が上がることで相対的にフォーシームのPitch Valueが向上することもあるため、まずはマネーピッチやサードピッチを確立したい。
 24年は安定感を身につけたいシーズン。スポット的な先発起用が検討される年齢でもあるので、まずはファームでしっかりローテーションを守りたい。身体が出来てきて出力も上がり、まだ制御できないところがあるのかもしれないが、今年一年で感覚を調整してほしい。本人は今年の目標の一つに「MAX158㌔」を挙げており、達成するためのポテンシャルは確実にある。今年を大きな飛躍の一年とし、将来的な目標であるMLBを目指せるような投手になってほしい。
<24年成績予想>
(二軍)20試 3.50 6勝4敗 100回 100奪三振
<24年成績理想>
(二軍)20試 2.50 8勝2敗 110回 120奪三振

10位 孫易磊(NEW)

 今回、最後にランクインしたのは台湾出身のニューカマー孫易磊。孫は23年9月29日に育成契約を締結した、今年20歳を迎える台湾出身の投手。MLBとの争奪戦を制し、4年契約を結んだ。類似ケースではソフトバンクのスチュワート等がおり、スチュワートと同様に1〜2年かけて支配下登録を目指すのが当面の目標だろう。台湾では二刀流で活躍しており、投手歴は浅いものの、U-18ワールドカップでは台湾代表として14回15奪三振、防御率0.50を記録するなど、主戦投手として活躍した。以前ファイターズで活躍した陽岱鋼と同じアミ族の血を引いている。
 投手としての特徴は、18歳ながらMAX157㌔をマークしたパワーピッチで、ややシュート回転する威力のあるフォーシームを投じる。来日初ブルペンでも154㌔を投げるなど出力に関しては本物で、長い回を投げてもそれを維持するスタミナも兼ね備える。変化球の精度やバリエーションはこれから磨いていく必要があるが、空振りを奪えるフォークもあり、伸び代は十分。日本のドラフトに混ぜても上位指名が間違いない”台湾の至宝”なので、ゆっくり大切に鎌ヶ谷で育成してほしい。
 24年はまず身体作りから。昨年は国際試合でもフル回転し、日本という慣れない環境へのチャレンジで負担も大きいと推察されるので、まずは故障に気をつけて力を溜めてほしい。ファームレベルであれば、現時点でもある程度通用するだろうが、焦って支配下昇格することだけは気をつけたい。ワールドカップで相手打者を抑えた時に雄叫びを上げて喜んでおり、心に熱い情熱を秘めているので、ファイターズブルーを着て燃え上がらせてほしい。本人の目標であるMLBへの架け橋として、ファイターズで良い経験が出来ることを願っている。
<24年成績予想>
(二軍)8試 3.50 2勝0敗 20回 15奪三振
<24年成績理想>
(二軍)20試 3.00 5勝3敗 30回 30奪三振

◇選出理由と悩んだポイント

 推敲に推敲を重ね、10位まで列記したものの、特に悩んだ点がいくつかありました。論点だけ抽出し、下記に整理しています。ここから先は細かい話が多く、価値観や思想の違いによるところもあるので、選出基準や順位感に興味のある方だけ読んでください。

①二遊間のプロスペクト論争

 最も悩んだのは、二遊間プロスペクトの順位感です。換言すると、「細川凌平」「水野達稀」「奈良間大己」ら3名の序列で、現状レギュラー争いでは甲乙つけ難い位置にいます。23年のスタッツからそれぞれの特徴を簡単にまとめると、

  • 細川凌平:最年少(今季22歳)/ wRC+112 / 平均的なアプローチ / スピードでプラス / SSは厳しくも2BとCFでプラスが見込める

  • 水野達稀:最年長(今季24歳)/ wRC+110 / ファームではディフェンス面でプラス / アプローチに課題 / ファームでは速球系に苦戦

  • 奈良間大己:最年長(今季24歳)/ wRC+150 / アプローチ良 / 盗塁以外のスピード系の指標でプラス/ 守備が課題 / 高BABIP

以上のように、細かいスタッツは三者三様です。攻撃面では奈良間がずば抜けており、二軍では無双し一軍でも結果を残しました。ただ、昨年はBABIPが高く上振れしていた感が否めないこと一軍のUZRが全ポジション(SS,2B,3B)でマイナスなことが気になりました。特にSSに限らず2Bでもマイナスを叩いており、スピードやアームを武器にOFコンバートできるタイプでもないため、2歳若くセンターラインに残れる可能性の高い細川を優先しました。
 また、水野はディフェンス面の指標が優れており、三者では最もSSに残れる可能性の高いスタッツですが、2歳年下の細川とほぼ変わらないwRC+アプローチ難(三振が多く四球が少ない)が気になりました。さらにファームレベルで速球系に弱いことから、一軍レベルの投手を相手にすると苦戦する可能性が高いと判断し、細川を優先しました(24年3月末時点で猛アピールしているので、手のひらを返すことになりそうですが)。
 やや年齢(細川だけ2歳年下)を重視し過ぎている感は否めませんが、細川の成長曲線なら2年後には昨年の奈良間以上に打てるという予想をしています。また、SSは難しくてもセンターラインに残れる可能性が高いことも、WARをベースに考える私の選出基準では高評価となりました。おそらくこの辺は思想の話で正解はないので、ぜひ色々なご意見いただければと思います。

②福島-金村論争

 二つ目の悩んだポイントは、福島と金村の序列です。ともに球界を代表するスターターのプロスペクトで、現時点でのスタッツは金村の方が優秀です。ただ、金村はコマンドが良過ぎるからか、クオリティの割に痛打を浴びることがあり、打球管理能力では福島の方が優秀な印象を受けました。また、フレームの大きさでは福島のスケールは抜群で、年齢差を考えても将来的にWARを稼ぐのは福島という判断です。現在の成長曲線を踏まえると、23歳になった時の福島は、すでにローテでバリバリ投げている気がしています。
 ともに甲乙つけ難いほどの好投手であることは間違いないので、二人でファイターズの柱になることを楽しみにしています。

③柳川ー根本論争

 三つ目の悩んだポイントは、ハイシーリングな柳川とハイフロアな根本の序列です。実績は根本の方が何枚も上で、ほぼ確実にローテーションピッチャーになるであろう根本を何位とするかは非常に難しかったのですが、フレームの大きさと年齢を考慮して柳川を上にしました。今年もリリーフ調整であれば、WARの観点から評価は落ちるのですが、スターター挑戦を踏まえて3位としました。また、柳川はまだ実績が乏しいですが、多くの投手は昨年の柳川と同じ起用法であっても、柳川と似たような成績を残すことは非常に難しいと思っています。それだけ柳川のスタッツは飛び抜けており、投げているボールは映像を一度見れば理解できるほど支配的です。やや期待値込みの評価になっている感じもありますが、3位としたのは間違いないと確信しています。

④進藤-田宮論争

 最後に悩んだポイントは、進藤と田宮のキャッチャー序列争いです。進藤がルーキーで実績がないこと、進藤と田宮の選手像が異なることが原因ですが、最終的に守備力で確実にWARを稼げる進藤を上としました。現在NPBで活躍しているキャッチャーは一部を除いてほとんどが守備でWARを稼いでいます。キャッチャーというポジションは”打撃でマイナスを生んでも、守備でさらに大きなプラスを生むことが可能なポジション”であり、守備指標は年度ごとの乱高下が少ないので、進藤は長く活躍する気がします。
 ただ、田宮の打撃スキルはキャッチャーでは稀有であり、今年も安定して打撃貢献を積み上げることができれば、序列は大きく変わるかもしれません。打撃練習では光るものがあったものの、入団以降ずっと低調なスタッツであった田宮を、昨年終盤の活躍だけで評価することに私が臆しただけかもしれませんが。

最後に

 昨年のプロスペクトランキングは”指標は物足りなくとも、随所に目を見張るものがある選手”がランクインしていましたが、今年は”指標がトップクラスの選手”が沢山ランクインしました。評価を大きく上げた選手も多く、ファイターズのファームシステムは間違いなく充実しつつあります
 福島、柳川、達のように大きく出力が伸びた選手が増えたのは、小山田氏の影響なんでしょうか。なんであれ、近年シフトしつつある大型路線は順調であり、数年後には一軍の選手が一変するかもしれません。今年いきなり優勝は難しいかもしれないですが、ブリッジイヤーとして多くのプロスペクトが充実したシーズンになることを祈っています。

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