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京都にて、幸せなおでん。

この店は創業140年。50年くらい前に池波正太郎さんがエッセーで紹介して以来の人気店らしく、たまに京都に来たときに、この前をいつ通っても満席で入れなかった。行列ができていることもあった。しかし、古くからの常連さんのために予約は取らないという。悔しいけれど、とてもいいことだ。
お酒というものは予約に縛られず、ふと飲みたくなったときに飲みたいもの。だからこの店の姿勢には、とても共感できる。

ところが今日、前を通りがかったときに引き戸を少し開けたところ、なんと空席もいくつか。「お好きな席にどうぞ」とのこと。四代目のご主人によると「今週は、こんな日が続いてますねぇ」なのだそうだ。ラッキーだった。故にこうして、幸せなおでんをいただいているというわけさ。ひとりで来る客が多いので、店内は静か。鍋を温めるガスの音しか聞こえてこない。心地よし。

最初に頼んだものは。写真左から左回りに、ロールキャベツ、ダイコン、オランダと呼ばれる魚のすり身。オランダの切り方が、市松模様でなんともおしゃれではないか。

実を言うと、京都のおでんは初めてなのです。知らないネタが多くて慌てました。とは言え、ご主人や常連さんがいろいろ丁寧に教えてくれるので、鍋を覗きながら「ロールキャベツ」とか「鯨の皮」とか「マグロのネギマ」とか「鴨のつくね」とか。そしてこの「タコ」が柔らかくてうまいのなんの。

明石産のタコが、箸でも崩れそうなほどに柔らかい。ちなみに、店名が「蛸長」だからタコが売りというわけではない。もともと、おでん屋さんは「タコ」と呼ばれていた。だから「タコ」が店名に入る店が多い。東京のおでん屋さんにも「お多幸」ってありますよね。

店の向かいには鴨川。ぬる燗が進みます。やはり京都は楽しいです。こんな店が、東京のど真ん中にありますか? 南座の裏なので、東京で言えば東銀座のあたりか。
店名はキャプションに書いた通り。あとは探す楽しみもあると思うので検索してください。お支払いは現金のみです。そういう姿勢にも共感できるというもの。

お客さんの回転がいいので、気づいたら独りになっていた。長居は遠慮かな、と。

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